生活保護の手引き

横石金男(西成区福祉事務所ケースワーカー)


l、生活保護の仕組み

(l)成り立ち
○昭和2l年9月に生活保護法ができました。戦後の混乱がおさまりその矛盾が目立ってきたので改正することになり、昭和25年5月に今の生活保護法ができました。これを、「新生活保護法」と呼びます。
◎この違いは、社会福祉の法と社会保障の法との違いといわれています。
○「新生活保護法」は50年の間ほとんど改正される事なく実施されてきました。その間は、厚生省の通知などで社会の変化に応えてきました。
◎平成13年の今も同じです。50年の間に、社会も国民の考え方も変わりましたが、長いこと実施要領によって仕事をして来たため、法律が変わらない(変わることはない)のに実施要領に慣れてしまったために、法律の精神や国民の期待と、日々の運用との間が少しずれたものになった感じがします。

(2)原理;この法律を支えている変えることのできない基本的な事
◎最低生活の保障と自立の助長
◎無差別平等;生活に困っている人には、国の決めた基準で、差別なく最低生活を保障することです
◎健康で文化的な生活;具体的な基準はありませんが、多くの人が営んでいる生活。
◎補足性;大臣が決めた基準内で、足りない分だけを扶助することです。資産の調査が必ずあります。しかし、これは、全額税金で賄われている公的扶助と総称されている扶助全てに適用されている考え方です。
これは、日本国民であれば、国の決めた基準に照らして困っていて、努力しても改善されなければ、国は誰でもその人(世帯)に人たるにふさわしい生活を保障するというものです。被保護者、個々人が人たるにふさわしい生活を営むことができる(社会に適応する)ような制度であることを明確にするために社会福祉の制度を加えたものです。
同じことですが、このことを次のように言い換える事ができます。基本的人権の尊重、人たるに値する生活の保障、無差別平等の取扱、国家責任の確立、補足性による実施。これに国民の権利としての不服審査請求を加えれば、人権の尊重、国民の権利、国家責任が分かりやすいと思います。また、この考えは、生活保護から漏れる人(世帯)がなくなるために必要と考えられたものです。

(3)原則;具体的に生活保護制度を運営していくための原則です。
◎申請保護の原則;生活保護は本人か親族が申請することになっております。緊急のときや本人も家族も申請することができない時には例外もありますが、友達では申請できませんが、その時には、連絡はできます。必ず本人の意思を確認することになります
○基準及び程度の原則:大臣が決めた基準より少ない収入の人(世帯)に、国がお金等を足して、国が決めた基準の生活を保障することです。
○必要即応の原則;基準や程度の原則では不足する一時扶助等もここに入ります
◎世帯単位の原則;世帯単位で考えますから、困っている人だけの保護ではなく、世帯全体で困っているかどうかを判断します。

(4)扶助の種類;生活保護は生活の部分部分に分けて、困っているところを扶助するものです。ゆりかごから墓場まで考えられています。
l生活扶助、
2教育扶助、
3住宅扶助(家賃だけで共益費は含まれません)、
4介護扶助(本人負担の一割を扶助、保険のない2号該当者にはl 0割)、
5医療扶助(医療費の他に治療に必要な装具など治療材料や通院に必要な交通費の内、生活扶助費で賄えない分が扶助の対象となります)、
6出産扶助(児童福祉に助産券があり助産施設利用が原則です)、
7生業扶助、
8葬祭扶助、の8分野に別れ、生活を支えています。

(5)実施責任;実施責任は困っている人のたらい回しなどを防止するためなど大事な
役目をもっているものです。

2、生活保護者と制度
 無差別平等というものの、生活保護を受けるためには条件があり、法の精神は精神として尊重されますが、時代的妥協をせざるを得ない運用ではできるだけ努力しても最低生活を維持できないことを条件にしています。この条件が必要以上に生活保護の門を狭くしたり、生活保護を受けている人たちの立場を複雑にしており、現代にあわなくなってきていることが多く、問題になっています。
◎生活保護費は本人以外の人には渡せないものです。法によって守られています。借金の返済等、目的以外の消費より、自分の生活に当ててください。強制的に取り上げられた場合は、法によって取り返すことができます。
◎生活保護は困窮する国民の最低文化的生活を保障するために、社会保障として保護費の給付の他に、生活保護者の自立支援を行うために福祉事務所にケースワーカーを、地域にには民生委員を配置しています。生活保護者が自立する努力を促したり協力をするためです。社会資源が整備されるまではケースワーカーや民生委員は保護者の生活のあらゆる面の協力者でした。食事を作る人もいましたし、パンなどを
買って運ぶこともありました。しかし今は、へルパー制度等地域の社会資源が整備されその必要は少なくなりました。そのため、制度的に、生活を直接支援する事は少なくなり、そのぶん、関係は薄くなったと思いますが、専門的な関係になり、社会資源の紹介や活用を求めますし、生活保護者はそれを利用して自分の生活を充実させる責任をもつことになります。
◎生活保護は50年以上の歴史がありますが、法律は素晴らしいもので何年もこのままで耐えることができます。しかし、社会や国民の意識が、それを期待通り利用できるだけ成熟していないために、国のコントロールをを受け社会の変化に合うよう
に運営されて来ました。ここ数年、国と国民の考えの違いがひどくなり、トラブルが増えております。それだけ、生活づりには利用者の責任が重なります。保護費は受給者の責任で消費することになっています。保護費に少し余裕を持たせ、自分の生活は自分でまかなうことを求めています。だから、一時扶助が少なくなって来ました。保護開始時に多くの生活必需品の保有を認めていますが、修理や購入の扶助はほとんどありません。毎月の保護費から少しづつ蓄え、万一に備えることを求めています。しかし、保護開始時に家財道具などがほとんど無い人達は大変です。支給する金額は決まっていますし、生活の基盤となるものを少しづつ買いそろえなければなりません。また、保護開始時に手持ち金として保護費の半月分は認定しません。このように、同じ生活保護で生活する人達であっても、条件によって生活づくりの出発から落ち着くまでの間は個人差が大きく出てくることになります。生活づくりの難しさが出て来ました。この事は悪いことではありませんが、保護費の使い過ぎで困っても生活保護の制度では協力できないことがあり、個々で工夫をしなければならず、こころしてかからなければならないことです。
◎生活保護の目的の一つに、被保護者には生活保護を活用して自立して行くことが求められています。また、働くことのできる人は働く義務があります。当然のことではありますが、個人に強く求められるものがあるために、それが、生活保護運用に混乱をもたらすこともあります。時にはそれが、生活保護を受けにくくすることにもなっております。保護費については、ずいぶん改善されましたが、運用は複雑になって来ていると吉えます。それは、生活保護で生活をする人や生活保護の相談をしようと思っている人などに精神的な負担となることが増えたと言うことです。
◎社会保障制度が整備され普及しますと「社会と個人はお互いが責任を分担して」生活づくりに取り組まなければならなくなります。そのためには、自分にあった生活スタイルをつくることと、それを支援する制度の整備が必要です。

3、ワンポイント
◎生活保護で生活する;生活保護は、国が国民に対して責任をもって生活を保障するもので、個人には自分の生活に責任をもつこと(身勝手ではありません)以外の制約はありません。保護費は責任をもって自分の生活づくりに使ってください。
◎月の途中で生活費がなくなった;本人の過失が大きければ福祉事務所は対応しません。しかし、ケースーワーカーに相談したら過失によっては一時つなぎをしてもらえる事があります。しかし、そのようなことにならないように計画して管理、消費してください。
◎急病になった;保護決定通知書で診てもらえます。大事に保管してください。
◎仕事に誘われた;体にさしさわりがなければ、仕事をしてください。しかし、もらったお金は正しく届けてください。8000円までは保護費は変わりません。働けば保護費以上手元にのこります。生活づくりにもなります。
◎公共機関の利用;保護決定通知書の裏に書かれています。活用してください。
◎昔の借金;保護費からの返済は認めません。ケースーワーカーに相談してください。


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