
■日時:2004年11月27日(土)10:00〜16:30
■会場:大阪市立いきいきエイジングセンター
■主催:関西STS連絡会
■後援:大阪府、大阪市、大阪府社会福祉協議会、大阪市社会福祉協議会、茨木市社会福祉協議会、(特活)大阪NPOセンター、日本福祉のまちづくり学会、ジェイアイシー大阪
■協賛:日本財団
あいさつ:鬼塚氏(全国移動サービスネットワーク)
ガイドラインが出てから半年、様相ががらっと変わった。この変化をセミナーで感じてほしい。ガイドラインは、行政に運営協議会を義務付けたため、行政は移動サービスに対して知らん振りができなくなった。行政をいかに動かすかが課題である。やり方を行政は知らないので、市民側がイニシアティブをとれる。みなさんが自信をつければ、地域は動く。ぜひ自信をつけて帰ってほしい。
《セミナー1》基調講演
『誰もが安心して移動できるまちづくりに向けて』 新田保次氏(大阪大学大学院工学研究科土木工学専攻交通システム学領域教授)
交通の重要性、個人にとってだけでなく、社会にとっても重要である、ということを話す。
<モビリティの上昇と格差拡大>
この30年間の一人ひとりの移動距離の変化をみると、全体では一人あたりの移動距離は増えている。しかし、車を使えない人、バスに頼らざるを得ない人の移動距離は減っている。日本は平均的には便利になっているが、モビリティの格差が拡大している。その格差を是正するのがコミュニティバスであり、STSである。コミュニティバスやSTSも動く公共施設として捉えていくべきである。
移動が増えるのが、幸せかどうかというのは別である。今までは移動距離が増えることは、よいことだと言われてきた。アクセシビリティが高い町であれば、モビリティが低い人でも歩いて暮らせる。
<バリアフリータウン構想>
交通バリアフリー法の基本構想は、市町が構想・計画の主役である。市民参加をどのようにつなげていくか、各自治体の力量が問われる。交通バリアフリーの整備は、個々の目的に目がいきがちだが、大目的を忘れないように。「すべての人に対する自立した日常・社会生活の実現」が重要である。上位の目的を、常にチェックしながら進める。高い志。自分のことだけでなく、社会の発展に寄与している。
<潜在能力>
潜在能力とは、生活を支える基礎になる部分。その人が持っている所得や資産で、何ができるかという可能性を表す。我々は今まで、行動結果として出てきた目に見えるものだけを見てきた。本来は潜在能力を見ないといけない。STSは人の潜在能力を高める一つの手段である。
《セミナー2》特別報告
@「80条ガイドラインに至る経過と施行後の現状」 田中俊幸氏(国土交通省近畿運輸局自動車交通部次長)
<80条ガイドラインによる福祉輸送の経過>
市民団体が行っている移送サービスは、ガソリン代程度の対価をとっていると、「道路運送法」に抵触する。しかし、ただちに告発するという状況ではなく、黙認をしてきた。タクシー代以上の高額な料金をとっているところは、指導を行ってきた。
介護保険事業者が行う移送に関して、平成13年1月に「道路運送法」に抵触するという警戒を出した。厚労省の見解では、介護保険は介護に対する報酬であり、移送に対する報酬ではない。それを踏まえ検討をはじめたが、経済改革特区が始まった。福祉輸送と過疎地輸送を合わせて11地区で行われた。
平成15年4月に「介護保険が改定」された時に混乱が生じた。移送は「道路運送法に抵触する」という文書を流した。その後、5月に「必ずしも許可を受けないと介護報酬を支払わないというものではない」という文書を出した。当時、それぞれの自治体が様々な考え方を示して、収拾がつかなかった。そういう混乱を避けるために、今年の3月の「通達」を出した。通達に至るまでに厚生労働省と協議をし、ハンディキャブの代表の方、タクシー事業者の代表の方等、関係者の方からいろいろな意見をいただいた。
<ガイドラインで整理した点>
第1点は、訪問介護に関する部分。支援費制度も、介護保険と同様に取り扱う。訪問介護事業者の移送についても、タクシー事業もしくは特定事業(特定の契約をして運賃は任意で設定できる)の車両は“青ナンバー”が基本である。NPO等の非営利法人は、「運営協議会」における協議、「ガイドライン」の一定の手続きを経て、「道路運送法80条」の許可をとる。特区だけでなく、全国的に行う。訪問介護事業者のヘルパーが持ち込む車両は、一定の条件のもとで“白ナンバー”でもよい。必ずしも“青ナンバー”をとらなくてもよいが、安全性に関する説明は介護事業者が必ず行い、ヘルパーに押し付けてはいけない。
第2点は、施設対応。デイサービス・センター等の施設サービスについては、「介護保険法」に基づく送迎加算を受けられる移送に限って、従来は“青ナンバー”といっていたが、施設移送は“自家輸送”とした。
第3点は、許可を受けないで移送をしているものについても、ただちに取り締まるというわけではないということ。正式には期間を明らかにしていない。「介護保険法の改正」が18年にある。各事業者が所定の手続きをとるよう指導をしている。この2年間が終わって、各県の状況をみて、再度検討したい。
<セダン型の福祉有償運送>
今年4月から、セダン型の特区申請も認めている。セダン型も、早ければ来年の4月から全国展開する。
<ガイドライン施行後の運営協議会>
「運営協議会」は、全国的には特区を含めて21箇所。そのうち福祉輸送は14箇所、過疎地輸送は7箇所である。関西では、大阪府枚方市、兵庫県山崎町で行われている。枚方はセダン特区も受けている。
「運営協議会」は市町村単独が基本だが、県単位でも可能である。岡山県は、ブロック分けで実施している。県の「運営協議会」ではタクシー団体の代表、各ブロックの「運営協議会」ではそれぞれの地域に応じた関係者が入ってほしい。3月以降、国交省から自治体に対する働きかけを行っている。「運営協議会」設置に関しては、ボランティア団体自らが動いてほしい。「移動困難者の外出支援、社会貢献としてやっている」というアピールをしてほしい。一つの団体では難しい面もあり、ネットワークを組んでやってほしい。
A「各府県からの報告」 大阪府健康福祉部健康福祉総務課 領家
大阪府は44市町村あるが、市町村境界が山等で分断されていないため、生活圏の流動性が高い。また、申請件数は少ないのではないかと思われる。各市町で「運営協議会」を実施すると、手続きが煩雑になり、学識経験者等が足りない。そのため、ブロックに分けて実施する。ブロック割、マニュアルの作成、委員の先生の委嘱は広域的に府で行い、個別の「運営協議会」の設置、運営は複数の市町村で行ってもらう。
府内の市町村に「運営協議会」に対するアンケート調査を実施したが、「運営協議会」に向けて具体的な取り組みを行っているところはなかった。重点指導期間が2年であるので、来年の4月には協議会を開催したい。
府内事業者は「介護保険の乗降介助」について、非営利法人約100事業者からの届出がある。同じように「支援費」の事業者は62社の届出があるが、そのうち非営利は11、許可書の添付がないのが9ある。
B−1「社会福祉協議会からの報告」 大阪府社会福祉協議会 西原
平成16年3月時点の調査であるが、大阪市は除く23社協で移送サービスを実施している。うち、自主運営が19、行政からの委託が4である。現状の問題点として、ボランティアの高齢化、後継者の不足、研修、安全性の担保といったことが挙げられている。
移送サービに限らず、いろんなサービスを実施する際、「すべての人に対する自立した社会生活の実現」というのが大目的であり、忘れてはならない。当事者、利用者の方の声が反映できるよう、また網の目からおちる潜在的なニーズへの対応をどうしていけばよいのかといったことを、トータルで考えていかなければならない。社会福祉協議会としては、自己完結型ではなく、行政、
ボランティア、NPO等とネットワークを組みながら、一緒に考えていきたい。また、地域で具体的に動きたいということがあれば、社協に相談にきてほしい。
B−2「社会福祉協議会からの報告」 京都府社会福祉協議会 渡辺
京都府内は38市町、約8割が移送サービスを実施している。市町からの委託が7割、補助もいれると9割が行政と関係がある。6月頃に近畿運輸局に「道路運送法80条」について話しにきてもらった。京都府に要望を出したが、担当部局が決まっていない。委託元である行政は状況を把握しておらず、「運営協議会」を作るという思いが弱い。社会福祉協議会側は、来年もこのサービスを実施できるのだろうかという危機感がある。
ボランティアが足らないことが課題である。高齢化している地域が多く、運転できる人より運転してもらいたい人のほうが多い。また、担い手も高齢化していることから、法人格の取得はハードルが高い。
府が出した「丹波地域の交通対策」の中で、公共交通ネットワークの例として、自家用車の活用、地域組織やNPOが主体といったことが書いてある。採算面から、今までのようなバス会社の運行は難しく、利用者にあったデマンド型の交通が必要である。福祉移送は、地域福祉計画にのせていかないといけない。社協でも地域活動計画にしっかりと明文化し、実体を伴ったプランを作っていきたい。
C「タクシー事業者からの福祉送迎の現状と課題」 黒田司郎氏(全国介護移送協会代表)
<福祉タクシーの現状>
約25年前に、福祉タクシーができた。その頃、ヘルパーの資格はなく、採算性が悪く、専属のドライバーをつけて運営するほど儲からなかった。介護タクシーは「介護保険」の開始後に出てきたものではなく、メディスという会社が始めたものである。福祉タクシー事業者は、全国で約300社ある。本業が暇になったので新たなサービスとして運行しているところと、「移動困難者の移動支援を主目的」として実施しているところの2種類が混在している。
<全国介護移送協会の取組み>
全国介護移送協会は、「オレンジ・ナンバーをつくり、二種免許はいらないのではないか」というような提言を行ってきた。先日は、NPO法人の設立総会をした。介護移送のマニュアルを作り、ベッド・ツー・ベッドの介助、車の乗降、運転の仕方等の移動に関する技術をまとめた。こういう技術は、介護の現場では確立されていない。このマニュアルをもとに研修を行う予定である。
<タクシー会社とNPOの関係>
現在、「運営協議会」に対して、タクシー事業者から反対されるという状況もある。敵対関係になるのではなく、一緒に担っていってほしい。NPOは、利用対象者を明確にして、一線を引いて守ってほしい。それがタクシー会社の理解につながる。“バリアフリー”は大切なことだが、ハード面だけでは限界がある。私たちや、みなさんの力でバリアを越えていきたい。「介護保険」の中で、ヘルパーによる“自家移送”も始まっている。利用者に選択できる幅を作り、使い分けをできるようになればよい。
D「大和市特区と神奈川県の運営協議会設置への経過報告」河崎民子氏(NPO法人ワーカーズ・コレクティブケアびーくる代表)
<ケアびーくるの概要>
私どもの団体は主婦、定年退職した人が運転を担っている。私たちが新しい公共の一翼を担っていくというつもりで、6年前にマイカーで始めた。しかし家宅捜索があったらつぶれてしまうような団体だったため、法制度がほしいという願いがずっとあった。昨年、内閣府から「構造改革特区」の中で「道路運送法80条」緩和があるという話があり、大和市に働きかけた。大和市は人口22万人、高齢化率14%の比較的若い人が多い都市である。27uの小さな市で私鉄の駅が8駅あり、健常者にとっては便利だが、介護タクシーも福祉タクシーも常駐していない。私たちの団体にはセダン20台、リフト車4台があり、マグネットシートをつけて活動している。紹介が増え、月に10人以上の方の会員が増えている。
<神奈川県の運営協議会の経過報告>
「かながわ福祉移動サービスネットワーク」は、各市町村に公表を前提としたアンケートを行った。神奈川県では市町村を誘導して、3市は単独で、他は6つのブロックに分かれて共同で「運営協議会」を実施している。また県全域で「セダン特区」の申請をしており、12月の中旬には認証される予定である。福祉車とセダン車、同時に認証が得られる。
昨年8月に、神奈川の移送サービスネットワークを呼びかけて作った。今年の3月には、県に要望書を出した。議員に働きかけ、県議会で質問してもらった。市町村に対して、福祉運送実態調査を依頼した。市町村はNPOにも議員にも言われて追い込まれており、県が方針を出した時に飛びついたと聞いている。
8月には市町村との合意がとれたと同時に、「セダン特区」申請に関してタクシー会社との協議をするよう指導があった。介護タクシー協会からは「本当の意味での“白タク”が出ないように」というだけだった。一般のタクシー協会のほうが、お客を奪われるという意識を持っている。
「運営協議会」は、私たちが目指す社会の過程であり、目的ではない。行政とNPOが、同じテーブルで議論できる場である。「予算をとっていないから、運営協議会ができない」と言われるが、やる気さえあれば予算がなくてもできる。大和市の「運営協議会」の参加者には学識経験者は入れておらず、報酬をはらっていない。マニュアルも県でコピーしている。
《セミナー3》パネルディスカッション
・京都運転ボランティア友の会・吉田
リフト付自動車4台、ボランティア27名で活動している。乗降介助だけでなく、ベッドから買い物、遊びに、外出支援活動を行っている。生きる喜びを味わってもらうことが、目標である。ボランティアは仕事を持ちながら活動を行っているため、定期的な依頼は受けづらい。
・阪南市「えぷろんの会」・岩井
えぷろんの会は、10年前に主婦ばかりが集まってできた。活動内容は、移送が中心であった。当初は、市民参加による公的サービスを行おうと情熱に燃えており、移送に関して深く考えていなかった。2000年に介護保険事業者になり、2002年には「支援費制度」の事業者になり、NPO法人も取得した。順調に動いていたが、2003年に「移送をしてはいけない」という通知が入った。「特区」や、NPO団体の摘発等が、移送のことを深く考えるきっかけになった。
情報を阪南市に渡し、「ガイドラインにどのような対応をするのか」と問いかけた。行政も「移送が支援費や介護保険の中で重要になってきている」と感じ始めている。市が「独自で運営協議会を立ち上げよう」と言ってくれたが、大阪府が府全体でやるということになり、その中で阪南市も行うという話になった。
・関西STS連絡会・上田隆志氏
関西STS連絡会の会員は、現在100団体である。毎月の運営委員会には、20から30の団体が参加してくれている。関西STS連絡会の活動としては、セミナーの開催や、ドライバーの研修、大阪府、大阪市に対する要望書、様々な団体の情報交換や、相談を基本としている。移動サービスは、もともと自立支援サービスであり、障害者、高齢者の介護の延長上に移動の権利を保障していくものである。
・関西STS連絡会・柿久保
タクシーに近い、商売に近い課題と、日常のボランティア活動としての課題がある。どちらも「道路運送法80条」に関係する。私たちは、ガソリン代程度の実費をもらって、ボランティア活動としての移動サービスを行っている。関西STS連絡会では、大きな問題としての“移動送迎”を考えていきたいと思っている。
・移動サービスネットワークこうべ・姫野
私どもの活動は、震災から始まった。震災後は、生活支援と、リフレッシュ支援の2つを行ってきた。「介護保険」が始まって、“ドア・ツー・ドア”から“ベッド・ツー・ベッド”になってきた。移動を、安全に安心にやっていかないといけない。利用者の健康状態を聞きながら、コーディネートをしている。私たちがやっていることは違法だということに、最初は気づかなかった。一つの団体でかけ合ってもだめだということに気づき、神戸市内で移送サービスのネットワークを作った。
ネットワーク事業には、3つの柱がある。コーディネート、団体のサポート、研修の3つである。行政の福祉事務所や、社会福祉協議会など、いろんなところでパンフレットを配布している。それを見た利用者が、私どもに電話をかけてくる。すべて会員制である。会員数が多くなり、コーディネート業がとても難しくなった。綿密なスケジュールが必要になる。また、神戸市から「事業所になったのだから、4条か、21条でやって、タクシー会社と同じ土俵に立った方がよい」と言われている。
・柿久保
姫野さんから最初に話を聞いたとき、「コーディネートがうまくいくかな」と心配していたが、うまくやっている。ブロック分けの「運営協議会」が動くと、ブロック内のネットワークが大事になる。そのネットワークがうまくいくように、助け合う仕組みが必要だと思う。神戸の取組みは参考になると思う。
・岩井
一つや二つで動くのではなく、ネットワークで動いた方がよいのではないかと考え、泉州地区の16団体が集まり、「運営協議会」に対して働きかけをしていこうということになった。ネットワークをしっかり組んで、一つの市だけで進むというのではなく、いろんな問題をお互いが解決し合うような連絡会が必要である。各団体の動きが、少し弱いようにも思う。大阪府の市町村会議に出席したが、この「ガイドラインに対する問題は、2市町村しかない」という話だった。今後、実際的な運転に対する講習会を開きたいと思う。行政に対し、こういった活動をアピールしていきたい。
・柿久保
大阪府では、北摂と泉州でネットワークがでてきている。堺市でも、ネットワークができつつある。大阪市では個別の取組みはしているが、ネットワークはできていない。
・吉田
京都市でも7団体で連絡会をたち上げた。移動サービスのみを実施しているところが3団体、居宅介護が2団体、支援費が2団体である。8月に田中次長を迎えて、研修セミナーを開催した。京都府下、滋賀県から32名の方がきた。移送に取り組んでいる団体は種々雑多であるが、私たちがやっている連絡会はNPOが中心である。
京都市のホームページにある“市長への手紙”を利用して、「運営協議会」の立ち上げ、窓口を期待するという“質問状”を出したが、まだ返事が来ていない。
京都府の場合は、交通対策課、介護保険室、高齢福祉課、障害福祉課と様々な課が関係しており、まとめて対応してくれるところがない。京都府は過疎地に対する交通対策は、かなり進んだ考え方を持っている。バス路線を廃止し、交通空白地域になったところでのNPOに対する期待はすごく高い。
また、府は「運営協議会」の主体ではなく、市町村が主体という立場であり、各市町村に話を持ち寄られてから主導したいとのことである。府もNPO団体の活動実体の情報を知らないので、「資料を提供してもらいたい」と言われた。“要望書”を出した後は、私たちは日頃の活動を定量的に把握する必要がある。
・姫野
「運営協議会」を経て「道路運送法80条をとりたい」と思っているが、神戸市の介護保険課から“青ナンバー”をとるよう働きかけられた。神戸市の「運営協議会」は来年度になる。送迎に関する帳簿をしっかりつけていく必要がある。もう一度、私たちの趣旨を問い直して、ボランティア精神を忘れないで活動していきたい。
・柿久保
移動に困っている人の応援をしていきたい。これは事業者であろうが、タクシー会社であろうがかまわない。利用者は移動を確保できれば、どのような立場でもよい。
・上田
この数年は、移動サービスをめぐってめまぐるしい動きがあった。「介護保険制度」「支援費制度」が始まり、その間にNPOも増えた。今年は「ガイドライン」という公的な整備が進んだ。
当事者としては、期待が半分、不安も半分である。20年、30年前は、公的なものがほとんどなかった。特に移動するということに関しては、公共交通機関は乗車拒否が当たり前だった。駅の改札口の中に入れてくれない。エレベーターがないので通行人に助けを求めるのと、駅員との喧嘩で外出するのが億劫になってしまった。そこで、自動車の免許をとろうとしたが、当時は規制がきつくて試験すら受けさせてもらえない。今は重度の人でも自分で運転できる車もでき、免許もとれるようになってきた。30年前とのギャップが大きい。今や駅に行くと駅員が寄ってきて、乗降を手伝ってくれる。表面的なことはどんどん進んでいるが、本当の中身が進んでいるのかは疑問である。
・柿久保
私たちが支援活動をしている原点は、“自立支援サービス”である。病院送迎、施設送迎ではない。社会参加の自立支援であり、自由にさまざまなところに出かけていくのを支援したい。
・吉田
9月に事業者に対して「通達」が出され、指定居宅介護支援事業者は「道路運送法4条」許可を受けておくこととなった。“青ナンバー”になれば、メーターの設置や、車検が1年に1回など、いろいろな規制がある。私たちは「移動だけ、介護だけではなく、バリアフリーの中の一部分を受けもつ」という意識が必要だ。
・姫野
県外からの視察が月に2、3件ある。その際、「利用者にとって必要な社会資源をたくさん知ってください」とお願いしている。私たちが社会資源をたくさん知って、利用者に情報を流してほしい。「支援費制度」を知っている人、知らない人で、生活の状況にすごく差がある。
・岩井
私たちは、これから「ガイドライン」を自分のものにしていかないといけない。府や市の動きを、知らないといけない。情報交換をしていきたい。この「ガイドライン」が利益のために使われるのではなく、利用者の必要なところへ、その人の自立が促進できるような方向へ、進めていけたらと思う。
「枚方市特区の現状と課題」三星明宏氏(近畿大学理工学部社会環境工学科教授)
行政が、「運営協議会」をなかなか開いてくれない。“移送サービス”は実体としてはあるが、「運営協議会」を開き社会資本として公的に認知させないといけない。行政は、従来の延長線上で少し変えるというのであれば、すぐ取り組むことができる。しかし今回は、社会基盤整備と福祉側とが融合し合わないといけない。
今日、考えている問題が10年後、20年後の地域交通を変えていく問題になる。自然発生的には進んでいかないので、行政に対し必要性をどんどん提示していってほしい。役人は志を思い出してもらって、縦割りをうちやぶって、新しい仕組みを作ってほしい。今回の「ガイドライン」は不十分な点は多いが、現場の工夫で、新しい仕組みがつくれるようになっている。
<枚方の取組み>
共同運行の“配車センター”を作ろうとしている。「特区」の成果としては、団体数が4倍に増え、利用者は20倍になった。従来からサービスを行っていたものも投入したが、新たにサービスが増えた。
“移送サービス”は、関東圏は関西圏より進んでいるが、社会システムにのっければ早く進むので、関西も東京にすぐ追いつくのではないか。
今、私が重要だと思っているキーワードを挙げる。
まず、志が大事だということ。やれるところからやる、もの別れでは帰らない。
次に、需要。“移送サービス”には幅広いニーズがある。バス、タクシー、 “移送サービス”と、重層的なシステムをつくり、障害者にも選択性のあるシステムを作っていくべきである。また、制度の隙間がたくさんある。低所得者や障害者手帳を持っていない人を、拾い上げないといけない。要介護度と福祉移送の必要度は、必ずしも同じではない。要介護度が低くても、福祉移送を使いたい人はたくさんいる。
また、過疎移送との関係や、タクシーとの共存も今後も課題としてある。
最後に、コミュニティバスについて。ほとんどの市町村が車両に“ノンステップバス”を入れており、数千万円のお金がかかっている。しかし3、4人しか乗っていないため、採算がとれていない。需要の検討がされていない。同じお金で、福祉移送に活用してはどうかと思う。“コミュニティバス”を全てやめたらいいというわけではないが、もう少し検討すべきだ。
質疑応答
質問1:(移動ネットワークこうべ姫野)
運営協議会ということになると、神戸には学識見識者がいない。先生に神戸にもご協力いただけるとうれしい。枚方市の方には、どういう関わりをしているのか。
・三星
学識経験者は、必ずしも必要ではない。姫野さんが、会長をおやりになったらいい。福祉の交通を専門とはしていないが、福祉のまちづくりをしている先生はたくさんおり、心配はない。専門的な分野は、土木学会と連携をとってはどうか。そういうことは、ネックにならないと思う。
質問2:
旭区で介護事業所をしている。2001年度に「国交省から“白タク”になる」と言われ、介護タクシーをしている。タクシーの中に「介護事業が入ってきたら営業が減る」という懸念を持っている人がたくさんいる。 NPOの中でも、“乗降介助”として申請している人もおり、“身体介護”で申請しているところもある。「介護タクシーがもうかる」ということで、やっている人もたくさんいる。介護のことも知らない人もいる。運行管理を知らない人もいる。
NPOとタクシーと値段の差を、どうしていくのか。タクシーの業界としてもネットワーク化していこうという話があるが、値段がばらばらでなかなかまとまらない。僕個人としては「値段はばらばらでもネットワークしていけばよいかな」と思っている。
・三星
市場で決まるところと、ボランタリーで決まる部分とがあり、非常に難しい問題である。2、3年実施していく中で、決まっていくことである。値段の設定は、経済メカニズムでうまくいく。しかし、「介護保険」「支援費」が入ってくると話が違う。有償ボランティア程度であれば、これらを使えば交通部分は0円で行える。現場ですり合わせて、議論を行って割り切って設定しないといけない。
東京交通新聞(2004.12.13)
『関西STS連絡会がセミナーを開催』
関西STS連絡会(上田隆志代表)は先月27日、大阪市立いきいきセンターで「全国ガイドライン検証セミナー」を開催した。加盟するNPO諸団体のほか、近畿管内の各自治体の福祉関係職員や社会福祉協議会などから160人余が出席、有償運送事業への関心の高さを感じさせた。
セミナーでは、大阪大学大学院の新田保次教授が「誰もが安心して移動できるまちづくり」をテーマに基調講演。近畿運輸局の田中俊幸自動車交通部次長が「道路運送法80条ガイドラインに到る経過と現状」、全国介護移送協会の黒田司郎会長が「福祉送迎の現状と課題」について報告。大阪府が「運営協議会」の設置見通しを述べた。大阪と京都の社会福祉協議会代表、神奈川県大和市の河崎民子NPOワーカーズ・コレクティブケアびーくる代表も現状を報告した。
パネリスト4人によるディスカッションのあと、近畿大学の三星昭宏教授が「枚方市特区の現状と課題」と題した講演を行った。
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