129回運営委員会
11月1日に「関西STS連絡会」第129回運営委員会が、事務局の「NPO日常生活支援ネットワーク」事務所にて6時から8時半まで開催されました。
■出席された団体・グループ様は以下の通りです。……(参加:6団体)
・NPO法人「日常生活支援ネットワーク」(大阪市) ・伊良原淳也(関西STS連絡会)
・NPO法人「フクシ」(泉佐野市) ・NPO法人「自律生活センターやお」(八尾市)
・NPO法人「寝屋川市民たすけあいの会」(寝屋川市) ・い〜そらネットワーク(大阪市)


【議 案】

■ 資料関係:

@『「全国移動ネット災害支援の会」会議録』2014.10.20/報告:全国移動ネット 伊藤みどり)
1.日時・会場:2014年10月209:30-11:30/仙台市市民活動支援センター
2.出席者:
柿久保浩次、坂井正義、齋藤丈夫、大山重敏、杉本依子、山本憲司、伊藤みどり
 オブザーバー参加:秋山糸織、村島弘子

3.議題と結果

(1)今後の活動について
 支援の対象として浮上したことがある、または支援の必要がありそうな団体や地域の状況を精査し、今後の取り組みについて協議した。その結果、今後は以下のように取り組みを進めることとした。
■東日本大震災から丸
5年度を活動の区切りとする。その後も、それぞれが各地で開催する様々な行事や日頃の活動の中で支援を続けていくが、「支援」から「応援」へと目的・内容を切り替えていく時期に来ている。「災害支援の会」としての活動は丸5年で終了するということ(今回はその方針を確認検討する最後の会合)
■今後の支援活動は、大きく
3つとする。
@
福島県内の移動の問題を、他の地域で取り上げ、広く関係者と共有することも検討する
 それを目的として、大山理事にガイドをお願いし、柿久保代表、杉本さん+アルファで福島を訪問する。(基本的に柿久保代表が現地を訪問、または顔の見える関係の中で状況把握をして、支援先活動の判断をしてきたため)。
A
移動支援Reraに、定期的に支援募金を送る
 目安として年
2回(モヴェーレ発行時期)に、1回あたりの金額は柿久保代表一任。モヴェーレ等の媒体で、レラからの近況報告を掲載するなど、双方向性も意識して、広く支援の必要性を発信していく。
B
JCN(東日本大震災支援全国ネットワーク)の現地会議を経て、石巻市の移動支援をテーマにしたプロジェクトが立ち上がった(構成員は市内送迎活動と中間支援団体のメンバー)。送迎活動を継続できるしくみや、課題解決を目的として動き始めている。MLのほか、仙台・石巻で調査や会合を行うこともあり、杉本さん、秋山糸織さん、伊藤が参加する
■その他、
釜石市鵜住居地区、陸前高田市等、岩手でもつながりのできた地域があるが、動きははっきり見えていない。支援の要請があれば、今後も随時引き受けて行く。

(2)支援募金の使い道
今後、新たに発生する災害に備えた人材育成等の活動を行うため「ももくり送迎基金」に70万円を出資する。災害支援の会のメンバーは、この基金の運営委員として参画する
■残額
60万円余りは、(1)の3つの活動費用に充てる。活動メンバーの交通費については、これまで半額補助としていたが(全額個人負担で支援に入ったケースもあり)、今後は事前に申告を受けて、全額を支給する。(以上)」

A『《福祉移送ネットワーク講座》自家用有償旅客運送の事務・権限移譲に関するセミナーin岡山』2014.11.14/報告:移動ネットおかやま 中村守勝)
「来年度からは、自家用有償運送の登録権限が市町村に移譲されることと、介護保険の改正により「要支援」の人々がホームヘルプサービスとデイサービスが基本的に利用できなくなります。3年の経過措置がありますが、地域で代わりのデイサービスを行うにも送迎の問題が解決しないとできません。

【第1部 基調講演:「地域づくりと移動支援」講師:坂井容子氏(岡山県保健福祉部 長寿社会課 副参事)】
 少子高齢化の進展と直面する課題として、人口構造の変化、少子高齢化の進行と75歳以上の人口割合の増大、65歳以上人口に占める介護保険受給者数の性・年齢別にみた割合、要支援1〜要介護2の状態像についての説明があり、現行の介護保険制度における移動支援関連サービスでは、通院等乗降介助の他に、市町村特別給付の中で条例で定めれば幅広い外出支援ができるが、ただし財源は介護保険料である。
 通院等乗降介助の全国の年間利用回数は、
2006年度には約900万回であったが、2007年度からは830〜840万回で推移している。特に要介護1の利用が、2007年度から減少しているのは、2006年度の制度改正により要支援2が設定されたことによる。
 市町村特別給付(おむつの支給、移送サービス、配食サービスなど)
2012年度に市町村特別給付を実施しているのは、全国1,498保険者のうち82保険者。そのうち移送サービスを実施しているのは16保険者のみで、そのうち1箇所(埼玉県和光市)のみが要支援12も利用できるようにしている。中四国では実施なし。
 
介護保険制度の改正の方向として、地域包括ケアシステム、生活支援サービスの充実と高齢者の社会参加、多様な主体による生活支援・介護予防サービスの重層的な提供、新しい地域支援事業の中で、市町村が任意で行う事業として外出支援・移動支援がある
 新介護予防事業の介護デイに代わる魅力的な地域デイの創設(例:週単位の料理クラブ、園芸グループ、ウォーキンググループ、旅行クラブ等)。ただし、
自力で参加できない移動困難者への対応をどうするかを考えなければならない。
 市町村のマネジメント力が必要になってくる。

【第2部 基調報告:「自家用有償旅客運送の事務・権限移譲の意義と制度見直しについて」菅原晃氏(国土交通省自動車局旅客課地域交通室長)】
 道路運送法改正(
2006年)に至るまでの経緯と、自家用有償運送の実施及びバス・タクシー事業との違いについての説明の後、自家用有償運送の現状。

自家用有償運送の現状(国交省によるサンプル調査推計2011年度)
市町村運営
(過疎地有償)
過疎地有償
NPO等)
市町村運営
(福祉有償)
福祉有償
NPO等)
運送1回当たり
の利用者数
4.8人 2.9人 1.2人 1.0
運送1回当たり
の走行距離
21km 24km 18km 12km
利用者ひとり
当たりの対価
142円 491円 490円 1,012円
収支率 19.4% 42.0% 23.3% 40.6
赤字の補填 公的補助 公的補助又は、
他の事業収入
公的補助 介護サービス
等の事業収入
運転者の平均年齢 58歳 61歳 59歳 53歳
2014年3月現在
福祉有償運送団体数:
2,400  車両数:15,031
市町村福祉有償団体数:122    車両数:442
過疎地有償団体数:88        車両数:574
市町村過疎地団体数:426     車両数:2,542


事務権限移譲の基本的な考え方

1
.過疎地域の移動手段、介護等福祉を支える輸送といった地域住民の生活維持に必要な自家用有償旅客運送に関する事務・権限については、地域で判断できる裁量を拡大するため、希望する市町村に移譲する
2.事務・権限移譲に際しては、輸送の安全を確保し、利用者保護を図りつつ、地域の実情に応じた運送を実現する観点から、以下の3点を踏まえて具体的な制度設計を行う必要がある。
 ・地域の特性や利用者のニーズに応じた輸送が実現されること
 ・地域の幅広い関係者の意見を反映できる仕組みを充実させること
 ・市町村が事務・権限を担う際に、必要な輸送の安全確保が担保されること
運用ルールの緩和・運営協議会のあり方の改善等
@運用ルールの緩和

・今後の法制的検討で可能と判断されれば、
「権利能力のない社団」(町内会、マンションの管理組合、サークル等)も実施主体として認めるべきである。
・運送できる旅客として、一定の条件の下で、
地域外からの生活支援ボランティア、社会参加が困難な者、地域外からの訪問者(旅行者)等も認めるべきである。
A運営協議会のあり方の改善等
他の交通協議会と連携するほか、
まちづくり、福祉、教育等の分野と一体的に議論すべきである。
協議対象の合理化、合意形成の円滑化、研修機会の提供、有識者の活用や不合理なローカルルールの是正の促進等を進めるべきである。

【パネルディスカッション:「地方自治体は権限移譲をどう活かすか」
パネリスト:菅原 晃氏(国交省自動車局旅客課地域交通室長) 嶋田暁文氏(九州大学大学院准教授 行政学)
      山本憲司氏(全国移動ネット理事) コーディネーター:中根裕氏(全国移動ネット理事長)】
■嶋田暁文氏:
《地域公共交通の危機、交通空白地域の増加》

 マイカーの普及や(とりわけ地方における)人口減少、人口流出、少子高齢化等によって利用者が減少したことにより、全国各地で地域公共交通は危機的状況に陥っている。
 利用者の減少は交通事業者の経営悪化につながり、乗合バス事業者のうち民間事業者の
7割、公営事業者の9割が赤字である。経営悪化は赤字路線の廃止に帰結する。
 こうした状況の中、マイカーを持たない人々の「自由な移動」は大きく制約されるに至っている。病院、スーパー、役所など「安心して生活を営むうえで欠くことのできない場所」に行くことが困難な人々の数は相当な数に上っている。もはや地域交通の衰退は、「地域に住み続けられるかどうか」という住民にとって「究極の問題」を惹起している。また全国在宅障害児・者等実態調査で
「外出時に支援が必要な者」の割合は65歳未満で52.4%、65歳以上では57.2%で、しかも移動制約者の数は年々増加しており、対応は急務である。「交通空白地域の解消」と「移動制約者のための移動手段の確保」という二つの大きな課題の解決が喫緊の課題となっている。
《交通空白地域の解消のための代表的な取り組み》
 交通事業者への補助による赤字路線の延命措置、またはコミュニティバスの導入については、収支率が低いことから自治体の財政負担が増大し、見直しを余儀なくされている。デマンド型交通に置いても、路線バスと比べて輸送コストが高く、中部地方では実施している市町村の
7割が見直しを考えている。
 コミュニティバス、乗合タクシー、デマンド型交通のいずれも導入に際しては、それぞれに見合った大きさの需要が存在することが必要で、一定規模の需要が存在しない地域に導入すれば、採算性の面で破たんする。結局のところ、このような地域では、過疎地有償運送もしくは無償運送の導入が好ましい。過疎地有償運送等さえ導入すれば、交通空白地域は解消されるという訳ではないが、
過疎地有償運送の導入の必要性と活動の可能性はかなり高い
《移動制約者のための移動手段の確保のために何が必要なのか?》
 福祉タクシーや介護タクシーは、乗降介助も可能ということで優れているが、事業採算性が前提となるため利用者人口が少ない地域では普及しにくい。また、料金が高く気軽には利用できない。ヘルパーによる有償運送は料金も安く、乗降介助もあるが目的が通院等に限られている。自家輸送は無料というメリットはあるが、利用目的だけでなく対象もデイサービスの利用者に限定されており、汎用性がない。
 これらに対して、福祉有償運送や無償運送は料金が安く、利用目的が限定されていない。福祉有償運送は利用者の範囲が要支援・要介護・障がい者等の限定があるが、無償運送には限定がない。つまり福祉有償運送や無償運送は「利用しやすさ」という点において、一定の相対的優位性を有している
 勿論、福祉有償運送等を普及させれば、移動制約者の移動手段は十分確保できるわけではない。各交通モードがそれぞれの強みを活かしつつ共存し、相互に補完し合う関係性こそが大事である
 ただし、利用しやすい地域における移動手段を充実させていくうえで、
福祉有償運送や無償運送をもっと積極的に導入・活用してく必要性は高い
《「地域における移動手段」を確保するために自治体は何をすべきなのか?》
@自らの責任を自覚し、先にある真の目的を見据えること、ビジョンを大切にすること
A現状と潜在需要をしっかり把握して、計画を策定すること
B組織体制の整備
《過疎地有償運送等・福祉有償運送を活用する》
@
当該事務権限の移譲を生かすことで、過疎地有償運送等の導入場面が広がる。
 自治事務となることで、国からの通知文の内容にとらわれる必要がない。過疎地の規定に「過疎地域その他これに類する地域」とあり、「その他これに類する地域」をどう解釈するかは自治体の判断に委ねられる。
A
「有償・無償」の判断に係る裁量が広がる。
 
自治体による審査基準の定め方次第で、移動サービス団体が「無償運送団体」として活動できるようになり、登録に伴う活動の制約や事務負担から解放され、運営協議会からも解放される。結果として移動支援をする団体が増えて、自治体としても実施団体としてもメリットは大きい。
B
立ち上げ支援
 過疎地有償運送、福祉有償運送、無償運送の有効性・必要性が明らかになっても、それを担う団体が現れなければ、先には進めない。自治体は地域コミュニティや
NPOに働きかけ、その立ち上げを促す必要がある。立ち上げ、および運行には様々な壁がある。自治体が支援することで、この壁を低くしていく必要がある。

■山本憲司氏:
 自家用有償旅客運送の事務・権限の地方公共団体への移譲等のあり方に関する検討会の委員であった。
 
権限移譲の大前提は国と地方の対等な関係である。国は地域の状況・課題を把握しきれないため、市町村に権限移譲をすることにより、地域の状況にあった形の移動手段の確保について、地域で考えて取り組んで行けるものとなる。
@制度見直しをどう受け止めるか A地域が自立するために B地域で暮らすために
 権限移譲の効果として、地域における関係者の合意から登録までの期間が短縮できる。地域の実情に応じた創意工夫による移動手段の確保が可能である。
《自家用有償旅客運送(福祉有償・過疎地有償)の役割と重要性》
@
住民参加(助け合い・まちづくり・少子高齢化対策)
 利用者と担い手の関係、社会的つながりの維持回復、外出を促す、多くの担い手、高齢者や女性などの活躍の場、担い手も元気になる。
A
互助の可能性と公助の限界
 さまざまなニーズへの対応、公費による一律公平な対応の限界、公による管理・供給の限界
B
移動の手段(運送)として
 運送プラスアルファの安心感と、利用しやすい対価。交通事業者による対応と、経済性の限界。
C
地域で暮らすために
 移動は暮らしの根幹。生活支援・地域支援で、移動は大きな役割。(移・食・住)
※非営利の福祉有償運送・過疎地有償運送は、公共交通機関の補完ではない。
※マイカーの代わりとしての役割、近所の人による相乗りの役割(互助)
※福祉有償運送と過疎地有償運送の融合も必要
※既に担い手不足が始まっている

■ディスカッションの中で
・人々の生活を基点に考えてタクシーにも乗れない等の困っている人がいれば、法に基づいて合理性がある。
・移動に困っている人がいる場合、事業者が増えて行かなければならない。事業者が増えることによって、利用者が増える。
・無理に使うのではなく、色んな人を巻き込む。

おわりに
 閉会の挨拶で、移動ネットおかやまの横山さんが福祉有償運送をして
10年になり、自分ももう少ししたら支援を受ける方になる。10年が経って、福祉有償運送の担い手も高齢者ばかりになっている。10年間、移動支援を一緒にしてきた仲間が、先日止めた。10年してきて、自分も年を取り、福祉車両を買い替えることもできない。採算も取れない中で、自治体の無理解や様々な軋轢があり、これ以上出来ないとのことであった。自分は、もう少し続ける。印象的な閉会の挨拶でした。以上」


■ 報告ならびに今後の課題討議:

(1)
11月度〜の「運転者認定講習会」の開催
 ◎11月17、18日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(大阪市)
 ◎
12月15、16日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(大阪市)
 ◎
1月19、20日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(大阪市)
 ◎
2月12、13日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(和歌山県橋本市)
 ◎
2月16、17日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(大阪市)
 ◎
3月16、17日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(大阪市)


■次回運営委員会:12月6日(土)pm6:00〜8:00
於:NPO日常生活支援ネットワーク事務所