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―《コミュニティに根付いたインクルーシブな 地区防災を考えるセミナー》 ![]() 報告:移動ネットおかやま 中村守勝 2017年3月26日に「被災地における障がい者、移動制約者への移動送迎支援活動基金(ももくり基金)」と「日本福祉のまちづくり学会関西支部」の共催による“熊本地震の経験に学ぶ”セミナーが、大阪大学中之島センターにて開催された。
この日は、左肩負傷の稀勢の里が優勝した大相撲大阪場所。2試合が引き分けで再試合となった高校野球も観ずに、50人余りが大阪大学中之島センターでのセミナーに参加。うち約10人が、車いす、視覚障がい、その他の障がいのある方々という、大阪らしいセミナーとなった。講演部分を要約してお伝えしたい。 生々しい経験と今後に向けた貴重な教訓
教授らが理事長、学長に声をかけ大学校舎を開放。被災直後に同大学には約750人が避難。そのうち障がい者は60人だった。社会福祉学部の教授、避難学生も含め学生300人で30人ずつのローテーションを組む。また専門職(卒業生)に連絡し、60人の支援体制を固めたという。(以下、花田先生のご講演より。) ―発災後の避難所は地域の縮図― 閉所する最後まで避難所に残ったのは障がい者、高齢者、生活困窮者たちで、地域の「災害弱者」の受け入れを実践したことは、メディアや関係者からインクルーシブな避難所運営として高く評価された。障がい者・高齢者の脱施設化と地域移行の流れを踏まえた災害時緊急避難のあり方を考えていくべきということ。障がい者であれ「要配慮者」「要援護者」であれ、被災時まで施設入所者ではなく地域で暮らしていた人たちだ。避難所で排除、隔離をしないというは、当たり前の原則。また指定福祉避難所も被災しており、職員不足もあって、ほとんどの指定福祉避難所では機能がマヒしていた。 ―障がい者受入れスペースの確保へ― 具体的には、障がい者に対する合理的配慮として、スペースの確保と支援体制を構築した。医師の巡回と日常的対応、個別ヒアリングが功を奏した。グループホームで被災し、丸ごと避難した人たちもいた。発達障がい、自閉的傾向、うつ等で病院に通っていた人たちにも、傾聴・見守り・配慮で対応した。人工呼吸器の電源確保、障がいのある人が支援の側に立つことも大切。教室をひとつ開放すれば、障がい者のスペースは可能なはず。 ―今後に生かすべき教訓・震災前のあり方が問われる!! ― 「必要とする人がいる限り避難所は閉じず」を原則に、避難者の帰宅困難状況の把握と、避難所から自宅、新たな住居など次のステップへの支援をした。また個別対応段階で、生活保護課や地域包括支援センターとの連携も持った。 しかし日常の地域の中で、障がい者、高齢者の姿が見えなければ合理的配慮も共生社会も根付かないと花田氏は話す。益城町に移転した「被災地障害者センターくまもと」では、現在、福祉有償運送の準備中ということだ。被災地の地域創生のなかで、また一つ移動制約者の“移動の確保”の灯がともった気がした…。 |
2017年3月26日 “熊本地震の経験に学ぶ”セミナー 石塚裕子(大阪大学) |
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