142回運営委員会
7月2日に「関西STS連絡会」第142回運営委員会が、事務局の「NPO日常生活支援ネットワーク」事務所にて6時から8時まで開催されました。
■出席された団体・グループ様は以下の通りです。……(参加:7団体)
NPO法人「日常生活支援ネットワーク」(大阪市) ・伊良原淳也(関西STS連絡会)
NPO法人フクシライフ(泉佐野市) NPO法人「寝屋川市民たすけあいの会」(寝屋川市)
・い~そらネットワーク(大阪市)


【議 案】

■ 資料関係:

①『《熊本地震・被災地支援活動報告》初動救援活動の終了と、今後の継続した熊本被災地支援の課題』
2016.8.1 ももくり送迎基金 福田 悠介)
4月14日、16日に熊本県熊本地方を震源とした、震度7の大地震が2度にわたり発生。また、大きいものでは震度6を観測する余震が断続的に発生し、震源地に近い益城町や西原村を中心に広い範囲で甚大な被害が出ました。35,000棟以上の家屋が全壊・半壊の判定を受けており、一部損壊も含めると160,000棟以上の被害にのぼり、3,700人以上の方々が避難生活を強いられています(7月26日現在)。

熊本地震被災地支援活動を開始
 地震の発生をうけ、ゆめ風基金:八幡理事と共に、ももくり送迎基金の先遣隊として私(福田)が
18日に現地入りしました。
 
2度目の地震発生から2日しかたっておらず、現地はまだまだ混乱状態にあり、情報がほとんどない中での現地入りでしたが、現地の障がい者団体や支援団体とお会し、また、全国移動サービスネットワークから発災直後にコンタクトを取っていただいていた現地の理事である小出氏(熊本県高齢者障害者福祉生活協同組合)とお会いすることができ、早い段階での被害状況や支援状況の情報を得ることができました。
 地元団体と連携して救援活動に入らせていただくことを確認し、ももくり送迎基金として
5月GW明けから以下の移送ニーズを中心に救援活動を開始しました。
○発災後に“福祉避難所”の指定をされた熊本県身体障害者福祉センターの運営責任者を小出氏が引き受けられたことをうけ、身障センター避難者の足の確保のための移送支援。
○被災障がい者の救援活動を目的として、熊本の地元障がい者団体や支援団体、
20団体ほどが集まり立ち上げた「被災地障がい者センターくまもと」(代表:倉田哲也氏 事務局長:東俊裕氏)との連携と、移送ニーズへの対応。

被災障がい者の方々の課題の顕在化
 今回、初動救援活動で現地入りしたことで見えてきた状況として、内陸部で発生した地震ということもあり、水害等の影響もなかったために自家用車の破損や消失は少なく、車社会である熊本ですが、自身で運転できる方の移動は保たれていました(そのことは、大量の車中泊の避難者を発生したことにも現れていると思います)。また、比較的に都市型ということもあり、ある程度の公共交通機関は整っており、早い段階で復旧したことによって、公共交通機関を利用できる方は、それらを利用することができる状況であった。
 ただ、“不安障害”などのある精神障がい者や、もともと狭い地域や社会資源の中で生活していた方々は、自宅から離れた場所への避難生活のために生活範囲が広域になってしまい、自身での移動が困難になってしまった方が多く発生し、顕在化しているような印象を受けた。また、福祉サービスとつながっていない被災障がい者の支援においても、いろいろと生活に困難を抱えた方々、多くはボーダーに近い精神障がい者の方々の問題が、一挙に顕在化したようなイメージが印象的であった。

初動救援活動の終了と、今後の熊本被災地支援に向けて
実績数
件数 人数 回数
5 39 46 85
6月 65 70 141
7月 11 12 20
合計 115 128 246
 6月末で身障センター避難所が閉鎖したことをうけ、ももくり送迎基金としての初動救援活動は、7月中旬で一時終了することになった。ただ、避難所から仮設住宅入居へのフェーズ移行期である現在、現地ではまだまだ厳しい状況が続いていることに加え、益城町や熊本市街地から離れた場所に建設された巨大仮設団地の動向を注視し、地元団体からの情報を共有しながら、その状況の応じて必要な支援を続けていくことが必要だと感じます。
 今回見えてきた課題として、常総水害時とは違い“ももくり送迎基金”として、比較的、主体で動いた事例であったため、一つの組織としての活動範囲の見極めが必要であったこと。そしてフェーズ毎に沿った活動方針の判断の難しさを大きく感じました。ただ、上記とも重なりますが、やはりいずれは地元に引き継いでいくべき活動ではあるので、地元団体との連携や調整の中で、その時の状況に応じた判断をすることが必要だと考えます。
 今回の熊本地震では、地元で中心となれる団体やキーパーソンとの平時からネットワークがあったことで、迅速な対応や救援活動を開始することが出来ました。今後、いつどこで起こるか分からない災害に備えて、日ごろから全国的なネットワークを構築していくことが、ますます必要であると強く感じさせられました。と同時に、今回、大きく報道された福祉避難所の在り方の問題の中でも、移動送迎支援活動の必要性を同時に働きかけていくことが大切だと考えます。
 各地から応援をいただいた運転ボランティアの皆さま、ご寄付いただいた皆さまに、心から感謝します。」



②『
《ルポ:京丹後市 × Uber(ウーバー)》交通空白地域の自家用自動車とICTの活用”について』
(遠藤 準司)
京都府京丹後市は、2004年4月に6 町(丹後町、峰山町、大宮町、弥栄(さかえ)町、網野町、久美浜町)が合併してスタートした、日本海に面したまちである。合併後に、市が最初に取り組んだのが、鉄道と路線バスの再編だったそうだ。中でも高齢化が深刻な丹後町では、市人口65,000人のうち移動制約者(自宅から最寄りの駅又はバス停まで500m以上離れている人)、つまり交通空白地の居住者数は11,800人にものぼる。これをカバーするために、京丹後市全域を走る“200円バス” の運行を開始したそうである。その結果、移動制約者は5,000人に減らすことができたという、実績も積んでいるということのようだ。

点在するタクシー会社の相次ぐ撤退
 点在していたタクシー会社は、
2008年10月の間人営業所(丹後町:5台)の廃止を皮切りに、2012年10月久美浜営業所(2台)の廃止、2013年7月には網野営業所(5台)の廃止と、日本海側に点在するタクシー会社は相次いで撤退という事態となっていたようだ。不景気による夜間のタクシー利用の減少や、人材確保の困難や、病院が無料の通院送迎車両を巡回させる等、タクシー需要の後退が原因のようだ。観光立市を条例で定める京丹後市にとって、タクシー事業者の相次ぐ撤退はたいへんな痛手となっていた。
 そのような状況を抱えるなかで、
2015 年10月から「乗り合い型のEV タクシー(通称:丹タク)」の運行が開始された。いわゆる道路運送法4条許可による、乗り合い型タクシーである。運行は、丹後海陸交通株式会社が委託を受けて実施された。網野町(1台)、久美浜町(1台)から乗車し、降車ポイントは京丹後市全域、及び豊岡市の全域となっている。ただし区域外(網野町、久美浜町)運賃として旧町毎に250円が別途かかるというシステムのようである。料金は大人500円、小学生は半額。現在は1日およそ10人以上が利用しているそうだ。

市の公用車を使ったデマンドバスの運行
 
2015年7月からは、市の公用車を使ったデマンドバスの運行を、地元の「NPO法人 気張る! ふるさと丹後町」に委託することになった。運行経費の総額は250万円/年間である。運行範囲は、丹後町(人口5,000人)を2つのエリア(宇川線・豊栄竹野線)ごとに、曜日を分けて運行している。地元のNPO法人としては、2008年からもともとは地域おこしとして婚活活動や、高齢者の通いの場所を提供する活動はおこなわれていたが、移動支援の取り組みは行っていなかったらしい。
 しかし、住民のニーズには“移動”に対する要望が多くあがってきており、デマンド運行の開始にあたっては、公共交通との競合を避けるために「自宅→目的地」ではなく、「自宅→最寄りのバス停」までとしてきたようだ。また予約は、「前日の
17時まで」となっていて、利用者や運転手の不満はとても大きかったいという。理由はその日の17時を過ぎるまでは、翌日の予定が立たないからのようだ。現在の利用者数は、3~4人/日。

2015年のUber(ウーバー)の登場
 京丹後市としては、路線バスの活性化とデマンドバスの運行を開始していたが、線的な取り組みから面的な支援も必要だと考えはじめていたという。そうした状況下で、2015年6月にUber(ウーバー)が営業にきたそうだ。最初はまったく相手にするつもりも無く、また自分たちが行ってきたことを全否定されるのではないかと、黒船来襲のつもりで身構えていたという。
 ところが
Uber(ウーバー)の話を聞いて、まったく考え方が変わったそうだ。これまでNPOが苦労していた点(配車・予約・ルート・人材確保等)を、すべて解決していたからだ。また初期投資が無い点も、大きかったという。Uber(ウーバー)との連携については、地域公共交通会議(座長:市長)では、まったく異論が出なかったそうだ。タクシー会社が撤退していた点もあるが、「地域の足をどのようにすれば確保できるか」を関係者が本気で考えていたからだと、担当者は言い切った。
 
2016年5月26日から、Uber(ウーバー)の配車アプリを活用した「ささえ合い交通」がスタートすることになった。ただし、東京など首都圏のタクシー協会を中心とした反応は違っていたようだ。Uber(ウーバー)との連携が報道されると、撤退した地域である久美浜町/近畿自動車(2016.10.1~)や、網野町/高速タクシー(2016.5.12~)に、タクシー会社が相次いで誕生している。
 世間では京丹後市が「ライドシェアを取り入れた」と騒いでいるが、そうではないようだ。あくまでも法律内で完結しているものであり、
Uber(ウーバー)が海外展開をしている「自家用自動車の乗り合い方式」ではないと、担当者は言う。
 また、行きは
Uber(ウーバー)による配車によって移動し、Uber(ウーバー)車両の手薄な地域では既存の峰山町のタクシー会社とも上手く連携していて、相乗効果も表れてきているという。まさに「win win」の関係になりつつあるようだ。

京丹後市の「地域での移動の確保」に向けた努力に注目を
 現在は
Uber(ウーバー)との連携で、運転者が持ち込みの自家用車18台が登録されているようだ。現在のところ、「運行管理者一人での車両限度数は19台まで」となっているために、登録運転者は合計18名だそうである。そのうち4人が2種免許取得者で、14人が1種免許所持者である。交通空白地域での運転者認定講習は、BGM 福知山が行っているとのことである。
 東京海上保険の協力により、保険商品も開発したという。対人・対物無制限で
1台につき1,700円。ドライバーの残高不足による保険未加入や想定外の訴訟費用など、あらゆるケースを想定した保険となっているようである。
 運転手は信用を第一としているそうだ。
NPO法人の中でつながりがあり信用のおける人でないと、まず運転者として登録することができないそうだ。2種免許を持っているからといって、運転者登録はできないということのようだ。
 現在は、まだ高齢者にスマホはそれほど普及はしていないが、
Uber(ウーバー)の配車アプリには将来性を感じていると、担当者は語った。使いこなせれば、生活上の困りごとの大部分が解決できると考えているからだ。京丹後市の考えている「地域での移動の確保」に向けた努力とは、単に配車におけるサービスだけのものにはとどまらないのだろうと感じながら、京都府京丹後市峰山町杉谷にある京丹後市役所を、同行した伊良原氏とともに後にした。
2016年7月1日レポート 関西STS連絡会 遠藤 準司)
―取材後記―
  今回の取材をお引き受けていただいた京都府京丹後市の担当係長は、市役所の中でも長らく交通施策に携わってこられたスタッフのようでした。そのために地元の公共交通に対する思いはひと際強く、また全国各地の交通事情にも精通されていました。取材中、特に印象的だったのは、市の交通計画策定にあたっては、一切外部のコンサルや有識者に委託していないという点でした。理由は「地元の事情は、自分たちが一番よく把握しているから」という、まったくもってごもっともなご意見でした。
 地元の生活交通や、観光立市としての活路を模索する中で、その並みなみならぬ問題意識が、今回のUber(ウーバー)との連携につながったのではと、強く感じました。
 取材後、そのお礼をと思い、何度かご連絡を差し上げてはみるものの、大手新聞各紙で連日報道された影響もあり、未だ実現していません。今回の京丹後市の新たな試みによって、住民生活にどのような変化や、また地域の賑わいを生み出すのか、全国の関係者から注目を集めているようです。
2016年8月5日/遠藤 準司・記)


③『
《生野区“介護保険”事業者セミナー》介護保険での新しい総合事業は活用できるか/介護保険事業は、どうなっていくのか!』(関西STS連絡会)
 介護保険制度改正(2015年)と絡めて「新しい介護予防・日常生活支援総合事業(以下“新しい総合事業”)」が、2017年4月までに全国の市町村で実施することが決定されました。高齢化率が大阪市で第二番目の生野区では、今後の“介護保険の動向”や地域での住民の助け合いにおいて、高齢者や障がい者、子どもなど「移動制約者」の孤立を防ぎ、地域での生活を充実させていくための多様な支援が、きわめて重要となってきています。
 厚生労働省はこの制度改正に先立って、“新しい総合事業”が各市町村で適切・有効に実施されるための“ガイドライン”を示しました。その中には「介護予防・生活支援サービス事業」のメニューが示されており、“地域の移動制約者の生活を充実させる”ための多様な要素も込められています。私たちは、先進的に取り組む自治体の事例報告や、“移動送迎サービス”と一体的に活用した形態なども吟味しながら、これから始まる生活支援コーディネーターの協議体などで、十分に認識・議論がなされなければなりません。
 “新しい総合事業”のフル活用で、「移動制約者」の地域生活を充実させるために、介護予防・生活支援サービス事業と一体的におこなう「買い物、通院、外出時の支援」など、そのサービス利用を幅広く組み立てていきたいものです。千葉県松戸市では、この方式で訪問型サービス
Bのオプションに移動支援を組み込みました。利用者から受け取る金額と、補助(助成)の仕組みを市町村がどう決めるかが、この活動の継続性で非常に重要になるのです。
 本セミナーは、大阪市ボランティア活動振興基金に基づき、生野区まちづくり課の協力も得ながら企画されたものです。生野区において、「“新しい総合事業”って?」「介護保険制度がどうなっていくの?」と気になっておられる介護保険事業関係の皆さま方の、積極的なご参加を心よりお待ちしております。



■ 報告ならびに今後の課題討議:

(
1)「《生野区“介護保険”事業者セミナー》
    介護保険での“新しい総合事業”は活用できるか/介護保険事業は、どうなっていくのか!」

■ 日時 :
2016年8月20日(土)13:30~16:00
会場 : 大阪市立生野区民センター 206号室
■ セミナー次第 :
 ①問題提起:「介護保険制度での“新しい総合事業”は活用できるか/“移動制約者”の地域生活を充実させるには!」
    ・報告:遠藤 準司さん(
NPO法人アクティブネットワーク・代表/関西STS連絡会)
 ②意見交流・まとめ:「介護保険制度での“新しい総合事業”はどうなっていくのか」
    ・意見交流の進行:柿久保 浩次さん(関西
STS連絡会)、遠藤 準司さん
■ 主催 :
NPO法人 移動送迎支援活動情報センター
■ 協力 : 関西
STS連絡会


(
2)7月度~の「運転者認定講習会」の開催
 ◎ 7月18、19日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
8月22、23日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎
9月12、13日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎10月17、18日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎11月28、29日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)
 ◎12月19、20日/関西STS連絡会「運転者認定講習会」(於:大阪市)

■次回運営委員会:8月6日(土)pm6:00~8:00
於:
NPO法人 日常生活支援ネットワーク事務所