サラ金対策のポイント

江村智禎(弁護士)


1.無担保・高金利のサラ金

 サラ金とはサラリーマン、主婦など一般の消費者を対象とする金融業者です。事業者は基本的に除かれます。「貸金業の規制等に関する法律」(貸金業法)によって規制されています。特徴は3点です。1.担保がいらない、2.簡易、迅速な審査、3.金利が高いです。要するに利益至上主義です。具体的には過剰な貸付です。「限度額」いっぱいまで借りることをすすめます。

 サラ金の金利はだいたい年利25%〜40%ぐらいです。上限金利は「出資法」という法律で、一般の金融業者は40.004%までと定められています。これをこえると刑事罰を加えられることがあります。
金利に関する法律はもう一つあります。「利息制限法」という法律です。これは文字通り、上限の利息を定めた法律です。利息は元本の金額によって変わってきます。
 元本が10万円未満の場合は上限金利20%。10万円から100万円未満は18%。100万円以上は15%です。
そうすると、サラ金は利息制限法違反でお金を貸していることになります。しかし、利息制限法を越えても出資法の基準の範囲内なら、一定の場合には有効となります(いわゆる「グレーゾーン」です)。
 現在の銀行の変動金利の2.375%と比較すれば、いかに高利かがわかります

2.サラ金業者に対する規制

 サラ金業者は、貸金業法あるいは金融監督庁のガイドライン(指導指針)によって規制されています。
 一番目は、過剰貸付防止の指導指針です。
 一般的な目安としていわれているのは、無担保、無保証での貸付の場合、最高額は50万円あるいは年収額の10%が目処とされています。

二番目は、取立行為の規制です。
 これには刑事罰があります。違反した場合には、6カ月以下の懲役、100万円以下の罰金が課せられます。
 債務者、保証人等を威迫するような言動は禁止されています。また、債務者、保証人等の私生活・業務の平穏を害する言動は禁止です。午後9時から午前8時までの取立は禁止されています。
 それ以外に、他からの借り入れによる返済の要求、弁護士の介入後に本人に支払請求すること、支払義務のない者への支払請求もしてはいけません。
 本人の借金は本人だけが返す、これは基本中の基本です。例えば一家のご主人がサラ金からお金を借りたとしても奥さんや子ども、親には支払義務はありません。にもかかわらず、サラ金業者は「ご主人が借りたのだから奥さんも頑張って支払ってください」と言って支払を請求することがあります。これは禁止されています。

 三番目は、取引関係の正常化です。契約内容を十分に説明しなさいとか、白紙委任状をもらってはいけませんということです。

3.時効の問題

 次に、支払請求がきたときにどういう法律のシステムがあるかです。まず最初に時効の問題があります。「生活保護を受けて住民登録をしたらサラ金業者から督促状が来た、10年も前の借金だ、どうしたらいいだろうか」という相談があります。
 ここでいう時効とは正確には消滅時効といいます。「一定期間、権利不行使(支払請求しない)の状態が継続すると、権利の消滅を認める制度」です。
これは「援用」(時効の利益を受けることを意思表示すること)が必要といわれています。逆に言うと、「俺は時効の利益を受けない」「時効があっても借りたものは返す」という律儀な道徳観をもった人もいるわけです。
 時効期間は、「権利を行使しうるとき」から進行(カウント)します。起算点といいますが、通常は弁済日(支払日)からスタートします。
 どれぐらい時効期間がたたないと、時効が成立しないのかといいますと、


法人(会社組織)の場合、起算点から5年間
個人経営の場合は10年間です。


 時効は中断します。時効の中断とはそれまでの時効期間の経過を無意味にするものです(カウントがゼロになります)。時効が中断する場合としては、@裁判所への訴訟提起などの請求、A差し押さえ、B支払猶予のお願いや一部の弁済などによる債務の承認の3つがあります。
 時効期間が満了した場合には、「時効期間が満了しているので時効を援用します」と言えばいいわけです。(サラ金業者への通知文の例文は最後に載せています)。
 しかし、時効期間が満了していることを知らなかったり、そもそも時効という制度を知らない人もいます。知らなかったとしても、一部支払ってしまえば、その後で時効を援用することができなくなります。これに注意が必要です。
 サラ金業者は明らかに時効になっている債権であっても督促状を送ることがあります。業者の方からすればダメでモトモトです。業者の督促状を見て、ちょっとでも払ってしまう、「払うから待ってちょうだい」と言ってしまえば、援用する権利を失ってしまいます。

4.裁判所の手続き

 次に、サラ金業者が裁判所に訴えた場合の手続きです。 支払督促という決定書が裁判所から届きます。支払督促は、債権者の申立のみによって発せられます。事実かどうかを裁判所はチェックしません。証拠も要りません。
 支払督促が来たら不服を申し立てることができます。不服申立しなければ仮執行される状態になります。不服申立すれば、とりあえずの間、仮執行を阻止することができます。そして正式裁判に移行します。正式裁判では借りている以上、負けます。不服申立をすれば時間稼ぎにはなります。また和解の話し合いもできます。

 続いて、強制執行に移ります。裁判所で判決が出て支払督促が確定すると、債権者は裁判所の手続きで強制的に権利の実現を図ることができます。もちろん、裁判所の執行官ですから身ぐるみはがされることはありません。具体的には不動産の強制競売、動産執行、債権差押えなどです。
 とくに問題になるのは債権の差押えですが、法律で差押え禁止債権が決められています。例えば、28万円以下の給与であればその4分の3まで差しおさえてはいけません、生活保護費や年金などの公的給付請求権は差しおさえていけません。

5.自己破産

 債務超過・支払不能の状態にあるとき、本人の申立等により裁判所は破産を宣告することができます。これを自己破産といいます。一般的に、自己破産を申し立てるときの債務は少ないときで300万円弱ぐらいです。
 自己破産において財産がほとんどないときは、破産宣告と同時に破産手続は終了します。これを同時廃止といいます。管財人がつきません。

 債務を帳消しにするには、「免責」の決定を得る必要があります。免責不許可事由がない限り、免責を受けることができます。免責不許可事由にあたるのは、財産隠し、浪費・ギャンブル、嘘をついての借り入れ、裁判所に嘘の申告、過去10年以内に免責を受けたことがあるなどです。
 今の裁判所の実務ではこうした免責不許可事由が多少あっても大目に見てあげようということが多いと思います。

 破産に要する費用は、同時廃止の場合ですと裁判所におさめる費用が2〜3万円、弁護士を利用したときには弁護士費用が報酬規定で30万円です。生活保護受給者で一度に用意することができないときは、法律扶助協会で費用を立て替えてくれます。立て替えてもらったお金については無理のない範囲で分割で返済していきます。著しく困難な場合には免除もあります。

 自己破産以外に、「任意整理」という方法もあります。弁護士を代理人にして、金融業者と交渉して債務を整理する方法です(例えば、40%の金利を18%に変えて返済方法を決めるとか)。

 それから、「何もしない」という方法もあります。最終的に財産が手元にないということであれば債権者の側としては何もできません。債権者が何をしても費用の無駄遣いに終わるだけで利益があがらないわけです。ただ、何もしないというのはかなり精神的にタフでないとできません。

 以上見てきたわけですが、やはりサラ金からは借りない方がいいだろうと思います。一番の問題は過剰融資の問題です。適正な審査に基づいて適正な金額を貸しているわけではありません。テレビなどで宣伝してどんどん貸しています。その一方で、学校・教育機関では消費者教育は全然していません。消費者教育を抜きにしてサラ金が存在しているのはやはり問題ではないかと思います。


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