■日時:2005年3月12日(土)10:00〜16:30
■会場:神戸市立三宮勤労会館
■主催:関西STS連絡会、移動サービスネットワークこうべ
■協賛:日本財団



1.移動送迎支援サービスの現状と私たちの課題:関西STS連絡会 事務局 柿久保浩次氏
 ガイドラインが出て1年が経過し、移送サービスに関する保険も出来るなど、移送サービスを取り巻く環境が徐々にできつつある。
 移送サービスに関しては、各府県で対応が異なる。大阪府の場合は、介護保険の乗降介助は届出をすれば、どんな事業者でもすることができる。しかし、兵庫県や他の府県は4条か43条の認可を受けていないと、乗降介助ができない。
 大阪府は5つのブロックで運営協議会を実施する。4月の後半にNPOに対する説明会があるだろう。運営協議会では、STSに関する議論を本当は進めてほしいが、現実には会議をして終わるということになると思う。運営協議会が実施されないと、私たちの活動は違法になる。大阪府内では、NPO・社会福祉法人等から100件ぐらいの届出があるだろうと予測している。
 段階を踏んで、セダン特区を要望していきたい。今年の2月、セダン特区の全国展開が見送られた。見送られた理由の一つは、件数が少なすぎるということである。来年の4月にはセダン特区の全国展開ができればよいと思う。


2.大和市特区と神奈川県の運営協議会設置への経過報告:NPO法人ワーカーズ・コレクティブケアびーくる 代表 河崎民子氏
 神奈川県は、福祉有償運送に関しては全国のトップランナーである。神奈川県は現在、セダンで活動したい場合は、運営協議会で届出をすれば、即認められるという状況にある。
●大和市特区と「ケアびーくる」の活動
 ケアびーくるは、現在は4台の福祉対応車両を持っているが、当初はセダン車だけで始めた。福祉関係の窓口、ケアマネージャー等からの紹介が多く、年間100人ぐらいの新規会員がいる。登録された方は500人ぐらいいるが、亡くなられたり、施設に入られたりするので、現在の利用会員は235人である。
 大和市は市民活動が活発な町であり、「新しい公共を創造する市民活動推進条例」に基づき、市と対等の協定書を締結している。そのため、早い段階から市民が政策提言に参加できるようになった。行政が運営協議会を作らないのは「予算がとれていない」ことを理由としているが、予算がなくても運営協議会はできる。大和市の運営協議会は、非営利活動のことを話しあうので、委員には無償で参加してもらっている。
●かながわ福祉移動サービスネットワークの活動について
 2003年12月に、かながわ福祉移動ネットサービスから、国土交通省の旅客課に要望を出した。特区のガイドラインは、タクシーとの比較で書かれているため、現場に合わないものであった。国交省の担当者は意見をよく聞いてくれた。それまでは、地域が問題解決しようとするのに対し、国や県は敵だと思っていたが、私たちがまじめに働きかければ、きちんと対応してくれると気づくきっかけになった。
 2004年2月に大和市が出したセダン型特区は、内閣府から逆に出してくれないかと打診があった。活動は9時台が重なっており、団体が持っている車両だけで賄おうとすると、車検代等でやっていけなくなるか、利用者の希望も断らないといけない。今は20台以上のセダン車を持ち込んでいる。知的障害の方や要介護2くらいまでの方、また、車いすの方でも30分以上乗るときはセダンに移乗したほうが乗りやすいという場合もある。会員の持ち込み車を使うからこそ、移動サービスは利用者のニーズを柔軟に取り込むことができる。大和市はそのあたりを理解してくれた。
 神奈川県は全国ガイドラインが出たらすぐに、県知事あてに要望書を提出した。法条例の整備と実態調査をしてほしいという要望書である。県はこの要望書に沿って動き、2004年5月には、市町村とともに福祉運送実態調査を行った。福祉車両が246台、セダン車両が898台と約3倍のセダン車両が使われている。この調査を元に、県はセダン特区申請を決意したとのことである。
 2004年6月に県が、市町村対象に「運営協議会主宰に関するアンケート調査」を行ったところ、県がやらないならば市町村がするといった反応があり、県は運営協議会の実施に前向きになった。7月には県議会で、知事@複数市町村による共同設置の誘導A県全域でのセダン特区申請を検討、と答弁した。
 セダン特区は自治体が申請するものなので、タクシー会社との調整は必要だが、運営協議会にかける必要はない。タクシー会社は合意するわけがない。特区が始まったときは、タクシーの死活問題だという反対意見が強かったが、県全域で行うという説明に行った時には、行政がやるのであれば仕方がないという対応だった。
●市民セクターの役割
 ボランティアやNPOといった市民が中心となって組織して活動をすすめるセクター(分野または部門)を「市民セクター」と総称する。一方、政府や自治体といった公的部門を「行政セクター」、企業などの経済団体を「企業セクター」と呼ぶ。社会は、これらの3つのセクターから成り立っていると考えることができる。日本は今まで、行政セクターや企業セクターの動きに比べ、市民セクターの部分が弱かったが、近年、ようやくNPO法ができた。
 先日全国移動ネットワークのセミナーで、島根のNPOで「自治体は運営協議会を期待できないから4条許可をとった」という団体があった。2種免許のドライバーが一人いれば、後は白ナンバーでもヘルパー持ち込み車両で活動ができるとのことである。
 市民活動として移動の自由を守るというミッションをもって活動していて、ようやく運営協議会という道が開けたのに、企業等と同じ土俵にのる必要はない。運営協議会を設置するのは大変なことだが、ここで踏ん張ってどうにか運営協議会の方向に持っていくことが大事である。
●今後の課題
@運営協議会の構成員
 許可を受けようとしている団体は運営協議会の委員になれない。運営協議会に入っているNPO代表も市民の代表も、ガイドラインのことをよく理解していない。横浜のNPOの代表は、「もし事故が起きた場合、自治体が責任をとってくれるのか」という発言をして、それがトラモンドというタクシーの業界紙に書かれ、移送サービスの実施団体は非常に迷惑をした。
A地域のフォーラムの実施
 今まで、神奈川県内の6箇所でフォーラムをしてきた。小さな団体でガイドラインが出たことすら知らない団体、確信犯的に移送サービスをやっていく団体がある。そういうところに合意を得ていくことが目的である。移送サービスを実施している団体は、料金が100円であろうと法人を取るべきだと思っている。NPO法人は情報を公開することが義務付けられており、情報を公開することで、社会に責任を果たしていくべきだ。NPO法人になったら、毎年県に報告書を出さないといけない。大和市では福祉タクシー券は非営利の団体でも使えるようになっており、利用者のメリットも大きい。法人格をとれば、そういう契約もできる。
 またフォーラムは、行政とNPO法人とのコラボレーションにも役立った。行政の方にNPOの実態を聞いてもらうことができた。
B管理型の運営協議会の失敗
 横浜市は360万人の人口を抱える都市で、全国の運営協議会の中でも最大の規模のものである。今のところ区の社会福祉協議会が行っている有償ボランティアや生協法人等、60数団体の申請が出ている。横浜市は管理型でやろうとして、いろいろ問題が出てきている。ガイドラインでは移動困難者として、要介護認定、肢体不自由、内部疾患など移動困難者、障害者手帳を持っている人となっている。横浜市は、身体障害者手帳を持っていない人は、診断書を出せといっており、問題が起きている。要介護認定も身体障害者手帳を持っていない人でも、大和市で説明責任が果たせれば問題ないと言われている。横浜市は管理型でやろうとすると、こういう結果になる。
C申請の相談窓口の必要
 NPOが申請をするにあたって、相談をするところが必要だと思っている。行政も各NPOに出向いて申請手続きの説明をしてくれるが、行政に相談できないこともいる。要介護認定を受けていなくて、身体障害者手帳も持っていない移動困難者は、行政側から見て「何でこの人が移動困難者なのか」と思われる。そういったこと等に対する相談ができるとよい。
D運転者の研修
 運転者の研修に関しては、いろんなところがテキストを出している。自分の団体で研修をするのが基本であるが、講師を出すのがむずかしければ、関西STSや神戸移動ネットワークなどに相談すればよい。神奈川では2000人以上のボランティアが活動している。県の社会福祉協議会には1000人のボランティアが登録しており、この人たちに対しては社協が研修を行う予定である。残り1000人の研修をどうしていくのかということが課題になっている。
 またタクシーとのコラボレーションとして、タクシーの新人教育する人に講師になってもらって、これから講習会を実施していこうとしている。現在、その組み立てで四苦八苦している。
●質疑応答
【質問1】福祉有償運送の料金は、一般タクシーの料金の半額程度といわれているが、すり合わせはどうしているのか。
 タクシーの2分の1程度というのは運賃に対してであり、料金ではない。ケアびーくるは時間単価でもらっている。介護技能と運転技能に分けられない。国交省は、介助や介護に関する部分は門外漢であり、その部分はいくらお金をとってもかまわないという姿勢である。
 大和市で申請する団体は、ガソリン代35円/km+介助料金としている。ガイドラインは、トータルに収入がタクシーの半分であればよい、というのが趣旨だが、運営協議会では、10分利用した場合のタクシーの料金とNPOの料金、1km走った場合とかで比べようとする。この料金体制は運輸局側から提案された。しかし、これを見ると「こんなに安いのなら使おう」と問い合わせてくる人がいるため、公表できない。公表できないような書き方は、これからやめたほうがよいと思っている。
【質問2】セダン型特区とは何か。また、市町に対して実施したアンケートはどのような内容か。
 セダン型特区というのは、構造改革特区の中の1つである。構造改革特区は福祉有償運送に関わらず100以上のメニューがあり、地域の中で規制が緩和される、という仕組みである。セダンの特区を申請して認められると、福祉車両に加えてセダン型車両でも許可を得ることができる。
 アンケートは、NPOが市町村に脅しをかけるために実施した。国交省が出しているガイドラインについて、市町村はどのような取り組みをするのか。結果は未回答も含めて公表する、と書いた。
【質問3】兵庫県高齢者生協だが、移送サービスを継続するために4条許可をとり市民団体に足をおくのか、営利団体に足をおくのかという立場が難しくなった。全県で活動をしようとすると、全県単位で4条許可をとらないといけない。篠山市が運営協議会を実施するとのことで、篠山市から打診がきた。現地の要望を聞いたが、神姫バスがどんどん撤退しており、一般の高齢者も移動できない。行政としてこの問題を真剣に考えてほしい。生協の全国ネットワークがあるので、こういう運動を進めているが、遅々として進まない。
 運営協議会は、地域福祉や地域交通をフォローする場にはなかなかならない。大和市も2年する中で変化が出てきている。大和市もコミュニティバスを2ルート運行しているが、利用者が少ない。DRT(予約式)として活用できないかと考えている。運営協議会が設置されたら、地域の実情をまじめに訴えてほしい。やる前からいろいろごねたりしないで、取り組んでほしい。次のステップにつながる。
【質問4】移送サービス実施団体が、運営協議会の構成員に加わっていないのはなぜか。また、地域における料金設定についてどのように決めればよいのか。
 当事者は議決に加わらないというのが、民主主義の原則である。ケアびーくるを審査しているときは、他の移送サービスの団体が審議に加わるということになった。
 個別の内容は事務局と話している。運営協議会に出すから料金設定を変えるというのではなく、まず、事務局と個別に話したほうがよい。


3.近畿圏内の80条ガイドライン後の現状:田中俊幸氏(国土交通省近畿運輸局自動車交通部次長)
●近畿圏内の動き
 枚方市では、特区の運営協議会が開かれており、その承認を受けた団体が全部で14団体、車両は75台ある。そのうちセダン型の車両が13台含まれている。14団体のうちNPO法人は6団体、残りは社会福祉法人である。三星先生の指導もあり、共同配車センターを設置している。利用目的としては、通院が56%、施設・作業所が21%である。利用時間帯は、9時から12時までが最も多く、夜は7時以降の利用もある。朝早く、夜遅くはだいたいタクシー会社が担っている。どういう効果があったかというと、台数に限りがあるため利用を断っていた外出が、共同配車センターがあることで、利用者に複層的な対応ができる。リフト付、セダンなど、いろんな車両を配車できる。
 他に、近畿圏内では、京丹後市で活発な動きが出ている。大阪府でも来年度から運営協議会が実施され、幹事は持ち回りで行う。届出事業者としては、介護保険関係が100事業者、支援費は10事業者ほどある。
 兵庫県を除いて、各自治体の担当者を集めて、ガイドラインの説明会を行っている。兵庫県は自治体の意識はかなり薄いというのは事実である。大阪府が先行してやったあと、「右にならえ」で兵庫県が実施するという動きが、私の願いである。
●運営協議会に関して
 運営協議会の構成メンバーは、各ブロックで、タクシー協会から推薦を出してもらう。ガイドラインには、運営協議会の設置要領のモデルケースを示している。80条許可を受けるには、事前調整から許可に至るまでかなりの日数がかかる。自治体による温度差もあるが、できるだけスムーズにいくように、私どもも調整したい。運営協議会は単独の市町村で設置することも可能である。経済圏ということで、複数の市町村で行うことも可能である。県1本で立ち上げているところは熊本県である。岡山県も県1本で立ち上げて、その後9つのグループに分けて実施している。
 NPO団体が実施しているボランティア移送は、単なる移送を行っているというのではなく、移動困難者の移動を支援しているという社会的なアピールが必要である。できるだけ、それぞれの団体でネットワーク化を図ってもらいたい。1団体が言ってもなかなか市町村は動けない。複数の団体でネットワークを組んで、働きかけてほしい。
●80条許可の意義
 NPO法人側から、今まで自由に行ってきたのに、なぜ許可を受けなければならないのかという声もある。しかし、かけがいのない命を預かって移送をするのであれば、法的に、社会的に認められて、利用者が信頼をおいて継続的に利用できる環境が必要だと思う。移送サービスは、タクシーのように不特定多数ではなく、行きなれた道を行くのでタクシーなみの管理は不必要ではないかという声もあるが、運行管理者を置き、利用者に信頼され、社会的に認知される移送サービスが必要ではないかと思う。
●タクシーの規制緩和
 昨年3月、ガイドラインと合わせて、タクシー事業者に対しても規制緩和をした。特定事業を介護分野に拡大をしている。青ナンバーは2種免許が必要だが、車両や運行管理も緩和している。15年以降の許可件数をみると、近畿では205件、16年度に525件、特定事業は16年度に88件の許可がある。タクシー事業と同等の増加である。ほとんどが訪問介護事業所であり、一部社会福祉法人も許可をとっている。特定事業については運賃も自由に設定でき、より参入しやすい形をとっている。
●80条許可の重点指導期間
 80条許可は2年間の猶予期間である。猶予期間が過ぎたら、高額な利用料金をとっているボランティア移送に関しては告発していく。申告があれば警察と協議に基づいて、対応していかざるをえない。訪問介護事業者で、80条許可あるいは特定事業許可をとらない事業者は介護報酬、支援費報酬を支払わないということになっている。できるだけ早く協議会を立ち上げてほしい。
●質疑応答
【質問1】セダン特区が今年見送られたが、今後どうなるのか。また、来年3月過ぎて、80条許可をとっていなくても告発されないのであれば、今後のけじめはどうなるのか。

 セダン特区について、セダン特区の件数、検証期間が短いことから先延ばしされている。いずれにせよ、近い将来、全国展開する方向である。
 重点指導期間経過後の指導の取り扱いについてだが、今までは2年間としてきた。最終的には、厚生労働省との話し合いで決まる。当初の考えからすれば、現状はあえて刑事告発はしないが、2年を過ぎれば告発はありうるという考えであった。できるかぎり運営協議会を設置してもらうのが筋であるが、全国津々浦々すべての団体を告発できない。しかし、告発を受ければ、調査せざるをえない状況になるだろう。
【質問2】介護事業所をしている。介護報酬を受ける場合、80条許可をとらないといけない。運営協議会を開いてもらうよう自治体に働きかけをしているが、期限までに間に合わない可能性がある。地域によって、サービスに差ができる。自治体に働きかけをする場合でも、窓口がどこか分からず、遅々として進まない。
 介護報酬を受け取る場合は、80条やタクシー許可をとってもらわないと困る。中間整理案は厚生労働省と一緒に出している。厚生労働省は全国的な情勢を見て判断するだろう。
 全国の府県に対し窓口はどこにあるのか、文書を流して回答をもらっている。兵庫県は、担当の部署を一切回答してきていない。全国で残っているのは兵庫県だけである。
【質問3】移動サービスは、ニーズが多様化している。ボランティアとタクシー業界がお互いどういう棲み分けをしていくのか。行政にお願いするのではなく、市民サイドでボランティアとタクシーがお互いにメリットを出し合う行動を開始すれば、共生できるのではないか。
 枚方市の共同配車センターは、三星先生の努力もあるが、協議会の議論がもとになり立ち上がった。利用者にきめ細やかなサービスができる。ボランティアとタクシーが、お互い対立した関係にあるとは思っていない。14年度には、札幌で共同配車センターの実証実験をしている。東京の板橋では、タクシーとNPOが協議会の開催前に、事前に打合せして協議してきたという事例もある。そういうときには、ぜひ事業者と共同できるところは共同でやってほしい。
【質問4】神戸陸運や県の指導をもとに43条許可をとり、今度4条に切り替える。せっかくとった免許は変わることがあるのか。
 平成14年度から、認可制から許可制に変わっている。部分的な規制緩和は、これからも引き続き行われる。おおもとの道路運送法が大きく変わるということは、ここ数年は変わらないものと思われる。


4.神戸市からの報告:神戸市保健福祉局障害福祉部 横田課長補佐
 現在、運営協議会に向けて準備をしている。市全体の施策との整合性があり、協議会の実施まで時間がかかってしまうのではないか。設置単位は、神戸市全域で考える予定である。設立に向けて関係各課との調整を行っている。
●質疑応答
【質問1】障害者施策との整合性とはどのようなことか?

 市バス・チケットやリフト付タクシーといった施策があることがネックになっているわけではなくて、一連の政策としてどのように整合性をとるのかということが課題である。


5.特別報告 タクシー事業者としての福祉送迎の現状と課題:ユニバーサルタクシー株式会社 常務取締役 梁瀬康昭氏
 タクシー会社は利益が出る範囲でしか、料金を設定していない。経済的な観点からいうと、タクシー利用者と移送サービス利用者は、それほど混ざらないのではないか。
 当社では、“ほほえみ号”を年間9500回運行している。稼働率は40%ぐらいである。午前8時から午後5時頃までの運行である。1回あたり平均3000円の運賃をもらっている。利益はとれていない。ユニバーサルタクシーとしても生き残れないため、生き残りをかけた経営を考えている。訪問介護事業も併設して行っている。支援費事業は、利用者が少ない。
 株式会社としては、利益の出ない仕事はできない。長く続けてやっていくために、行政に助けを求めている。私どもだけではなく、みなさんと協働して、行政と協働でやっていきたい。
 神戸のタクシーは一般的にサービスが悪く、運転手の教育がなされていない。福祉輸送に関わり、ベッド・ツー・ベッドの介護を行うことで、サービスレベルをあげていけたらよい。
 姫野さんが行っている移動サービスネットワークこうべに、私どもも入らせてもらってもよいと考えている。深夜、朝の運行を、私たちが担えると思う。
 運営協議会の立ち上げに関しては、福祉タクシーに取り込んでいない会社の方が、移送サービスに難癖をつけるだろう。


6.移動困難者への移動ネットワークとは:NPO法人移動サービスネットワークこうべ 理事長 姫野操子
 移動ネットワークこうべは、中間支援団体である。神戸市では東側はNPOが強く、西側は事業所が強い。神戸は震災復興関連から、緩やかなネットワークが続いてきた。草の根的に活動してきたNPOでは、解決できない事象が増加してきた。法的にグレーな活動でもあり、心細い気持ちで活動してきた。個別団体から協議によるネットワークに発展するために、移動サービスネットワークこうべが誕生した。
 移動サービスネットワークは、運行管理、コーディネートを主にしている。ネットワークには、県外からの問い合わせが多い。コーディネーターとして利用者の移動を、公正な立場でサポートできるとよい。
 タクシー業界と話して、どういう棲み分けができるのか話をしたい。タクシーは料金体系をなかなか崩せない。生活保護ギリギリの方は、NPOでないとサポートしていけないのではないか。制度利用と、制度の枠外の利用との棲み分けができるだろう。
 今後は、課題の一つひとつをクリアしていきたいと思う。


7.誰もが安心して移動できる“まちづくり”の現状と課題:近畿大学理工学部社会環境工学科 三星昭宏氏
 枚方市では、福祉有償運送とタクシーの共同配車センター事業を行っている。共同配車センターは、小さいうちは勘でできるが、大きくなると最適化できるようなシステムが必要である。
 関西の動きは、実態は遅れていない。姫野さんが行っているコーディネート事業の取り組みは、最先端である。東京では、福祉移送サービスがかなり活発だった。日本では、移動・送迎サービスを社会システムとして認知することが15年遅れている。
 イギリスでは、1990年に交通法(Transport act)の規制を緩和した。1995年頃に中間見直しが行われた。規制緩和は、功罪半々である。功の部分は、地域移送サービスがロンドン全体で実施されたことである。罪の部分は、交通事業では採算がとれないところがほとんどであり、撤退が相次いでおり、公共交通サービスは危機的状況である。
 日本では、憲法で「すべての人々は健康で文化的な生活」を送ることが保障されている。その中では、移動する権利が含まれていると考えられるが、移動の権利は明言されていない。維持可能(サスティナブル)で、かつ全ての人に利用可能な移動手段が必要である。
 日本はイギリスと同じような動きをたどると思われる。移動・送迎サービスは、社会システムとして認知されていない。道路運送法80条ガイドラインが出て2年経過しているのに、まだ動きが出ていない。
 ガイドラインは福祉移送サービスを新しく作ろうというものではなくて、規制を緩和したものである。道路運送法は、旧運輸省の管轄で需給調整をするための法律で、決して福祉移送サービスを盛んにするという法律ではない。規制は撤廃せずに、許可制にした。許可制は路線免許とは根本的に違っており、敷居が随分低い。将来的には届出制にするとよいと思っている。
 福祉有償運送の運転協力者の講習は、運転技量だけではなく介護も含んでほしい。福祉移送サービスをプロとして行う人も、増やしていかないといけない。
 福祉移送サービスを交通バリアフリー法の中に取り込むことを提言したが、国民的な認識が薄いことから取り込めなかった。付帯決議でSTSが取り込まれた。法に盛り込むことができれば、交通バリアフリー法の中、あるいは移動円滑化基本構想の中でSTSをやらざるをえない。
 福祉有償運送の許可そのものは、近畿運輸局が持つ。運営協議会は、これから地域の足をどうやって確保するかという戦術をたてる場である。運営協議会は地域のモビリティをいかに確保していくかということを議論しないと、何を議論するのかわからなくなる。書類が多くてうんざりするだろう。枚方市では、運営協議会の本会議よりも基本問題小委員会に時間を費やし、ニーズの把握等、ディスカッションした。運営協議会は全て公開としたが、最終審議の場は非公開とした。
 特区を始める前は、枚方市に福祉移送サービスはほとんどなかった。運営協議会が立ち上がったことにより、11団体が新たに移送サービスを開始した。利用者数も伸びており、活性化している。今年度はセダン特区を開始した。セダン特区は、運営協議会ほど型がまだできていない。できるだけ早い段階でやりたかったが延びた。共同配車センターは、昨年11月から開始した。
 厚生省と大阪府からの委託研究として行ったものを紹介する。大阪府の障害者で、実際タクシーを使っている人は4.9%だが、本当はタクシーに乗りたい人は24%である。東大阪市では、自家用車を使っている人は3分の1いるが、願望として自家用車を乗りたいという人は24%に下がる。家族に気兼ねしている様子が見て取れる。移送サービスは、こうした願望の差を埋めていくことができる。
 共同配車センターの意義および今後の課題を述べる。@新規ニーズの掘り起こしがあった。ボランティアや利用者が増えた。A利用できる時間帯が長くなった。B大阪・京都・兵庫や他市に対する需要が多いことが明らかになった。こうしたニーズは、運営協議会ではグレーにしておくべきである。C情報周知方法が課題としてある。E配車システム・ルールを作らなければならない。Fシステム規模は、配車センターを大きくしていくのではなく、同じ規模のセンターを複数つくるべきである。G結果的にタクシーへの需要が大いに増えた。