
■日時:2004年4月17日(土)13:30〜17:30
■会場:茨木市立男女共生センター「ローズWAM」
■主催:移送・移動サービス地域ネットワーク団体連合会/移動サービス市民活動全国ネットワーク/関西STS連絡会
1.報告「NPO等福祉・過疎地有償運送の全国ガイドライン」についての説明
田中 俊幸氏(国土交通省近畿運輸局自動車交通部次長)
【国土交通省の基本的な考え方】
要介護者、身体障害者などの移動困難な人はタクシー事業者が主体的に担うべきという国土交通省の基本的な考え方は変わっていない。しかし、現時点において、タクシー事業者で全て賄いきれておらず、ボランティアの移送サービスがそういう部分を担っているというのも事実である。
【運営協議会の開催】
地方公共団体が運営協議会を主催し、様々な協議を行う。協議会のメンバーや、協議内容などは、自治体の裁量に任す。協議会の設置の要望は、自治体の福祉部局に相談にいってもらう、というのが基本だが、側面的には運輸局もバックアップする。市町村だけでなく、県にも特区としての認定を行って運営協議会を行ってほしいと文書でお願いをしている。運営協議会での議論の内容は、輸送の状況、利用者の状況、ボランティア輸送が必要であるのかどうか、また、その輸送が基準にマッチするのか等である。協議会で協議が整った部分は、道路運送法80条の許可を速やかに(1週間以内に)許可を出す。
運営協議会は基本的には公開が望ましい。ボランティア、市民、タクシー事業者、それぞれの関係者の言い分をチェックしてもらうというのが重要ではないかと思っている。
札幌のNPOとタクシーの共同運行システムの構築のように先駆的な取り組みには、運輸局も関わりたい。
【運送主体】
運行主体は非営利法人としている。農協、医療法人、労働組合などは、通達の中では明らかにしていないが、基本的には許可の対象とする。自治体が主催するボランティア団体は、自治体の責任において行われる場合には、任意団体として許可の対象とする。シルバー人材センターは、将来的には法人格をとってもらい、許可の対象とする。他の任意団体、個人については、対象としなかった。組織になっていない部分は責任が担えるのか疑問視した。
【運送の対象】
独立して歩行が困難、単独では公共交通の利用が困難な人が対象である。肢体不自由、人工透析など、いろんな状況のもとで移動困難な人が多いのではないか。一時的に怪我をするなどして移動困難になった人は対象にしない。運営協議会で議論をしてもらって、許可が得られればよい。抽象的であるが、移動制約者という書き方にした。
【運転者の要件】
二種免許が基本であるが、必ずしも二種免許でないとダメということではない。研修、講習が必要である、としている。通達の書き方からすれば3つの条件のいずれか一つを満たしていればよいが、自治体には、この3つを必ず満たしてほしいと話をする。移送サービスネットワークが実施しているような研修も対象としている。ある程度、集合体でやっている研修は対象になる。
【運行管理】
輸送の部分、利用者に対する責任については一定の水準を確保してほしい。運行管理者には、資格等の義務付けはしない。
【運送の対価】
タクシーの2分の1以下が目安である。必ずしも2分の1以下ではなくてもよい。一部、タクシー運賃より出てもよい。全般的に見て、2分の1以下に決めていただければよい。
身体介助、乗降介助をやっている場合、その料金を取るとタクシーの2分の1以下にはならない。介助料金は運賃の中には含めない。実質、輸送の対価の部分だけ、タクシー料金と比較する。できるだけ実態に合わせたような形で、輸送の部分だけみればよいと思っている。
【セダン型特区】
現在、7地区で特区を認めている。去年の例を見ると、受付から実施までは3ヵ月ぐらいかかった。期間は、それぐらいの余裕を見てもらいたい。
【質疑応答】
Q:身体障害者、高齢者は基本的にはタクシーを利用すべきだ、という意見があった。そんなことは断固として受け入れられない。こういう新しいNPOのような非営利での移送サービスが始まった。新しい通達をするのならば、新しい目線で考えてほしい。
昨日、県に行ってきたところ、「通達は来たが、どこの部署も運営協議会を受けるところはない」と言っていた。滋賀県は福祉が進んでいる状況だが、こういう状況である。特区をやる気もない。そうなると「移送をやめろ」と言っているのと同じである。やめると今の利用者である50名が移動できなくなる。
A:国土交通省、道路運送法は事業者を対象として行ってきた。有償で他人を移送する場合は、基本的に許可をとってもらいたい。ボランティアの福祉輸送を認知していないということでもなく、ただちに取り締まりをするということでもない。それぞれの団体において、組織の中において、準備期間を設けてお願いしたい。
県についてだが、介護保険、支援費制度、NPO等の市民参画、交通政策に関係する部署に対し、運営協議会の設置をお願いする文書を出した。NPOが困っていることを聞けば、陸運局としても県と協議させてほしい。
Q:介護保険の枠内で、施設と自宅との輸送はOKと言っていた。自宅から他のどこかに行くときには有償で法に反する。これの違いはどういうことなのか。
A:施設が介護保険の枠内で行う場合、介護報酬が対象となっている部分は有償とみなさない。
平成14年までは無償運送事業というのがあったが、規制緩和において、無償で行う部分については、白ナンバーの車両でよいということになった。たとえば、近所の人を乗せていく、菓子折りや1000円ぐらいを受け取る、好意同乗の場合は規制の対象外である。会員制で、ガソリン代と言いながらも料金をとっていることを明らかに掲げている部分については有償とみなす。好意同乗を継続的に行い、料金を払うことが常態化した場合には、有償性が発生するとみなす。
Q:移動困難者がどの程度いるのか。要介護認定とか身体障害者の数だけでは移動制約者がつかめない。どのような社会基盤があるのか。どういう交通ニーズがあって、計画を立てているのか。運営協議会はどのような議論を担わないといけないのか。
近畿内において、特区や運営協議会の立ち上げについて手を挙げている自治体があるのか。
運営協議会が新たな規制になるのではないかと懸念している。なぜバス、タクシー業界の方々が運営協議会に入り、NPO法人が除外されるのか。今まで法的にはグレーで自由活動してきたのだから、こんなことはしないでほしいと頼みたいぐらいである。
A:運営協議会の協議事項についてだが、ガイドラインで示しているのは、あくまで例示である。基本的に自治体が協議する部分、要介護者、身体障害者、移動制約者などのデータを踏まえて、議論を深めてほしい。ここに書いてあるような観点で議論を進めてほしい。地域の実態を把握してほしい。
近畿圏内における特区や運営協議会の立ち上げは、現時点では、掌握していない。全国的には、長野県中川村で4月1日から展開している。3月中に運営協議会を実施した。その地域のタクシー事業者の団体の方、運転手などが入っているが、「私たちは福祉輸送をしない。どんどん移送サービスをやってほしい」という声だった。NPO団体の皆さまにも入ってもらいたいとは思っているが、本省で文書を作る段階では、許可の対象者を入れるのはおかしいという結論になった。
国としては、運営協議会の開催をお願いしている。基本は開催であるが、開催しなくても合意が得られれば道路運送法80条の許可は可能である。議論が整わない場合は中立的な立場の意見を踏まえて、最終決定を自治体が行ってもよい。自治体の結論を尊重する。地域の移送困難者の輸送をどうするのか、という問題を解決してほしい。
2.問題提起 猪井 博登氏(大阪大学工学研究科交通システム学領域)
【地域のニーズをどう把握するのか】
移送サービスで、どれだけの人に選べるように、機会を与えることができたのかどうかが重要である。単に外出の実現ではなくて、精神的な自立に欠かせない。障害の有無は移動の状態とは必ずしも一致しない。外出目的地自体に制約をかけるべきではない。人の困難はそれぞれによって違う。
【Capability Approach】
Capabilityを「生き方の幅の広さ」というふうに訳している。生き方には無数の生き方がある。いろいろな生き方、この広がりがどこまで広がっているのかを見る。Capabilityが欠けている人をどうやって助けていかなければいけないのか、ということを考えたい。
【行政とNPO】
行政とNPOの意見が合わない理由として、公平性を保てないのではないかという行政側の危惧がある。住民の意識自体を変えて、移送サービスの意義を理解してもらい、バランスが取れるようにしないといけない。公平性という観点では、大きな天秤(バランス)を見るのも大事だが、小さい天秤を見るのも大事である。
NPOの特性としては、柔軟性と機動性の利点、恣意性がある。目の前に困っている人がいれば、助けてあげる。それが地域全体としてみた場合に、公平性があるかというとそうではない。NPOに合う活動をしていけばよい。行政が押さえない部分をNPOが押さえ、NPOと行政がいかに補完しあえるかが重要である。
【コミュニティによる交通】
コミュニティによる交通を作るには地域の努力が必要である。地域の状況を知ることが自分も地域の交通をさせていこうという気持ちを喚起する。単に運転というだけでなく、様々な参加の仕方ができ、住民が参加しやすくなれば、地域の交通になっていくのではないか。
【ガイドラインに対する関する意見】
移送サービスは、NPOによる実施が当然、という風潮を作るのではないかという懸念がある。交通バリアフリー法の中で、きちんと位置づけてほしい。
3.移動・送迎サービス実施団体による現状報告
◎鬼塚 正徳氏(移動サービス市民活動全国ネットワーク)
【国土交通省と移送サービスの全国ガイドライン】
国土交通省の人と初めて話をする機会を持ったのは、ほんの数年前のことである。1年前に田中さんに話を聞いたときには、移送サービスについてほとんど知らなかった。それをたった1年であれだけ勉強した。今回出たガイドラインは、タクシー事業者がびっくりするようなものである。国土交通省は、道路運送法の中で移送サービスを組み込んでしまおうという姿勢である。ガイドラインをみると、いろんなことができる、できないというのがわかる。地域の中でいろんなことができるのかどうか、と捉え方は異なる。
【全国ガイドラインの影響】
ガイドラインをうまく使えば、新規参入が増え、新しいサービスも増えるだろう。しかし、道路運送法の中には、入りきらない部分も多いだろう。今までボランティアでやってきたことが、事業としてやるのがよいのかどうか、それぞれの団体の適性にあうのかどうか考えなければいけない。利用者にとっていろんな手段が増えたほうがよい。金もうけするような人でも、どんな人でもよい。
ガイドラインに対して、「私の活動は続けられるのか」「どうしたら許可が取れるのか」といった質問がたくさん来ると思う。全国移動ネットワークは、そのための相談窓口を作ろう、というのが目的の1つである。ガイドラインは非常に読みにくい。今回発行した『モヴェール』で特集しているので、ガイドラインを研究する上で、参考にしてほしい。
【県や市町村を動かすには】
県や市町村に行っても相手にしてもらえないというのは、あたり前だと思う。相手にしてもらえるように、工夫をしてほしい。我々は非営利であり、今後広く事業をするためには道路運送法80条許可を取る必要がある。そうなると、自治体に行って運営協議会を行ってもらわなければいけない。個々の団体でやるとなかなか難しいので、各地域でネットワークを作ってやればよい。市民団体はネットワーク化が弱い。手を取り合って、誰かがリーダーシップをとって、地域のことを本当に話しあってほしい。福祉輸送だけでなく、交通バリアフリー法等広い範囲で考えて、自分たちで地域福祉計画を立てられるぐらいになってほしい。
◎阿部 司氏(東京ハンディキャブ連絡会代表)
【移送サービスの合法化】
「移送サービスは日本の法律の中では違法だ」とずっと言われてきたが、ここにきて合法になる機会を得た。「今まで自由にやってきた」とみなさんは思っているでしょうが、全然自由ではなかった。料金ではなくて寄付金という形にする、車両の許可についても陸運に車両の登録の際には、活動の内容を話すと「違法だ」と言われ、しぶしぶ認めさせなければいけない。我々がやっていることは、そういう状態に今まで置かれてきた。
移送サービスは、運送事業者を規制する道路運送法の中で例外として認められた。様々な許可を受ける条件があり、それを非営利では緩められた。当面の非営利の移送サービスを法律上に位置づけようというだけであり、本当に我々の活動が公認されたとは思っていない。将来的には新たな法律を作るか、道路運送法を変える必要があるのではないか。
それでも悲観的に捉える必要はない。我々のような移送サービスを実施している団体で、警察の手入れを受けた例が何件かある。警察が行うことは、国交省としても意見ができない。少なくとも、ガイドラインに合致していれば、警察の取り締まりにあたらない。小さな団体が細々とやっているという状態を抜け出すためにも、ガイドラインは必要である。料金を大きく表示でき、広報活動も堂々とできる。多くの人々に、この移送サービスの存在や意義を知ってもらえる。
【運営協議会と自治体との関係】
運営協議会はうまくいけば、地域の交通を考えていく場になる。例示がいろいろ書かれているが、あくまで例示である。NPO団体であっても、審査の対象になっていなければ、入っても問題ない。審査の対象になっていても、行政が必要だと判断すれば入ることはできる。運営協議会の議論は、移送サービスをやっている団体に有利な方向に進めることは可能である。自治体との関係を作り上げていくことが大事だ。
簡単に自治体は動いてくれないだろう、と思う。市が動いてくれないならば、県に話を持っていくことも可能。各市町村でやるよりも、大きく都道府県でやったほうが、自治体の実務的にもやりやすいと思う。長野県ではそういう方向で進んでいるという話も聞いている。
【安全性の確保ときちんとした運行】
安全を考えて運行しているという証明ができればよい。運行管理者については資格はいらないので、スケジュール管理、車の管理、運転手が酔っ払っていないか確認しているか等をきちんとしていれば立派な運行管理者である。研修はきちんと受けてほしい。今回のガイドラインは、きちんとした研修を受けているという証拠さえあればよい。研修を全然しないのは問題。安全の確保はないがしろにしてよい問題ではない。去年国交省が行ったアンケート調査によると、NPOがやっている移送サービスの「約3割は研修を行っていない」という回答であり、私はショックを受けた。利用者の安全をどうやって確保するのか、どの団体も考えてほしい。
この先、新聞やマスコミに取り上げられる団体が増えるだろう。許可を受けた団体が事故や問題を起こすと、ガイドラインがひっくり返ることになる。これから移送サービスを行う団体は、誰からみても恥ずかしくない、きちんとした運行をしてほしいし、我々もやっていきたい。ガイドラインは、諸手をあげて喜ぶような内容ではないというのはわかっている。しかし、これを積極的に利用して、どんどん許可をとっていけばよい。タクシーと比べて、遜色のない輸送をしているということを示せばよい。多くの人が問題の所在を知り、移動を社会的な問題として捉え、課題をクリアするために、積極的にやっていくことが重要である。
東京交通新聞(2004.4.26)
『移動サービス・セミナー開催〜関西STS連絡会〜』
関西STS連絡会(上田隆志代表)などが主催する「移動送迎サービス全国ガイドライン検証セミナー」が17日、茨木市の男女共生センターで行われ、畿内の移送ボランティア関係者ら約100人が参加した。近畿運輸局の田中俊幸自動車交通部次長らが講演を務めた。
田中氏は、先に国土交通省と厚生労働省が示した「NPO等福祉・過疎地有償運送の全国ガイドライン」について説明した=写真。移動制約者のSTS(スペシャル・トランスポート・サービス)が公共交通機関のみでは十分に確保されていない現状などを踏まえ、厚労省と調整の上、介護輸送の中間整理案(ガイドライン)策定に至った経緯などを紹介。
ガイドラインの中身については問答形式で説明し、この中で@有償運送許可(道路運送法80条)は「運営協議会」の方針が優先する、A「運営協議会」は都道府県単位での設置が現実的、Bセダン車両使用は特区以外も先行き認める方向にある――などと指摘した。会場の移送ボランティアとの質疑応答も行われた。
次いで大阪大学工学研究科 の猪井博登氏が「これからの移動送迎サービス」をテーマに講演。引き続き移動サービス市民活動全国ネットワークの鬼塚正徳事務局長と東京ハンディキャブ連絡会の阿部司代表が現状報告を行った。
鬼塚、阿部の両氏は、移送サービスの法整備がここ数年で進展したとし、現状では道路運送法の枠内で活動を進めていく形が賢明との見解を示した。
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