『《現場から2008年:福祉移送サービス「制度化」1年半》京のボランティアなど各団体/事務量増大、収入減に苦慮/申請や登録、報告義務 料金、タクシーの半額以下……/運行継続へ』
(京都新聞2008.3.24)


 ボランティアによる福祉移送サービスが道路運送法で「制度化」されて1年半。京都市内の各団体は、制度化に伴う事務量の増大収入の減少に苦慮している。全国的にも同様の傾向で、各団体とも何とかやりくりしている状況だ。市内の現状を追った。(中村幸恵)
 土曜の夜、市役所前で、西京区のNPO法人 京都J&Mの会代表の谷純三さん(62)は、映画鑑賞から戻ってきた熊川貴也さん(28)の車いすをワゴン車に乗せた。動かないようにバンドで固定し、熊川さんが入院する右京区の国立病院機構宇多野病院へ出発した。
 熊川さんは筋ジストロフィー症で、2ヵ月に1度ほど谷さんの運転で外出する。「谷さんのような人がいないと外に出られない。サービスがもっと広がってほしい」と訴える。
 しかし現実は逆行しつつある。同会は制度化以前、1日6〜7回移送していたのが月10〜12回程度にまで減少。事務処理の増加と、金銭面から谷さんがアルバイトを始めたためだ。
 福祉移送はボランティア活動として黙認されていたが2006年、道路運送法の規制対象になった。移送事業を行う団体(事業者)はタクシー事業者や利用者代表などでつくる各自治体の「運営協議会」の合意を得て運輸支局に登録することが義務化された。
 同時に事業者には、毎年の実績報告書の提出や、運転手の変更や苦情、事故などをその都度報告する義務も発生。2年ごとの登録更新時には約20種類の資料運営協議会に提出することも必要になった。
 J&Mのメンバーは運転手3人。事務作業の負担は大きい。「移送回数を増やすためには事務員が必要だが、現実には難しい」と谷さんは明かす。
 谷さんらは運行回数を減らすため、利用者に福祉タクシーを紹介した。しかし、難病の人たちは慣れ親しんだ谷さんらの運行を望む人が多い。「わたしたちがしなければ外出をやめるという人が多い」という。
 活動を初めて約10年。利用者が自身でヘルパーを手配できない場合、ヘルパー資格を持つ運転手がボランティアで助けるなど柔軟に対応している。熊川さんも「谷さんの人柄がいい」と顔の見える関係を望む。
 影響は金銭面にも現れている。移送の料金はタクシー料金の半額以下とされたためだ。J&Mは1時間2600円。ガソリン代の高騰で「弁当代も出ない」という。中断していた年会費の増収の検討を始めた。
 車4台。運転手27人が活動するNPO法人 京都運転ボランティア友の会(南区)も、「走るだけ赤字になる」という。代表理事の吉田嘉久さん(69)は「寄付で何とかしのいでいる」と話す。
 全国移動サービスネットワーク(東京)が昨年、全国の移送団体に実施したアンケート調査では、4分の1以上の団体が「申請や登録などの事務量で困っている」と回答。収支は全体的に悪化していた。同ネットワークの伊藤みどり事務局長(33)は「運営協議会で利用者の制限を受ける傾向もある。トイレに行くタイミングや上着の着脱など、慣れた人でないと分からないことも多い。制約が増えるとボランティアが減ってしまう」と危ぐする。
 長年移送サービスを続けるボランティアだからこそできることがある。こうした団体が継続して活動できるよう、要件の緩和などの対応が必要ではないだろうか。