第2章 調査結果


第1節 対象者の属性

 調査対象者は、さつきつつじ会とつきみそうの会が関わりをもつ野宿生活経験のある生活保護受給者84人です。内訳は、男性が79人、女性が5人です。年齢別には、65歳以上が50人(59.5%)で、このうち後期高齢者と呼ばれる75歳以上の人は3人でした。最高齢は83歳でした。

 調査対象者の約1割が釜ヶ崎内に住んでいますが、大半はあいりん地区内やその周辺に住んでいます。特に多いのが花園北2丁目(17人、20.2%)で、次いで玉出西2丁目(6人)、梅南2丁目(5人)の順になっています。

 同居者がいるのは9人で、その内訳は男女5組と親子1組でした。男女5組のうち、3組が2人とも調査に回答してくれました。


第2節 健康状態

84人中、34人(40.5%)が入院経験があると答えています。このうち、15人は3ヶ月以上入院しており、また3年以上入院していた人も2人いました。入院期間が長いのは、病状がかなり悪化してから病院に行く人が多いためではないかと思われます。
 居宅保護直前に入院していた人は14人、居宅保護後に入院した人は10人でした。居宅保護開始後に入院している人は、比較的入院期間が短く、居宅保護になる前に入院した人は入院期間が長い傾向が見られます。
 自主的に病院に行って入院した人は4割もいません。「知り合いや医療連に勧められて」が6人、「救急車で運ばれて」が12人いました。救急車で運ばれて入院するという事態は、居宅保護直前や居宅保護開始後に多く発生しています。

 全体の7割以上が、現在病気を抱えて通院または入院しています。通院している人のうち、5人に1人がほぼ毎日病院に通っています。また、 5人に1人が、医者とのコミュニケーションがうまく取れていません。「うまく話せない」と回答した人は、その理由の一つに「難聴」をあげています。病気や薬の説明を十分に受けていないと感じている人も同じくらいの割合でいます。

現在通院していないと回答した24人の中にも、身体の不調や自覚症状がある人が14人います。また、病院には行っていないが身体の不調や自覚症状を感じている人は、32人(38.1%)います。総じて、全体の7割弱の人が自分の健康に不安を抱いています。現在通院しておらず、自覚症状もなく、健康不安もない人はわずか7人でした。

お酒を飲むと回答したのは38人(45.2%)でした。お酒を飲む人のうち、3人に2人は禁酒日を作っています。
タバコを吸うと回答したのは64人(76.2%)でした。

身体に障害をもっていると回答したのは36人(42.9%)です。 4人に1人が、障害者手帳・精神保健福祉手帳・療育手帳のいずれかを持っています。障害者手帳の交付は、半数以上が居宅保護の後に行われています。昨年、手帳が交付されたのは、5人です。


第3節 就労状況・就労に対する希望

回答者の約半数が仕事をしたいと思っています。このうち25人(61.0%)が清掃などの「軽作業」を希望しています。他に、鳶、鉄筋工、トラック運転手、溶接、設備屋など建設関係の職を望む人や、マッサージ、鍛冶、調理など特技を生かした職を望む人もいます。
月収2万円以下を望む人は9人(3万円以下だと11人)、月収10万円以上を望む人は12人いました。月収10万円以上を望む人を中心に14人が「毎日」就労したいと考えています。

現在、2割以上の人(21.4%)が仕事をしています。仕事の内容は、アパートなどの掃除と草刈(11人)、高齢者特別清掃事業(3人)などです。電話番、マンション管理人などをしている人もいます。
現在仕事をしている人のうち、毎日働いているのは6人、1ヶ月に2〜3回以下が7人です。 1日あたりの労働時間は、1時間以下が8人、6時間以上の労働をしているのは4人です。月収は、5,000円未満が9人、5,000〜10,000円が5人です。
仕事についたきっかけは、つきみそうの会やさつきつつじ会など「人に紹介された」が多いです。センターに登録して高齢者特別清掃事業に参加している人も3人いました。

仕事に使える資格をとるために勉強したいと回答した人は11人(13.1%)いました。
希望する内容は、運転免許(3人)、ホームヘルパー(2人)などでした。パソコン講習、通信教育、学力を補うために勉強したい、などの回答もありました。


第4節 普段の生活状況

4人に1人が生活が乱れていると感じています。
生活の乱れを感じる主な理由は、「睡眠時間の乱れ」(4人)、「お金がなくなった時」(4人)、「さびしい時」(3人)、「食欲がない時」(2人)、「酒を飲んだ時」(2人)、「ストレス」「近隣住民とのトラブル」「部屋にこもりきりになった時」などです。

また、きちんと食事をしていない人が1割います。
食事をきちんと取れない理由として、「一人だと食欲がわかない」「何もしていないので腹が減らない、面倒くさい」など「食欲がわかない」ことをあげた人が6人、「具合が悪い」と身体の不調を訴えた人が3人いました。
さらに、7人に1人が、家事で困っていることがあると答えています。
困りごとの内容は、「食事の支度」が5人、「同居人に関する悩み」が2人、「ふとんの上げ下ろし」「洗濯」「子供の世話」などです。

「部屋にこもりきりになることがある」と回答したのは、3人に1人以上(36.9%)です。
「調子が悪い」「しんどい」など健康面の理由からこもりきりになる人が13人、「時々うつ状態になる」「人の顔が見たくない時がある」「外出がおっくうになる」など精神面の理由からこもりきりになる人が6人いました。他に「お金がない時」が3人、「気候の悪い時」が2人などでした。

趣味については、8割以上の人(82.1%)が何らかの楽しみを持っています。
主な内容は、「散歩」(15人)、「釣り」(13人)、「読書」(10人)、「映画」(8人)、「囲碁」(6人)、「将棋」「音楽」(各5人)、「絵画」(4人)、「旅行」「カラオケ」「唄」「おどり」(各2人)などでした(複数回答)。「麻雀」「パチンコ」「ボート」などギャンブルを趣味と答えた人は9人いました。うち7人はギャンブル以外の趣味もあげています。

家計については、9割弱(89.3%)の人が「生活保護費で充分生活できる」と答えています。
「不十分」と回答した人の理由は、「外出をよくする」「お金をとられた」「食費にお金がかかる」「ギャンブル代が出ない」「昔の癖(散財)が抜けない」などでした。


第5節 住宅の状況

現在住んでいる建物の構造は、木造が22人(26.2%)、鉄骨ALC造が50人(59.5%)、RC造が12人(14.3%)です。
全員が民間賃貸住宅に住んでいますが、厳密には、準簡宿に住んでいる人が2人います。住宅と分類されている中には、元簡宿が若干あります。

住んでいる建物は、エレベーター設置の義務がない5階以下が約8割(79.8%)です。うち、文化住宅と思われる2階建てに住んでいる人は17人(20.2%)です。一方、エレベーター付の住宅に住む人は21人います。しかし、5階建て以上でエレベーターのない住宅に住んでいる人は20人います。7階建てでもエレベーターのついていないところがありました。
居住階をみると、1階に居住する人が29人(34.5%)と最も多いです。2階までの低層階に住む人が合わせて53人(63.1%)います。

築年数の回答があったのは45人です。うち、「30年以上」の老朽住宅に住む人が17人(20年以上では28人)います。

部屋の間取りは、3畳以上の台所を便宜的にDKと数えて間取りを分類すると、1Kが55人(65.5%)と最も多いです。
畳数の合計(押入・トイレは除く)では、「4.5〜6畳」が23人(27.4%)、「6〜8畳」が18人(21.4%)でした。「3〜4.5畳」という狭い住宅に住む人が11人(13.1%)います。
部屋のタイプは、和室が55人(65.5%)、洋室が29人(34.5%)です。

家賃は、「4〜4.5万円」が51人(60.7%)と最も多いです。生活保護の住宅扶助限度額の41,800円までに設定したものが多いようです。最低額は22,000円、最高額は52,500円でした。平均は39,275円です。
共益費については、水道料金が含まれているところもあるので、一概に比較はできませんが、負担がまったくないという回答が12人、5,000円以上の負担があるのは17人でした。平均は2,790円です。

設備をみると、ほとんどの住宅に専用台所がついています。専用の台所がないのは3件だけでした。
トイレは、4人に3人(76.2%)が専用トイレがついている部屋に住んでいます。洋式トイレは48件(57.1%)です。また、全部のトイレが水洗式でした。
風呂付の住戸は48件(57.1%)です。ユニットバスか、トイレとセパレートかの別までは確認できていません。風呂なしの住戸は34件(40.5%)ありました。
約3割(29.8%)の住戸は、はじめからエアコンが備え付けられていました。同様に、約3割(28.6%)の住戸は、はじめから冷蔵庫が備え付けられていました。その他、洗濯機付のアパートもありました。
「物干しがある」「ベランダが広い」などの特記をしている回答者もおり、これらの設備も住宅の条件として重視しているように見受けられます。押入があるかどうか、ベランダがあるかどうか、も調査で確かめておく必要があったように思います。
また、ペットの飼える住宅に住んでいる人が2人います。

敷金については、行政からの支給で敷金を用意した人が61人(72.6%)です。行政以外から借金したのは11人(13.1%)、自分で貯めたのは9人(10.7%)、福祉事務所から敷金を支給された人が38人(45.2%)(西成25人、浪速10人、阿倍野3人)います。市更相から支給された人は22人(26.2%)です。他に、協友会から借金した人が4人、さつきつつじ会から借金した人が4人います。

今の住宅を選んだ理由は、回答が多かった順に、 「買い物に便利だから」(36人)、「間取り・広さが手ごろだったから」(35人)、「交通に便利だから」(31人)、「部屋・建物がきれいだったから」(22人)、「設備が良かったから」「病院に近いから」(各20人)でした。逆に少なかった回答は、「断れなかったから」「どこでもよかった」(各2人)、「敷金がいらなかったから」「不動産屋が気に入ったから」(各4人)、「最初に見たから」(7人)などでした。選択肢にはあげていなかったのですが、その他の意見の中で、「1階だったから」(8人)、「知人に紹介されたから」(4人)という回答が目立ちました。釜ヶ崎との関係では、「釜ヶ崎から離れているから」(18人)と「釜ヶ崎に近いから」(13人)の両方に回答が分かれました。「ここしかなかったから」という他の住宅の選択肢がなかった人が13人いました。

今の住宅に対する満足度は、「満足」「普通」「不満足」の3つに分かれました。
住宅についての困りごとや希望があるものは47人(56.0%)います。内容は、「狭い」(13人)、「うるさい」(8人)、「暑い、陽が当たりすぎる」「設備が悪い」(各6人)、「ふとんの干し場がない」「中高層階でしんどい」(各5人)、「老朽化している」(3人)などです。


第6節 近隣関係

近隣関係については、約半数が同じアパートの人との付き合いがあると答えています。また、近隣の住民とのつきあいがある人は24人(28.6%)です。
自治会や町内会に加入している人は16人(19.0%)、地元の祭りやイベントに参加している人は4人(4.8%)いました。

友達の人数については、18人(21.4%)が「いない」と答えています。「3〜5人」の回答が最も多く、全体的に友達の数は多いとはいえません。
また、友達の家に行ったことがある人は45人(53.5%)、友達の来訪を受けたことがある人は48人(57.1%)です。

地域の老人福祉センターや図書館がどこにあるか知っている人は53人(63.1%)いました。これらの施設を利用したいと思っている人は47人(56.0%)、実際に利用したことがある人は35人(41.7%)いました。


第7節 居宅保護

居宅保護になってからの年月は、「1〜2年」が38人(45.2%)、「2〜3年」が20人(23.8%)、「3年以上」は4人です。半年未満は12人(14.3%)です。

居宅保護になったときの住所は、4人に1人が釜ヶ崎の中でした。
居宅保護時の住所から転居した人は23人(27.4%)います。
居宅保護のきっかけは、多い順に、「仕事ができなくなったから」「ボランティア団体が勧めたから」(各45人、53.6%)、「高齢になったから」(32人、38.1%)です。その他の欄では、「自分で自立したかった」「早く施設から出たかった」という回答が計3件ありました。

ケースワーカーの認知度については、7人に1人(16.7%)が「ケースワーカーを知らない」と答えています。
この1年間のケースワーカーの訪問回数は、「0回」が14人(16.7%)、「1回」が32人(38.1%)、「2回」が19人(22.6%)です。「12回」(毎月1回程度の訪問)と回答したのは2人でした。
ケースワーカーに希望することを記入した人は7人です。「相談に乗ってほしい」「もっと家にきてほしい」などの内容がありました。

一方、民生委員の認知度については、4人に1人(23.8%)が「担当の民生委員を知らない」と答えています
民生委員が来たことがあると回答した人は29人(34.5%)です。70歳以上16人のうち、民生委員の訪問を受けたことがある人は7人です。
また、4人に1人(27.4%)は民生委員に相談に行ったことがあると回答しています。
民生委員に希望することを記入した人は6人です。「もっと家にきてほしい」「嫌な思いをした。もっと親身に相談に乗ってほしい」などの内容がありました。


第8節 福祉サービス

地下鉄・バスの半額乗車券を利用しているのは、56人(68.3%)いました。しかし、このうち、高齢者(70歳以上、16人)のほとんどは敬老優待乗車証を利用していると思われ、また障害者手帳を持っている人は障害者運賃割引を利用しているものと思われます。
一方、4人に1人(23.8%)は、まだこのサービスを利用しておらず利用したいと答えています。

NHK受信料の減免サービスを利用している人は38人(45.2%)いました。

水道料金の基本料金の減免サービスを利用しているのは41人(48.8%)いました。
4人に1人(26.2%)はこれからこのサービスを利用したいと答えています。

介護保険の第1号被保険者(65歳以上)は50人いますが、このうち制度を知っている人は38人です。

身体障害者手帳(療育手帳、精神保健福祉手帳を含む)を持っている人は22人いますが、このうち制度を知っている人は10人です。


第9節 釜ヶ崎との関わり

釜ヶ崎との関わりについて尋ねたところ、釜ヶ崎を知らない人が5人いました。
「30〜40年前」(大阪万博前)と「10〜20年前」(バブル期)に釜ヶ崎に来た人が多いです。

8割以上(83.3%)の人が釜ヶ崎で仕事を見つけたことがあると答えています。女性を除くと、79人中69人(87.3%)が釜ヶ崎で仕事を見つけたことがあります。

釜ヶ崎を出たいと思ったことがある人は39人います。「釜ヶ崎を知らない」あるいは「なじみが薄い」と答えた6人を除く78人に対して、この数字はちょうど半数を占めます。
釜ヶ崎を出たいと思った理由の上位は、「環境の悪さ、特に治安」(11人)、「人間関係」(9人)、「仕事がない、日雇以外の仕事につきたい」(8人)などです。「釜ヶ崎では一般市民として扱われない」という意見もありました。

釜ヶ崎に住んでいる人も含めると、約4割(41.7%)がほぼ毎日釜ヶ崎を訪れています。訪問回数の少ない人の中には、つきみそうの会などの会合があるときのみ釜ヶ崎を訪れる人もいます。「行かない」という人は18人(21.4%)です。



第10節 自由意見

居宅保護になってからこれまでの困りごとで多いのは、病気になったときの対応、サラ金の返済、 お金のやりくり、人間関係、食生活などに関することです。一人住まいからくる心細さが、病気になった時の心配につながっているように見受けられます。実際、病気で倒れて歩けなくなったり、救急車も呼べなかったと答えている人が複数います。
相談事や困り事があっても、友達など相談する人がいないという意見も少なくありません。また、悩みがあっても、「言いたくない」「言いにくい」と自分の中に抱え込んでしまう人もいます。

 これから居宅保護になる人に対してアドバイスを求めたところ、アルコールやギャンブルの自粛・自制、他人とのコミュニケーションの創造、計画的な金銭管理、健康管理などに関する意見が多くみられました。
特に目立つのは、「自己責任」「自立精神」など、自分自身をしっかりと見据えて生活することが大事だと訴える人が多いことです。一方、「他人は当てにできない」「信用ならない」、といった人間への不信感を示す意見もいくつかありました。全体的に、人に依存せずに生活していこうという決心のようなものが感じられる意見が多いです。


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