『徹底討論「移動の自由は拡大するか」報告』
(報告:全国移動ネット事務局・伊藤みどり)

日時:2007年1月14日(日)10:00〜17:00
場所:友愛会館大会議室
主催:NPO法人全国移動サービスネットワーク・NPO法人市民福祉団体全国協議会
共催:日本移送・移動サービス地域ネット連合会・NPO法人かながわ福祉移動サービスネットワーク
後援:東京ボランティア・市民活動センター
参加者:110名

=主な討議内容:以下の通り=

●第1セッション「運転者の研修制度」
パネラー:山本 憲司氏(NPO法人全国移動サービスネットワーク)
     柿久保浩次氏(関西STS連絡会)
     菅原ふじ子氏(移動サービス・ネットワークみやぎ)
     高松志津夫氏(茨城福祉移動サービス団体連絡会)
コーディネーター:中根 裕氏(移動支援ネットワークちば)

(1)運転者研修概要を正しく理解する(現状の最新情報)
 国土交通省「人材教育に関する委員会」で、一種免許所持者が79条登録団体の運転者要件となる認定講習の内容等が検討されている。その内容が山本氏より以下のように説明された。
 初任者の認定講習は1)〜3)の3種類運転者として登録した人が受けるべき講習2種類が検討されている。
1)市町村運営有償運送等運転者講習(計130分)
2)福祉有償運送運転者講習(計400分)
3)セダン等運転者講習(計470分)……2種免許所持者も受講が必要
4)ブラッシュアップ講習
認定講習に、更新制度を目的として発案された。検討の結果、定期的な受講義務づけは、見直しスキルアップを目的とすることで、現在、内容を含め検討している。 
5)代替講習
80条許可団体の運転者が、2)の認定講習の代わりに受講する講習として、内容や時間を検討中。既に受講した講習によっては、認定講習を受講し直す必要があるとされ、1〜2月にヒアリング等で要否の基準を検討し決定する。
・その他、運行管理責任者資格と講習の位置づけについても検討内容に入っているが、まだ議論されていない。認定講習にはならない見通し。
経過措置期間中の取り扱いとしては、80条許可団体の運転者は、今年の9月末か登録有効期限のいずれか遅い時期までに、認定講習、若しくは代替講習を受ける79条登録の団体の運転者、今年の9月末までに認定講習を受けることとなる。ただし、法改正後(10/1)に認定講習に準じた講習を受けた運転者も、代替講習を受講しなくてはならない可能性がある。

 これに対するパネリストの活動紹介および問題提起、会場からの質問、意見は以下の通り。
宮城、茨城、関西では、それぞれにネットワークを組み、地域の担い手を増やしたり、サービスの質を高めるために研修を実施してきた。いずれも認定講習として申請中(または認定受けた)。
国土交通省から示された標準的なカリキュラムに近い形で研修を受講し、認定の初任者用の講習を受け直さなくてはいけないとしたら、大勢(茨城は県下800人)が受講し直しとなる。強い危機感を持っている。
◎誰が代替講習で良く、誰が代替講習では駄目で認定講習を受けなおさなければならないか。代替講習は、新しい情報として79条登録制を学ぶ程度の講習なら理解できるが、運営協議会で協議され、80条許可を取得したのに、無効とされるのでは、従前の制度をさかのぼって覆すことになり不条理
代替講習認定講習(初任者)の代わりであって、セダンを運転する場合は、代替講習とは別にセダンの認定講習を受けなければならない。既にセダン利用の場合の介助研修も行い、日頃の活動で実践している運転者が、セダン講習を今から追加で受ける必要性が理解できない
◎同一県内に3団体くらいずつ認定団体がなければ、認定講習を受講したくてもできない。インストラクターの選定、育成も急務。
ボランティア活動を後退させるような講習のあり方は、見直してほしい。引き続き、委員会に出席している山本さんから、現場の声を国に届けてほしい。

(2)福祉輸送に特化した研修とは何か。認定研修の必要性や2種免との違い。ニーズに対応する(供給を増やす)ことと、安心・安全を追及していくことをどう両立するか。
◎研修を実施する必要はある。合同の研修で、視野を広げたり、クセや思い込みに気づいたり、利用者に対する接し方が変わったという成果も見られる。しかし、自主的な研修を実施してこそ意味があり、義務づけられて行うものではない。
◎いい活動をしているから何の規制もいらないとか、経験があるから研修は不要ということはない。しかし、最終的な責任は、移動サービスを実施している団体が負う。実施団体と運転者が責任の重さを自覚することが重要であり、国から義務づけられて行うものではない。
適性検査が必要としている運営協議会もある。受講料が高い、講習を受講しないと運転ができないといったハードルがあると、運転者が増えない。移動サービスは、団塊の世代が最も参加しやすいボランティア活動の一つであり、裾野を広げていくことがニーズに応えるためにも重要
国土交通省は何を判断基準にして、認定講習を検討しているのかが疑問。安全のみを追求すれば、際限なく義務づけが増える。国土交通省の方向だけでなく、利用者は何をしてほしいかを考えたり、自治体の中でも福祉関係や市民活動の関係部局と協議するなどしながら、どのような講習が適当かを考えていく必要がある。


●第2セッション「登録の要不要」
パネラー:姫野操子氏(NPO法人移動サービスネットワークこうべ)
     竹田 保氏(北海道移送・移動サービス連絡会)
     金井信高氏(神奈川県救急医療中央情報センター)
     平野征幸氏(さが福祉移動サービスネットワーク)
コーディネーター:田中尚輝氏(NPO法人市民福祉団体全国協議会)


 金井氏から、登録不要の態様についての概要の説明がなされ、各パネリストの捉え方と対応が示された後、会場を交えての全体討論が行われた。

NPOやボランティアの活動を、業としての輸送行為を対象とした法律で規定することには限界がある。登録不要の態様についての「事務連絡」も、任意の謝礼の範囲を認めることに特化したものとなっている。利用料が、ガソリン代や駐車場代など実費(人件費を除く)を下回るなら運送の対価とは見なさず、登録不要という考え方だけで書かれている。さわやか福祉財団から出されたふれあい切符施設送迎月会費制などの類型があるが、残念ながら国にはその一部しか認められていない。
◎合法化とはいえ、市民による助け合い活動そのものを登録不要として認めるにはいたらなかった。非営利法人が行う活動を裏付ける法制度を確立すること、あるいは特区制度を利用して認められる範囲を広げていく方法が考えられる。しかし、道路運送法上で法制度を確立していこうとすれば、有償無償の線引きはどこなのかという議論が永遠に続く。
◎ガイドラインが出た時点で、活動が縛られることは想定された。何らかの形で法整備がなされる必要があると考えてここまで来たのだから、要件が厳しいなら緩和するような方向で検討することが必要ではないか。
◎法制度に基づいて活動していこうとしたら、ガイドラインに乗れない団体が出てきた。法人化できない、利用者が制限されるなどの問題もある。今般、79条登録制となり、さらに状況の悪化が懸念される。タクシーの1/2の対価で行うには、整備する事柄が多過ぎる。ボランティアの交通費も出ない。利用者がだんだん制限されるようになった結果、利用を手控える利用者もいる。認められない利用者には、無償でサービスを行うなどのやりくりをしている。
◎登録しない方針をとり、ガソリン代のみで活動するのも、一つの方法。社会福祉協議会では、登録をとる団体や無償でのサービス提供に切り替えたり、コーディネートに専念する方向などに分かれつつある。社協には、地域全体を見た判断をしてほしい。
介助料(車を使っても、使わなくても同じ)+ガソリン代で活動している団体が、さわやか福祉財団などの解釈に基づいて登録しないで活動していこうとしたら、外形的には運送の対価と同様と見なされる。国(運輸支局)は登録の要・不要を尋ねられれば、登録が必要と回答する
◎国が示した登録の要・不要を絶対と捉えてサービスを変えるのではなく、登録要件のどこが具体的に厳しいのかを考えて、登録できるならすればいいし、必要なサービスは続けるべきである。
◎登録しなくても参議院の付帯決議をチャンス(風穴)と考えて、助け合い活動の理念を国が認めるような活動を、今後も展開していきたい。
◎両方の意見があり、両方の運動が必要だが、登録するかしないかは団体の判断と覚悟による。


●第3セッション「一部改正道路運送法の評価と課題」
パネラー:笹沼和利氏(埼玉県移送サービスネットワーク)
     田中尚輝氏(NPO法人市民福祉団体全国協議会)
     渡部 勝氏(NPO法人移動ネットあいち)
     河崎民子氏(NPO法人かながわ福祉移動サービスネットワーク)
コーディネーター:武本英之氏(東京交通新聞)

 コーディネーター・武本氏の論点整理に沿って、パネリストがそれぞれの意見を表明したあと、簡単な質疑応答が行われた。

【論点1:改正道路運送法をどう受けとめ、どう評価しているか】
法制化によって認知が高まったこと、80条許可によって違法行為という危うさがなくなったことは、一応の評価ができる。しかし79条登録制によっては、移動の自由は拡大しないガイドラインで十分で、79条登録は行き過ぎ

【論点2:問題点は何か】
◎支局は口を出さず、自治体に権限が集まったと言われているが、実際は権限の強弱が実感できない。自治体はどう取り組んでいけばいいのか、分かりにくい。
◎コストが増大し、利用者負担増につながっている。講習の義務付け等で運転者が減少しつつある。利用者である移動制約者は増加するのに、担い手は増えない。一人当たりの外出の機会が減ってしまう
◎外出が拡大しなければ、法制化の意味はない。NPOだけでなくタクシーも含めて問題の解決策を探るなどして、外出機会が拡大できたかどうか、数字を出して検証していく必要がある。
◎コストを誰が負担するかという問題が、法制化の発端だった。有償無償の別が、ここまで問題を大きくした。しかし負担のあり方については、本来は厚生労働省が主体的に取り組むべき課題だ。移動サービスを行うNPOにとっては、負担のあり方よりも意欲を持って取り組めることが重要であり、意欲がそがれるような法制化に対しては憤りが強い。
◎本来は、地域レベルで自治体に働きかけて認知を高めるべきだった。国に働きかけたことが、道路運送法で細かく規定されることになったとの見方も否めない。かといって地域に許認可を任せれば、かえって規制が厳しくなるという地方分権の矛盾も出てくる。
新しい公共や共助という考え方からすれば、地域のNPOが良い活動をしていれば、それを市民や自治体が支援していこうという流れができる。それによって利用者の外出機会が増え、担い手が増え、地域が元気になるという構図が望ましい。現在は地域の中で、そういった意識の醸成がなかなか難しい。

【論点3:問題点の解決策はいかに】【論点4:今後のあるべき姿を描く】
◎地域のNPOが、地域を変えるというアプローチが必要。最低限の移動サービスの位置づけは、国の制度で簡単に行えればそれで良く、それは済んだ。今以上に道路運送法を改正しても、状況は変わらない(むしろ無用に厳しくなる)と予想される。NPOが、たとえば条例移動サービス助け合い活動を位置づけるといった努力をしていくべきではないか。様々な地域事情に応じたシステムが必要である以上、これからは地域格差があってもいい時代だ。
移動の問題を社会的に解決していくには、時間がかかる。NPO同士で連帯し、収益のあるNPOが登録のできない小さなNPOを支えたり、地域での議論の醸成を牽引するといった活動を通して、市民活動が自ら力をつけていくことも必要ではないか。そして基礎自治体である市区町村が、当事者としてしっかり取り組むよう働きかけることだ。
市民が考える施策、利用者の声を反映するシステムを、あらゆる方向から提案していくこと。オンブズマン制度や、ADA法のような利用当事者を中心に据えた法律の制定、市民個人税の特定利用(目的税化)といった動きが、日本でも出てきている。
道路運送法で、助け合い活動を保障するのは無理。国に対して細かくお伺いを立てないこと。お伺いを立てれば、規定せざるを得ない。根本的には、ボランティア認知法(基本法)の制定をめざすべきだ。地域で、市民が「お互いさま」の精神で助け合う活動をきちんと位置づけない限り、延々と業界団体との比較で妥協点を探る作業が繰り返される。
◎法制化された部分を緩和することが、まず必要。子育て支援や介護予防のための高齢者サービスなど、地域では多様なサービスが行われている。利用者の拡大や、講習のあり方等の、課題解決を諮ることが先決だ。
◎自助・公助では、限界がある。共助の考え方で、課題解決を図っていくことが望ましい。
以上

【報道資料】
『福祉有償法制化に両論 一歩前進/撤退の動きも』(東京交通新聞2007.1.22)
 NPO法人全国移動サービスネットワーク(杉本依子理事長)と同・市民福祉団体全国協議会(米山孝平代表理事)は東京都港区で「移動の自由は拡大するか? 一部改正道路運送法施行」と題した徹底討論会を開催した。移動サービス関係者や自治体、バス・タクシー事業者約110人が参加した。
 討論は、@運転者研修制度、A登録の要不要、B改正法の評価と課題――の3分科会。改正法の評価では「法制化は一歩前進。積極活用すべき」との見方がある一方、「規制でハードルが高まり、移動サービスから撤退する動きが出ている。外出頻度を高めているか危機感がある」「業を規制する道路運送法でボランティア活動を管轄することに無理がある。『ボランティア認知法』を導入すべき」などの意見が出された。