《東大阪国際交流フェスティバル・10周年記念》 
 三ノ瀬公園に7,000人参加、
一人ひとりが主人公 
市民の会 西山 健一郎 


 今回の国際交流フェスティバルは10周年企画が目白押しで、『在住外国人向け暮らしのガイド・指差し多言語対訳集』の作成、『三ノ瀬公園の歴史発掘資料集』の発行や、“私のまちはアジアのまち、わたしのまちは世界のまち”をテーマにした「子ども絵画コンテスト」「中国方正県華僑村・平和教育基地友好訪問団」「布施ラインシネマ10」との提携などなど、盛りだくさんな工夫が一杯でした。
 とくに『在住外国人向け暮らしのガイド』は多くのマスコミにも取り上げられるなど、東大阪国際交流フェスティバルの存在とともに、地域の在住外国人の方々と共に暮らしていくために、私たちが企画した心からの呼びかけ・贈り物であったと思います。
 そんな11月3日の三ノ瀬公園における、いつもよりも何倍も楽しかった様子をレポートしましょう。


【『在住外国人向け暮らしのガイド・指差し多言語対訳集』が完成】

 「また一歩、共生の街へ前進」「指差せば東大阪丸わかり」「言葉の壁解消、指差し対訳集」「病気になったらどうすればいいの? 指差しで意思疎通可能、暮らし情報対訳ガイド」等々。これらは各新聞紙上に躍った見出しの数々です。
 大盛況の中で、東大阪国際交流フェスティバル当日に配布したこともあり、市民や学校・郵便局・医者・消防など色々な所からの問い合わせの声も多く、「大変な仕事をしていただき、本当にありがとうございました。大切に使わせていただきます」「太謝了」などの反響に、改めて作成した意味の大きさを知らされました。
 主な内容は「困ったときの連絡先」や「病気・薬局」「緊急時」「買い物・郵便局・交番・食事」「労働・学校・保育所」「市役所への届出」などが、日本語とハングル・中国語でどちらからも一目でわかるように工夫されています。例えば「病気や薬局」のページでは、具合が悪い身体の場所をイラストで示せるようにし、必要な薬を求める際に言葉が通じなくても指差し方式でコミュニケーションできるようになっています。
 そもそも、この対訳集が作成されたきっかけは、東大阪市文化国際課担当者の方から自治体国際化協会の補助金で何かを企画してみませんかとの投げかけでした。以前に市役所からの委託で『窓口対応用多言語対訳集』を作成した際に、私たちの仲間が盾津鴻池地域の商店街向けにお店で使う「日中会話集」の大きな反響を知っており、もう少し簡単に、そして楽しく言葉のやり取りができればとの思いを抱いていたのです。
 そこで、「絵を見ながら、指差しで意思を伝える」ことができないかと、約一年間の検討を経て完成したのです。検討と作成に要した一年は、大変な道のりでした。スタッフ、在住外国人からは色々な意見が出ました。「日本に来て学校へ編入するときは、親が自から希望する学年を言うことが大事」「引ったくりにあったときに、交番でどうしても伝えなければいけないことは何か」等々。中国人、韓国・朝鮮人のスタッフも一緒に言葉に不自由している外国人になったつもりで、毎日の暮らしの中で必要な会話をとりあげ、テーマを決めていきました。
 原稿の作成・翻訳・校正・デザイン・パソコン上での版下づくりなど、多くの仲間がそれこそ時間に追われながら夜もいとわず作業した、汗水の成果であったと思います。一回目のデザイン案がもたらされた時、誰からともなく「やったー!!」と出た喜びの声は、報われた苦労の大きさを物語っていました。
 中国語の翻訳にあたっていただいた葉さん、徐さん、王くん、張さん、楊さん、そしてハングル訳していただいた李さん、本当にありがとう。さらにデザインを考えてくれたデザインラボ・ジオの皆さん、版下作りに何日も明け方まで作業を続けた田村さん、お疲れ様でした。
 そうそう、それともう一つ。フェスティバル当日には、布施駅前商店街での買い物で、この『暮らしのガイド』を使用してもらうh使用体験スタッフiを募り、試行しました。韓国から来日して日も浅い方でしたが、「周りのサポートなしで、何とか意思は通じた」との、うれしい成果もあがっています。
 小さいけれども、きっかけは出来ました。これからも更にさらに進めていくために、みんなで知恵を出し続けたいものです。

【そのほかの素敵なプログラム】
 今年のフェスティバルには、中国残留婦人、孤児らの墓が建てられている中国黒龍江省方正県から、訪日代表団の参加がありました。大きな拍手と歓声の中で、温かく迎えられたことは大変よかったことです。中国帰国者協会と太平寺夜間中学が「中国人の心」を歌う中で、訪日団の代表から「この素晴らしいフェスティバルの姿を方正県民に伝えたい」とのメッセージがありました。
 また、8月の方正県への東大阪友好訪問団によるパネルとして、中国政府などが建立した日本人の墓地(日本人公墓)なども展示されました。
 ステージでは韓国・朝鮮のサムルノリや、ペルー、ボリビアなどの中南米音楽、さらにアフリカンドラムなどの歌や踊りが披露されました。とくに特別ゲストの「朴保バンド」の演奏には、踊りまくりの人々であふれるなど、会場は元気で満ち溢れていました。今も「エンヤートット、エンヤートット」のリズムが頭によみがえるほどです。
 そして何といっても、ステージでの目玉は、トリをつとめる朝鮮総連の「ムグンファコーラス」と韓国民団の「オモニコーラス」によるhジョイントコーラスiです。「アリラン」「ノドゥルガンビョン」……聞こえれば手足が勝手に動いていしまうほど、参加者をおおいに盛り上げてくれました。

【市民の会のおでんやさん】
 今年も40店を超すhお店屋さんiが出店しましたが、よかったことは全出店者の顔を見て回ることに成功したことです。
 一人ぼっちでもウッドクラフトを販売していたユン君をはじめ、アフリカンバーの飲み物、白頭会のマトン串焼き、八尾ベトナム人会の生春巻きなど。あまりにも食べ過ぎ、飲み過ぎ、話し過ぎで、少々持病の高脂血症が気になりました。
 もちろん、わが市民の会は東大阪の代表食であるhおでんiを今年も振る舞い、早々に売り切れ、打ち止めとなったことは喜ばしいかぎりでした。スタッフの皆さん、本当にご苦労様でした。



【来年は11周年! もっと、もっとの楽しさで!!
 さて、次回は10回から新たな一歩を踏み出す11回目。今、東大阪市には55ヵ国1万9429人の外国籍住民が暮らしていますが、「全員が集まれーっ!! 」。それぐらいの意気込みでとも考えます。
 とくに継続している取り組みである、三ノ瀬公園の歴史を探り、在日の韓国・朝鮮人にとってどんな場所であったのか。公園が街づくりに果たした役割なども勉強しながら、「わたしのまちはアジアのまち、わたしのまちは世界のまち」をもっと実感していきたいと思います。