東大阪国際交流センターの
  
設立実現に向けて 
          市民の会・代表 合田 悟

1.東大阪の外国人とくにアジアのひとびと

 東大阪市には52ヵ国、2万人以上(2002年の外国人登録者数は20,038人)の外国人が住んでいます。人口比は約4%で全国第2の割合であります。このうちアジアの国々の人は、実に97.2%、19,887人であります。
 この構成を見るかぎり、東大阪で国際化とか、外国人の問題を考えて取り組んだりするとき、アジアという視点を無視したり軽視したりすることが出来ないことは明かであります。

 わたしたちは11月のはじめに、「東大阪国際交流フェスティバル」を三ノ瀬公園において開催し、毎年5000人以上の人々が参加しています。今年は第8回を迎えようとしています。このフェスティバルのテーマは、第1回から「わたしのまちは世界のまち、わたしのまちはアジアのまち」であります。
 わたしたちは地球という世界の中に住んでいるのですが、そのなかでもとくに多くのアジアの人々と一緒に暮らしているということを意識して、掲げているのです。


2.多民族、多文化共生社会を目指して

 「NPO(特定非営利活動法人)東大阪国際共生ネットワーク」が今年(2003年)3月11日に、大阪府の認証を受け、法人登記を済ませて発足しました。
 この《国際共生ネットワーク》は、世界各地から東大阪に集まってくる多くの外国籍の人々が、東大阪の住民として安心して生活できるように、いろいろな面において交流し、理解し合う諸活動を推進するために発足しました。外国籍住民として、生活のあらゆることにお手伝いすることを目指しています。
 生活の相談、ことば、住宅、仕事、医療、福祉、教育(学校)、保育(出産育児)、保険、法律、食、文化交流、情報提供などなどです。東大阪に、多くの外国人の問題に関わるNPOができることは喜ばしいことです。それらの団体が交流し、活動していく場を必要としています。


3.外国籍住民・日本人の交流の場としての国際交流センター

 東大阪市は、2003年3月に「東大阪市外国籍住民施策基本指針―ともに暮らせるまちづくりをめざして―」を策定して発表した。
 1982年に制定した基本指針は、「在日韓国・朝鮮人の歴史的背景、ならびに今日的状況を直視して、憲法ならびに国際人権規約に則り、外国人を含む全ての市民の基本的人権が擁護され、あらゆる差別の撤廃を基本に据え、本市が直面する課題の解決に向かって努力するため、この指針を制定する」という高邁な理想を掲げました。
 当時、多くの自治体からも評価され、東大阪市はこの指針に基づいて、多くの課題に取り組み、推進してきました。
 今回、制定された指針は、「基本指針の見直しに関する会議」と「東大阪市外国籍住民施策有識者会議」がつくられ、それぞれの会議の半数以上は外国人というメンバー構成で組織され、その中での論議・提言された内容をもとに作成されました。
 最終的に行政の手でまとめられた「基本指針」は100%満足するものではありませんが、東大阪市に住む外国人の意見を出来るだけ反映する努力がなされました。細かい内容については次の機会に述べますが、この指針の最後に、「(仮称)東大阪市国際交流センターの設置」という項において、「外国籍住民と日本人及び外国籍住民同士が交流して互いの文化を認識し、多民族・多文化共生のまちづくりの推進や情報収集・発信の拠点として、また外国籍住民の人権尊重に基づく施策の展開を図る場としても(仮称)国際交流センターの設置が必要である」と位置づけられています。 


4.「東大阪国際交流センター」設立の具体的展開を

 日韓問題を考える東大阪市民の会では、1994年から毎年秋に、東大阪市に対して要請行動をしています。今年で10回目の要請行動をすることになりますが、毎年「東大阪国際交流センター設置」を要請してきました。
 また早期設置を要望する団体の代表が2003年1月27日に、松見市長に「―アジアの街・世界の街、東大阪の発展を―東大阪国際交流センターの早期開設の要望書」を直接手渡して、要請してきました。
 しかし、2003年度予算には、昨年度までもられていた調査費すらゼロの状況で、まったく予算には計上されないという現状となりました。
 「基本指針」にもられている方向、そして要請書に対する回答「東大阪に居住するすべての人々が、国籍の違いを踏まえ、互いの文化を理解し共に暮らす社会をつくるにあたって、国際交流センター設立が必要であると考えており、第1次実施計画に盛り込むよう努めてまいりたいと考えております」とは裏腹に、東大阪市当局はなんらセンター設置に向けての努力をしていないことを暴露しました。
 わたしたちは、このゼロ回答に対しての不満を市長、及び人権文化部に投げかけました。財政上の問題でどうしても無理なら、それなりの説明と了解をもとめるべきでありましょう。方針にも、回答にも麗々しく「センター設置」をうたいながら、実態は「切り捨て御免」ということでは、まったく納得できませんでした。


5.場所は永和の旧教育委員会庁舎?

 上記のような状況の中で、6月の東大阪市議会において、久保武彦議員が「(仮称)東大阪国際交流センターについて」として、次のような質問をしました。
 「本市には50ヵ国を超える2万余人の外国籍住民が住んでおり、言葉も文化も習慣も異なるこれらの人々の中には、日常生活においてさまざまな問題を抱えていらっしゃいます。新しく見直された『外国籍住民施策基本指針』の中でも触れられていますが、これらの人々に情報を提供し、又、さまざまな相談を受けるとともに、日本人も含めた交流の場としての(仮称)国際交流センターがつよく求められております。このことについては、今年3月の第1回定例会において、松見市長はその必要性を認め、『新庁舎移転にともなう空き庁舎の活用等の中で検討する』と答弁されましたが、その後どのように検討されたのかをお答えください」。
 これに対して、東大阪市人権文化部・田辺理事より、以下のように回答がなされました。
 「(仮称)国際交流センターは、外国籍住民の生活支援のための拠点的役割を果たすとともに、市民と外国籍住民が気軽に、身近に交流できる場としても重要であると考えており、引き続き、旧教育庁舎等を含めた空き庁舎全体の活用等の中で場所の検討を行い、又、事業・運営等については、関連する団体等の意見も聞きながら検討してまいりたいと考えております」。
 ここに至ってようやく、場所についても「旧教育庁舎等」というような少し具体化した回答を見るに至っております。国際交流センターができたら、外国籍住民の問題がすべて解決するわけではありません。しかし、東大阪における外国籍住民の施策は格段に進展することでしょう。