《2009年度・報道資料ファイル》


『大阪の関西STS連絡会/運転者講習2500人超す』(東京交通新聞2009.12.14)

 関西STS連絡会(伊良原淳也代表)は7、8の両日、今年最後の福祉有償運送運転者の講習会を開催、30人が受講し講習・実技を修了した。
 
国土交通省が認定する同講習会は有償運送事業の登録制移行後の2007年1月から開始、累計受講者数は2517人となり、3年間で2500人を突破した。1種免運転者が有償運送に携わる場合の要件となる。
 最終日の8日は道路運送法など関係法令を勉強した後、2班に分かれ、@
福祉車両への車いす乗降、運転実技、Aセダン車両への乗降・介助実習、車いす実技――を行った。
 
大阪府内の福祉有償運送登録団体今年4月現在、165事業者、運転者数1096人(1種免許965人、2種免許131人)で、全般的に横ばいから微減傾向にあるものと見られる。府内で国交省認定の運転者講習を実施しているのは関西STS連絡会など9団体ある。近畿2府4県では24団体。
 大阪府では「登録事業者数、運転者数は変動しており増減があるのが実情」(地域福祉推進室)と話している。




『福祉運営協議会の問題検証/移動ネットがフォーラム』(東京交通新聞2009.11.30)

 NPO法人全国移動サービスネットワーク(中根裕理事長)と移動ネットあいち(渡部勝理事長)は24日、名古屋市内で「福祉有償運送運営協議会を検証するフォーラム」を開催した。国土交通省自動車交通局旅客課の廣瀬正順新輸送サービス対策室長や自治体、学識者、タクシー業界の代表がパネルディスカッションに参加。それぞれの立場から福祉有償運送に対する考え方などを述べた。
 パネルディスカッションを前に、
嶋田暁文九州大学大学院准教授「福祉有償運送をめぐる法的問題点と改革展望」と題し基調講演。@運営協議会での合意の議論が「必要性、区域、対価」の3要件に「ローカルルール」が上乗せされている、A合意がされなかった場合などの不服申し立てが困難となっている、B現状の制度運用での地方への権限移譲は責任の所在があいまいになる――などの問題点を指摘した。
 
パネルディスカッションでは、進行役を務めた全国移動サービスネットワークの中根理事長が「今日のテーマの運営協議会を検証するという意味では、ニーズと実際の需要、さらに供給の面から議論が必要ではないか」と指摘。移動ネットあいちの渡部理事長は「供給面で言えば私が運営する団体ではドライバーが1000人に上っている。毎週運転の講習を実施している」と体制整備を強調。
 
加藤博和名古屋大学院准教授は「人が人らしく生きる意味での潜在的なニーズの議論はできていない。自治体にとって福祉有償運営協議会はやらされている、という感覚だ」と述べ、自治体で「福祉交通計画」策定など関係者間の議論が必要との認識を示した。
 国の立場からは
廣瀬新輸送サービス対策室長が「地域の輸送ニーズ、交通ネットワークの実情に応じて自治体、関係者の合意形成の場として運営協議会や地域公共交通会議がある」として理解を求めた。
 
タク業界から出席した天野清美名タ協副会長は、ローカルルールについて「問題があれば事後チェックで、と言われるが、問題があってからでは遅いのではないか。入口で一定の要件チェックは必要。地方分権の中でタクシーやNPOがどういったかかわりを持つのか。助成金など自治体による基盤づくりが求められるのではないか」との認識を示した。




『交通弱者の足「福祉有償運送」に危機/市内で事業撤退相次ぐ/人員確保や採算厳しい』(東京交通新聞2009.11.19)

 道路運送法の改定により、2006年に始まった公共交通が利用できない要介護者や障害者の移動をNPOなど非営利法人が自家用車で行える「福祉有償運送制度」。高齢者社会における有力な移動手段の一つとして期待され、現在も多くの人々が利用しているが、事業運営に必要な人員確保の難しさ採算性の悪さから津市内でも2年期限の運輸局への登録を更新せず、撤退する事業者が出るなど厳しい状況が続いている。
持続可能な法整備は必要
 2003年度に介護保険に「通院等乗降介助」が設けられ、多くのNPOや社会福祉法人が要介護者・障害者の通院・通所時の移動を行ってきた。しかし、多くの事業所が道路運送法の許可を受けずに行っていたため、自家用車での有償運送は「白タク行為」にあたるとタクシー業界が猛反発。その声を受けた国交省と介護保険を運営する厚労相が協議を重ねた結果、2006年4月に
道路運送法を改定、施行したのが「福祉有償運送制度」
 制度開始から約3年半が経過した現在、津市内ではNPOや社会福祉法人など19の非営利法人が、津市、公共交通利用者、バス・タクシー等の公共交通機関で構成する
「運営協議会」を通じて運輸局に登録している。それら法人によるサービスは、公共交通機関の利用が困難な交通弱者の重要な「足」として広く利用されている。
 実際、市内の2008年10月〜2009年3月までの利用者数は延べ約2万8000件。この数字からも需要の高さが伺える。しかし、この高需要とは裏腹に2年の更新制である事業登録を1期で打ち切り、この事業から撤退する法人が現在までに4つ出るなど問題が表面化。今後、「足」を確保することが難しい利用者が増える可能性も出ている。
 それら法人が事業撤退に至った1つ目の大きな理由は
採算性の悪さ国の規定で福祉有償運送制度の運賃は「タクシーの半額以下が目安」と定められており、介護保険の報酬点数も距離に関係なく一律で低く設定されている。さらに近年の燃料価格高騰もあり、この事業単体で採算をとるのは不可能。そのため社会福祉法人のような比較的大きな事業者は、他の介護事業の収益で赤字補填したり、NPOなどの少人数の事業者は自分たちの人件費を充てる形で、なんとかサービスを継続している状況とみられる。
 2点目の理由は
運転者の不足。この制度では普通2種免許を取得していなくても、専門の講習を受けた者であれば有償運送ができるが、問題はこの講習の開催頻度。中勢地区では県社協による講習が年3〜4回しか開かれないため、いつでも運転者を補充できる状況にはない。厳しい福祉の現場は必要最低限の人数で運営している事業所が多く、運転者が一人退職しただけでもたちまち事業継続が難しくなるケースも少なくないという。
 しかし、これらの問題はすべて2006年の
法施行前から危惧されていたことばかり。その予想が改めて現実化したという流れ。これに対し、津市は県の事業を補い今年度から福祉車両の購入費や講習費の補助などを行っているが、一定の助けにこそなれど、問題の根本的な解決にはならない。
 厳しい状況が続けば、ますます多くの法人が撤退する可能性も高い利用者のほとんどが低所得者であることを考慮すると、運賃の値上げは難しいという声もあるが、事業を継続できなければ、一番困るのは生活の「足」を失う利用者たち
 今後さらに高齢化社会が進み、制度へのニーズが増すのは確実。それに対応するためにも、現状の大きな問題点である講習回数の拡充や、介護保険報酬の見直しなどを含めた
採算性の改善など、事業が継続できる方策が求められよう。




『《国交省》「交通基本法」制定へ動き/検討会、近く立ち上げ』(東京交通新聞2009.11.2)

 国民の移動の権利を保障し、公共交通政策の理念を盛り込んだ「交通基本法」の制定をめぐり、国土交通省で準備体制づくりなど動きが具体化してきた。辻元清美副大臣をヘッドとする検討会を来週にも立ち上げ、民主、社民両党が野党時代に提出し、廃案となった法案をベースに策定される。来年の夏ごろ骨格を整理、2011年の通常国会に出す方向が強まっている。先月30日に総合政策、自動車交通など関係各局による準備会合が開かれた。法制化には生活路線の維持地球環境への配慮バリアフリー化など諸対策の観点が含まれ、バス・タクシーをはじめ陸・海・空の事業法の改正も絡む大がかりな作業となる見通しだ。

来年夏ごろにも骨格
 辻元国交副大臣は先の就任会見で「交通基本法案を早ければ来年の通常国会に出したい。これまでの交通政策は業界の意見を多く聞いてやってきた。利用者の立場で法律をつくりたい」と意欲を示していた。国交省は交通分野担当の同副大臣と三日月大造政務官の指揮の下、総政、自交、鉄道、海事、道路、都市・地域整備など各局課長級を総動員した作業に取りかかることを決め、準備会合がスタート台となった。
 新法はいわば
“交通の憲法”。衣食住と並ぶ国民の権利の概念として「移動権」の確立を目指す。特に高齢者障害者妊婦・子ども過疎住民など移動手段の確保をうたい、公共交通体系・サービスの整備を国や地方自治体、事業者などの責務として規定する方針。例えば、地方バスやデマンド乗合輸送、福祉タクシーなどの導入・維持を事業者任せとせず、地域一体で「公共」が手当てする考え方を打ち立てる方向だ。
 検討会のメンバーは調整中。当面は鉄道・バス・タクシー・海運の事業者・団体、労働組合、NPO、学識者などのヒアリングが順次行われる見通し。初会合には前原誠司国交相が出席し、基本姿勢を表明する予定。
 立案に当たっては理念・規範にとどまらず、予算・税制などの財源や「地域主権」といった権限にも踏み込む検討が展開されそうだ。国交省関係では地域公共交通活性化・再生法が近似の枠組みとなる。
道路運送法など事業法のかかわりや整合バリアフリー新法などの見直しにつながる可能性が指摘されている。
 自治体側の交通担当部局の明確化に期待が高まる一方、移動権を盾に国に対する損害賠償の発生のおそれや、権利・義務を設ける際の法制上の技術などハードルも多いとされる。




『全国移動ネット/要望書を提出へ』(東京交通新聞2009.10.19)
 全国移動サービスネットワーク(全国移動ネット)は10日、三重県伊勢市で2009年度第1回通常理事会を開き、地方分権改革推進委員会の第2次勧告で自家用有償旅客運送の地方移管を予定する2011年の道路運送法改正を踏まえ、前原誠司国土交通相らに要望書を提出することを決めた。
 
要望案では、有償運送が制度化されたが、市民ボランティア活動や福祉団体による移動サービスの提供が困難になったとして、具体的に、@登録要件の「運営協議会の合意」の撤廃、A移動困難者のクレームや登録拒否団体の不服を申し立てる制度運用上の第三者機関の設置、B現行の運送対価の基準を「おおむねタクシーの2分の1程度」から「タクシー運賃を超えない」に改め、「2分の1」は登録不要の要件に移管する、C福祉有償運送の利用対象者の範囲を「福祉目的の利用」に限定する――を求める。



『三重シンポ「立場超え移動ニーズに」/タクやNPO参加』(東京交通新聞2009.10.19)

 増大する高齢者の移動ニーズにタクシーやNPOなどが立場を超えて取り組もう――11日、三重県津市で移動サービスシンポジウムを開催、福祉輸送の問題解決に向けてサービス提供者、自治体などの関係者が第一歩を踏み出した。高齢化率23%、限界集落を含む南北格差、公共交通機関の撤退――など高齢輸送問題の縮図とも言える三重県シンポには、タクシーから大西克己・三重県旅客自動車協会・会長、NPOから大西良太・市民福祉ネットワークみえ・代表が参加。国土交通省から石ア仁志・自動車交通局旅客課長が駆けつけ、全国の成功事例を紹介し地域での創意工夫に期待した。
 
三重シンポは市民福祉ネットワークみえ、全国移動サービスネットワーク(全国移動ネット)が主催。津・松阪・伊賀・名張4市、三重県社会福祉協議会、中部運輸局三重運輸支局、さわやか福祉財団、全労済三重県本部が後援。「増大する高齢者の移動ニーズに応える方策はあるか」をテーマに福祉輸送関係者が一堂に会した。全国移動ネットの中根裕・理事長は「三重ならではのモデルを探ることで連携の仕方を学べる」と主催者あいさつした。
 国交省の石崎・旅客課長が「福祉輸送についてNPOに期待するもの、タクシーに期待するもの」と題し、基調講演。パネル討論が行われ、大西・三重旅協会長、大西ネットワークみえ代表(NPO法人 伊勢まごころ代表)、湯浅しおり・NPO法人あいあい代表、平野征幸・全国移動ネット理事(佐賀)、吉田一生・三重県健康福祉部長寿社会室長をパネリストに、石阪督規・三重大学人文学准教授が司会し、石崎課長も参加した。
 大西・三重旅協会長は「タクシー業界には白ナンバーに困惑し、有償運送制度にまだ納得できない事業者がいるのも現実だが、タクシーにもNPOにも望ましいことではない」と現状認識を示した上で「タクシーは鉄道・バスと違って小回りが利く便利な乗り物というメリットを生かし、現在、三重独自の運送を構築できないかと考えている。具体的には、路線によらない乗合タクシー地域単位のタクシー借り上げ制度の導入の2つを念頭に置いている」と、タクシーの輸送量がNPOを下回っているとされる三重県のタクシーテコ入れ策を明らかにした。
 大西会長はまた、「タクシー事業者と有償運送事業者が共存できるよう、移動制約者のすみ分けができないか。介護保険でいう要支援者と要介護者の利用者側のすみ分けがポイントにならないか」と指摘した。
 
NPOの大西代表は「草むしりから買い物、病院と広がってきた福祉有償運送には、単に運ぶだけではない人と人との助け合いの歴史がある。そこがお金で動く介護タクシーと少し違う。デマンドバスをいくら走らせても移動の問題は解決しない。移動困難者には手助けが必要で、バスやタクシーに福祉有償運送の行う心の通った手助けまでできるのか」とし、「三重県にある150の限界集落に現在の登録制度がどんな価値があるのか。別の対応の切り口が必要だ」と提起。
 平野
全国移動ネット理事は「タクシーの大西会長の言うことはよくわかる。私も基本はタクシーが一番と思うが、タクシーを使えない人を見てきて、やむにやまれず手を出し、今がある。理解してほしい」とし、「地域でお金を出し合い、自分たちの住み続けたい街をつくる時代。そのためにも移動手段の選択の幅を広げる登録を要しない運送の見直しが必要」と述べた。
 登録49台・運転者61人の
有償運送を行う湯浅代表は「年間1千万円程度の赤字。タクシーを利用するようお願いしている。地域で困っている人を前にバスもタクシーも有償運送も手をつなぐしかない」と述べた。
 大西・三重旅協会長は、財源問題に言及。「国交省の活性化・再生総合事業は事業者も自治体も皆さんも活用すべきと思うが、原資が小さい。税金なりお金を再配分する原資はもっと他のところにある気がする」と財源確保への意識を喚起した。
 タク乗務員を経験した会場参加者からの高齢者・障害者割引の拡充を求める意見に、大西会長は「公共運賃だけに一事業者が突出すると、ひともんちゃく起こるが、高齢者割引の拡充は必要だ」と応じた。




『《市川市福祉運営協》移動困難者でビジョン案』(東京交通新聞2009.9.7)

 市川市は2日、市川市役所で2009年度第2回福祉有償運送運営協議会を開いた。「移動困難者に関わる諸問題の解決へ向けての方針」について議論し、長期的な目標として共同配車センター設立を含めたビジョン案を提起した。今後も継続して検討する。
 
ビジョン案では、短期的な対応として、@サービスの担い手の整備、Aサービスを仲介する者への周知と情報伝達、B利用者や家族に対する移動サービスの周知長期的な対応として、@共同配車センターの整備、Aユニバーサルデザイン車両の開発、B公共交通システムの再構築――を骨子に立てた。
 共同配車センター設置について、武藤厚委員(千タ協ケア輸送委員長)は「利用者の窓口が一つで済む。最終目標に置き検討してほしい。タク会社はインフラが整っているが、公的機関が担う形で当面、相談業務などからスタートするのが望ましい」と意見。中根裕委員(NPO全国移動ネット理事長)は「設立して継続させることが重要。運営を社会福祉協議会が担うことも可能では」と指摘した。
 実際にセンター運営する世田谷区福祉移動支援センターの鬼塚正徳氏(世田谷区ハンディキャブを走らせる会)がオブザーバー参加し「移動困難者にセンターは間違いなく必要だが、世田谷では80万都市にしては利用が意外に少ない。料金が原因か利用者が選り好みしているのか、利用実態の把握が課題」と述べた。
 
から有償運送運転者育成のための運転者講習受講補助制度の検討報告があり、タク側委員は「ケア輸送士やヘルパー資格を持つタクシーにも対象を広げてほしい」と要望した。




『《全国移動ネットが会見》タクシーとの共同調査提起』(東京交通新聞2009.8.24)

 NPO法人全国移動サービスネットワーク(全国移動ネット)は21日、国土交通省の一般記者クラブで会見を行い、福祉輸送ニーズの全国実態調査結果を報告するとともに、地域住民の移動ニーズに的確に対応した仕組みづくりのため、タクシー業界など公共交通機関と連携した調査の必要性を提言した。調査は自治体ごとに地域事情を踏まえて実施し、通院・通所需要には公的補助が不可欠と訴えた。
 会見には、笹沼和利・副理事長(埼玉県移送サービスネットワーク)、河崎民子・副理事長(かながわ福祉移動サービスネットワーク)、鬼塚正徳・理事(世田谷区ハンディキャブを走らせる会)、長谷川清・理事(移動支援フォーラム)、伊藤みどり・事務局長、調査協力した東京学芸大学の山本真祐子・大学院生が参加した。
 具体的には「地域にどんなサービスがあり、どんなコストがかかるのか分からないのが現状。今後、継続的なニーズ把握が必要で市民、行政、特にタクシー事業者と一緒に調査したい。調査結果をもとに
地域の交通システムを改めてつくっていきたい」(鬼塚氏)、「過疎地には福祉輸送のレベルだけでは応じきれない移動制約者が多くいる」(笹沼氏)、「MUST需要は医療も含めて税で賄うぺきと強く思っている。介護保険自立支援法では乗降介助やガイドヘルプにしか使えず、改善を働きかける有償運送道路運送法に位置付けられたが、利用者の声が反映されておらずNPOの運転者が減る中、個人が社会参加しコミュニティの助け合いが活発化する法律や制度づくりに取り組みたい」(河崎氏)――と提言した。
 同調査は、移動・外出に困りごとを抱えた1161人(3500通配布)からの回答(うち移動サービス利用433人)をもとに分析。
 利便性の高い順は、@社協・NPOなど移動サービス、A福祉・介護タクシー、B自治体の移動サービス、C一般タクシー、D鉄道、Eバス――で、上位3つは「知らない」との回答も多い。
行政サービスへの期待では「交通費の補助・低減」に次ぎ「福祉車両・バスの運行サービス」「介護者派遣」が多かった。
 
外出阻害に四大要因があるとし、具体的に@身体的・精神的要因、A経済的要因、B住環境・交通環境要因、C人的支援要因――をあげ、これらを家族、ヘルパー、自家用車、移動サービスが埋めているのが現状で、介助者と費用の低減が必要とした。
 大学院生からの報告では、18歳以下は48.2%が付き添い・介助者がいない調査結果に対し、小金井市の知的障害者が外出により暴力行為がおさまった事例を紹介、移動による社会活動の拡大が重要と指摘した。

『福祉輸送ニーズの全国実態調査 報告書』(目次はココから)
(発行:NPO法人 全国移動サービスネットワーク/2009年3月/A4版136頁)
※希望の方は、関西STS連絡会・事務局まで
(FAX 06-4396-9189/Email:k-sts@e-sora.net)
印刷費実費:\500-(プラス送料)




『福祉車両の操作方法学ぶ/若桜で有償運送講習会』(日本海新聞2009.8.3)

 NPO法人「ワーカーズコープゆいまぁる」(岡本幸子所長)は2日、若楼町若桜の若桜町公民館で「福祉有償運送講習会」を開いた。同町や鳥取市などから19人が参加し、福祉車両の運転や車いすの特性を学んだ
 講師は、
大阪市を拠点に移動送迎支援サービスの普及などに取り組むNPO法人「移動送迎支援活動情報センター」の柿久保浩次さんら5人。受講者は、福祉有償運送に必要な心構えや福祉車両の操作方法などの講習を受けた。
 車いす利用者送迎の実技講習を終えた同町根安の中村勝広さん(59)は「普段、お客さんを乗せて運転することがないので、心遣いなど勉強になった」と話していた。
 
福祉有償運送は、要介護者や身体障害者の移動手段を確保するのが目的。第2種免許がなくても、国土交通大臣認定講習修了者であれば輸送サービスを提供することができる。
(写真:福祉車両の操作方法について柿久保さん(右)から説明を受ける受講者たち=2日、若桜町若桜の若桜町公民館▲)




『《キーパーソン》全国移動ネット理事長 中根裕さん』(東京交通新聞2009.7.20)

 全国組織のNPO移動サービス団体のトップに若いニューリーダーが誕生した。会員数約200を擁するNPO法人全国移動サービスネットワーク(全国移動ネット)の先月の総会で新理事長に選出された。
 30代、理論派、誠実。「移動困難者の立場から仕組みを考える」を第一に心掛ける。「タクシーは福祉輸送の主役。ドア・ツー・ドア、マン・ツー・マンができる公共交通機関はタクシーだけ。もっとタクシーに福祉輸送を頑張ってほしい」とタクシーにエールを送る。
 地域によって火花が飛ぶNPOとタクシーとの関係に対し「福祉輸送タクシーもNPOも採算上のリスクが宿命。お互いにリスクシェアをしてはいかがか。NPOの基本は予約即時性、緊急性はタクシーの得意分野だ。移動困難者の送迎に対し、運行をタクシー、介護ヘルプをNPOなど両者が補い合う形で連携シェアするのも方法では」と独自のアイデアも披露する。
 現行の有償運送登録制は「利用者には使いにくく運行事業者には事務が煩雑。しかも料金制度に縛りが多い。過度な規制は改善し、利便性向上へ運動したい」と問題意識をのぞかせる。
 NPOボランティアの福祉輸送について「他のボランティアに比べ、車の運転リスクが壁になることが多い。担い手不足がまん延している」と難しさを指摘しながら、NPOの役割を「市民とともにあるのがNPO暮らしの視点から社会に発信していくこと」と捉える。大所帯組織のかじ取りについて「各地域の現場の現実を見える化し、オープンにするところから始めたい」と意欲をみせる。
 地元千葉県で移動支援ネットワークちば理事として市川市、柏市の福祉有償運送運営協議会の委員を務める。小3の双子の男女、浦安市職員の夫人と同市で暮らす。
【プロフィール】1972年生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒。介護福祉の専門誌記者などを経て現在、千葉県の生活協同組合に勤務。同県船橋市出身。37歳。




『《全国移動ネット総会》新理事長に中根氏』(東京交通新聞2009.6.15)

 NPO有償運送の全国組織・特定非営利活動法人 全国移動サービスネットワーク(全国移動ネット)は7日、横浜市のオルタナティブ生活館でNPO法人化後3回目の通常総会を開き、2008年度事業報告・決算を承認、誰もが自由に移動できる社会を実現するための中期ビジョンを描く2009年度事業計画・予算を決めた。役員改選で新理事長中根裕副理事長が選任された。
 副理事長笹沼和利(埼玉県移送サービスネットワーク)杉本依子(NPO法人ハンディキャブゆずり葉)河崎民子(NPO法人かながわ福祉移動サービスネットワーク)柿久保浩次(関西STS連絡会)の4氏。
 中根新理事は「国の権限の地方移管に対し危機感が強い。現状のまま移管するとローカルルール(運営協議会で独自に決める上乗せ基準)の縛りが強まる懸念がある」とし、「3〜5年のスパンで取り組んでいる中期ビジョンの具体化を推進させたい。また都市部と地方部では課題が異なり、それぞれの問題点を浮き彫りにしていきたい」と抱負を語った。
 国土交通省の奥田哲也自動車交通局旅客課長らが来賓出席。「もっと知ろう地域交通予算」をテーマに首都大学東京の吉田樹助教による学習会も行われた。




『《練馬区の有償運送運営協》NPO申請協議未了 珍しいケース』(東京交通新聞2009.6.8)

 NPOによる有償運送の新規登録事案について1年越しで協議してきた練馬区福祉有償運送運営協議会(会長=岩田高幸・健康福祉事業本部福祉部地域福祉課長)が、協議をいったん打ち切ることを決めたことが明らかになった。
 料金設定で継続協議していたが、申請者側の連絡が途絶えたのが直接の理由。
同運営協は「門戸は開かれており、申請の意思表示があれば改めて協議する」(岩田会長)としている。長期に協議しながらも途中で協議未了となったケースは全国的にも少ないとみられる。
 協議対象の団体はNPO法人なごみ(中川博三代表)。練馬区によると、昨年5月の申請時、
「出庫〜帰庫」料金体系だったが、8月の協議で「乗車〜降車」の体系に改め、迎車料金を15分ごと500円加算に設定したいとした。団体側は「経費に見合うよう迎車料金を設定したが赤字。和光市ではこの料金体系で運行し、できれば崩したくない」としたが、運営協からは「タクシーの迎車料金は固定料金で帰庫料金には適用されていない」などの意見が出て、11月に継続協議。今年2月に運営協から団体側に委員の各意見が通知されたが、団体側から音さたがなくなり、5月の運営協協議をいったん打ち切ることが決まった。
 同運営協は、タクシーから佐藤雅一氏(東旅協)、山下晴樹氏(全自交東京地連)、NPOから伊藤絵利子氏(腎臓病連絡協議会すずらんの会)などが参画。設立当初より活発に協議がなされ、同区内で14の有償運送団体が登録されたが、協議未了となったのは初めて。




『新たなSTS構築模索 全国の移送NPO/民主党・国交省と意見交換』(東京交通新聞2009.5.25)

 民主党は15日、参議院議員会館で全国NPO有償運送団体移動サービスを利用する障害者意見交換した。昨年12月に続く2回目で、国土交通省の自動車交通局、道路局、総合政策局から係官約10人が出席、質疑応答した。党側から田名部匡省・参院元国土交通委員長、谷博之・党障がい者政策推進議員連盟会長小宮山泰子・党障がい者議連事務局長、大河原雅子・企業団体対策委員長代理らが出席。
 NPO側の発起人は竹田保・日本移送移動サービス地域ネット連合会(J−NET!)理事長。長谷川清・移動支援フォーラム理事長、越谷秀明・青森県移送サービスネットワーク代表、伊藤寿朗・移動サービスネットワークみやぎ理事、笹沼和利・埼玉県移送サービスネットワーク会長、猪野裕子・千葉県移送サービス連絡会代表、水谷克博・愛知県ハンディキャブ連絡会副代表(日本NPO救急搬送連合会理事長)、今福義明・DPI日本会議交通問題担当常任理事、山本憲司・全国移動ネット理事、伊藤みどり・同事務局長、福原秀一・市民福祉団体全国協議会事務局員らが参加した。
 NPO側から運営協議会の改善移動困難者ニーズの把握地方交通のバリアフリー化緊急経済対策での措置、高速料金割引の見直しなどについて事前提示された項目をもとに国交省側と質疑応答した。
 移動支援フォーラムは、市民が自発的に行う互助活動に対し道路運送法を適用しないこと移動量を数値化し達成目標を設定することなどを盛り込んだ内容を書面提案した。
 意見交換終了後、参加NPO間で非公式に協議。「国交省のガイドライン設定から5年、制度化されたが利用当事者や送迎NPOは身動きがとれない運営協が改善されてもタクシーとの綱引きが続き徒労感ばかり広がる。無駄な労力を費やしている場合ではない」といった問題意識を共有した。DPI会議の今福氏は「STSはバスやタクシーの補完ではなく、公共交通機関そのものだ。バスやタクシーと相まってSTSが地域の公共交通に位置付けられるようSTSの解釈を捉え直すべき」とし、移動支援フォーラムの長谷川氏は「地方分権の流れも踏まえ、市民が自由に参加できる当初の姿に立ち返るべく新しい枠組みを改めて提案していくべき」などと述べた。

NPO:運営協設置率低い/国交省:全自治体に周知へ
 民主党の意見交換会での主なやりとりは次の通り。
竹田・J−NET代表 NPOの移動サービスの改善だけが今回の意見交換の目的ではない。どうしたら市民が自由に移動できるようになるか、そこを追求したい。
国交省 運営協は現在、全市町村の約6割で設置されている。上乗せ基準は適切に見直したい
竹田氏 有償運送の国の権限を地方に移譲する話があるが、国が最低限を保証するナショナルミニマムの観点はどうなのか。国がある程度決めないと不安だ。
国交省 権限委譲の勧告がなされたが、地域格差が広がる懸念は聞いている。国交省の方から進んで委譲する気はないが、現状ではフォローアップしながら前向きに対策を講じていくとしか言えない。
笹沼・埼玉ネット会長 運営協は5年経ってまだ40%が未設置とも言える。
谷・民主党障がい者議連会長 いつまでに運営協を全自治体で設置すると具体的な目標を置けないか。
国交省 運営協の設置では自治体が先ず有償運送の必要性があると考えるかがポイントになる。必要性を判断しようとしていない自治体は問題で判断を求めていきたい。
越谷・青森ネット代表 秋田や岩手では(有償運送の)ネットワーク団体がないので必要な情報が伝わっていかないが、必要な情報なら自治体にも漏れなく伝えてほしい。
国交省 どんな形であるにせよ、全自治体に情報が伝わるようにしたい。
小宮山・民主党障がい者議連事務局長 政権を取ったら移動困難者のニーズを把握し、運営協を開かせることを約束する。
水谷・愛知連絡会副代表 隠れたニーズを把握する方法を考えてほしい。国交省と厚労省の共同事業として把握の仕方を考えてほしい。
今福・DPI会議常任理事 青森や長崎などの公営バスは実質的に車いす利用者を乗車拒否している。こうした会社は補助金の対象から除外してほしい。
国交省 検討する。




『《有償運送制度》国土交通省、近く改正通達/運送対価など統一見解』(東京交通新聞2009.5.18)

【有償運送の改正通達で示される統一見解】
・上乗せ基準=適時適切に内容を検証
・運送区域=広域設定も可能
・旅客の範囲=区分追加は届け出
・複数乗車=透析や障害者の施設送迎に限定されない
・運送対価=「タクシーの2分の1」は目安で上限ではない
 国土交通省は近く、自家用有償旅客運送制度を改正する通達を地方運輸局、全国ハイヤー・タクシー連合会、全国福祉輸送サービス協会などに出す。各地の運営協議会で取り扱いが分かれている独自策定の上乗せ基準(ローカルルール)運送対価旅客の範囲などについて統一見解を示すもので、上乗せ基準過度の制限を加えるものでない限り容認する一方、適時適切に合理性を検証することをうたう。運送対価の「タクシー上限運賃のおおむね2分の1」については目安であり、上限ではない旨を明記する。赤字で運営できないNPO有償運送団体による料金値上げ申請が各地の運営協に提出されそうだ。
 今回の通達では、2006年10月の道路運送法改正で有償運送登録制度が設定されて初の制度変更を示す。
国交省自家用有償旅客運送フォローアップ検討会(主宰・自動車交通局旅客課長)を設置、タクシー業界、NPO有償運送団体、自治体などを集め、新制度の問題点について協議してきた。通達に盛った統一見解の内容は14日のフォローアップ検討会で最終報告され、了解された。
 柱は、@国交省の制度化時の見解とは別に地域特性に応じて定めた上乗せ基準に対する見解、A運営協で解釈と運用上の疑義が指摘される▽運送区域▽旅客の範囲▽複数乗車の必要性▽運送対価▽協議会提出の書類の取り扱いに対する考え方の整理、B
制度上の負担軽減
 上乗せ基準は、有償運送を過度に制限を加えているケースがあるとの指摘があり検討。通達では「有償運送に過度な制限を加えるものでない限り、排除されるものではない」としながらも、「ルールの前提となる状況が変化しているにもかかわらず、長期間見直さない」「個別事例の取り扱いを他の事例を吟味せず一律のルールとして適用する」など
過度の制限を加えているケースは適当ではないとし、こうしたケースは移動制約者の状況、タクシー等公共交通機関の整備状況、有償運送の運営実態――など適時適切に検討、合理性を検証するとした。
 
運送区域については、原則、運営協で協議が調った市町村単位とし、複数市町村や都道府県単位の運営協では市町村を越える広域的な運送区域の設定が可能としている。
 
旅客の範囲は、登録後に区分を追加する範囲変更は軽微な事項の変更届け出として、変更日から30日以内の届け出で足りる。旅客の範囲の確認方法については、@判定組織を設置し判断、A運営協事務局で判断、B運送団体が会員登録時に書面を確認し運営協事務局で判断、C運営協で判断――の事例を添付する。
 
複数乗車の必要性については、透析患者輸送、知的・精神障害者の施設送迎は複数乗車が認められる代表事例にすぎず、これに限定されないとして事例紹介する。
 
運送対価は、タクシー上限運賃(ハイヤー除く)のおおむね2分の1の範囲内について、実費の範囲内で営利目的ではない妥当な範囲であることを前提に「運送の対価の目安であり、上限として定められているものではない」と明記。タクシー運賃の2分の1を超える料金を設定する場合、運営協で説明し合意があれば値上げできる。
 
運営協への提出書類は「申請者の負担軽減にも十分配慮」するとした。このほか制度変更は、運行管理者の専従責任者に変える▽登記事項証明書で確認できる役員名簿の省略▽市町村が有償運送を委託する場合、市町村職員からの運行管理責任者の選任を不要とする――など。




『《福祉輸送》国交省あり方委/地域の連携に期待―報告案、大筋で了承』(東京交通新聞2009.3.30)

 国土交通省「福祉タクシーなどを活用した福祉輸送のあり方調査委員会」(委員長=秋山哲男・首都大学東京大学院教授)の最終会合が25日開かれ、移動ニーズを数量把握する需要推計算式・手順の設計を柱とした報告書案を大筋了承した。供給量の増加サービスの充実に向けてはタクシー事業者、自家用車有償運送団体、自治体など地域関係者間の連携に期待した。東京都杉並区、札幌市、埼玉県ときがわ町の3モデル地区での推計分析結果も提示された。
 
報告書は体裁が整い次第、公表される。案では、今後の展望について「各地で移動制約者のニーズを把握し、福祉輸送を公共交通全体の中で総合的に検討することが望まれる」とし、地域公共交通活性化・再生総合事業補助制度の活用ユニバーサルデザイン車両の早期開発などを課題に挙げた。自治体には「福祉輸送計画の策定支援措置の検討を」と求めている。
 需要推計モデルでは障害者(身体・知的・精神)、要介護・要支援者の人口や外出頻度などの数値データを算式に当てはめ、必要な供給量をはじき出した。変動を前提に杉並区は「325〜938台」(現状約240台)、札幌市は「1501〜2683台」(808台)、ときがわ町は「16〜37台」(28台)とした。
 自治体主宰の
有償運送運営協議会の運用のあり方をめぐっては、▽自治体側に制度の理解が不足、▽「必要性」判断が不十分、▽運送対価の議論に時間がかかっている――など問題点を整理し「関係者のコミュニケーションが大切」と指摘。運営協が国の法令要件以外に独自に定めている「上乗せ基準」に関し、妥当性を自主点検していく方向が示された。




『《移送サービスのつどい09》「もう一歩先」を討論/財源確保問題に初めてメス』(東京交通新聞2009.3.23)

 移動サービスの多様な関係者が元気の出る学び場からメッセージを発信しようと8日、東京・飯田橋で「移送サービスのつどい2009」が開催された。各地の移動支援NPOやタクシー事業者など約150人が集い、「もう一歩先の福祉移送」を討論した。財源確保問題に初めてメスを入れた分科会にパネリストで参加した千葉県タクシー協会の武藤厚氏は「ユニバーサルタクシーの導入に際し、義務化した上で車両価格の差額分の公的補助をお願いしたい」と提起した。国土交通省の奥田哲也自動車交通局旅客課長も参加、「移動の財源対策では、福祉政策、消費税など社会政策的な議論を深めるべきだ」との見解を示した。
 今回のイベントは、東京を中心に首都圏近県の移動支援NPOと地方のタクシー会社が加盟する東京ハンディキャブ連絡会(74団体)と東京ボランティア・市民活動センターが主催した。過去20年にわたり年1回、NPO主体に
移送サービス研究協議会を開催してきたが、今年から「タクシーもNPOも移動サービスの担い手が全員で討論し、移動困難者の問題に立ち向かう場づくりにしたい」との東京ハンディキャブ連絡会・荻野理事長の方針から、国土交通省、全国ハイヤー・タクシー連合会、全国福祉輸送サービス協会に後援を依頼した。具体化は次年度以降の課題となったが、タク業界からも参加があった。
 
九州大学嶋田暁文・法学研究院准教授が「行政学的視点からみた道路運送法下の移送サービス」と題し講演。福祉有償運送運営協議会で策定する上乗せ基準については「法令で認める利用者の範囲を要介護度3以上などと勝手に限定したり、車体の表示をペンキで描かなければ駄目などと言うのは、違法なローカルルールと解すべきだ」と批判した。
 財源確保の分科会では
「福祉輸送の財源をいかに創造するか!」がテーマ。本紙の武本英之編集局取材部長司会し、千葉県指定訪問介護事業所の武藤自動車の武藤社長、埼玉県移送サービスネットワークの笹沼和利代表、世田谷の福祉限定事業者の篠山洋ペイフォワード代表、東京中心に150台が参加するウィルコールセンターに加盟する限定事業者の伊藤輝明イトウケアワークス代表がゲストで事例発表。
 同分科会は、@
福祉輸送の収支は赤字となる構造にある、A公的補助が不可欠、B不足金額と補てん方法は今後の課題――との問題意識を共有、今回の討論を契機に今後も議論を積み重ねることで一致した。
 分科会でゲスト発言者から事例報告、各自の財源シミュレーションが提示。
 
笹沼氏は、埼玉県の事例を示し、「埼玉の移動支援NPOには、県の生活サポート事業補助金が3分の1入っている。逆に補助金がないと赤字になり、埼玉では財源の裏付けがないと移送サービスはできないと言える」と述べた。
 限定事業者の
篠山氏は、介護タクシーモデル収益として、@1日4・5件、A1回単価4,500円、B月25日稼働――で営収約50万円、支出約17万円を差し引き、月約33万円の収益が理想とし、地域環境で収入が異なるがストレッチャー代など付加価値を載せて補てんしていると説明。利用者負担の軽減では、運賃の5%を還元したり、事業者間での運賃の平準化などを提起した。伊藤氏は「損益分岐点は月営収50万円、それ以上いかないと厳しくなる。当社はコールセンターでグループ同一料金で行い、効率を高めあっている」とした。
 最後に
「もう一歩先の福祉移送について考える」をテーマに全体討論会が荻野代表の司会で奥田旅客課長も参加して開催。首都大学東京の秋山哲男教授、嶋田准教授がコメントテーターで参加、4分科会の担当が報告しパネル討論した。

■国交省・奥田自交局旅客課長/社会政策的論議を
 
全体討論会での国士交通省奥田哲也自動車交通局旅客課長の発言要旨は次の通り。
 車社会が成熟期に入り、地域住民の身近な移動の足の確保が課題障害者だけでなく健常者も含めて考えることが重要。そこでは青ナンバーだけで移動ニーズを賄うことはできない移送ボランティア、レンタカーのカーシェアリングなど総合的に組み合わせて国民のニーズにこたえる制度をつくらないといけない。国が一律につくるのではなく、地域で尊重される制度が必要と思う。
 
財源対策では、国交省地方バス路線に年70億円の赤字補助をしているほか、交通空白地の活性化再生総合事業で年40億円の補助を計画している。福祉輸送ではタクシーは採算が合わず、NPOも苦しいと聞く。現在、国交省にそのための支援を要望されても難しいが、財源をどう確保するかは重要な問題だ。
 移動のニーズとも関係するが、今後、厚生労働省を含めた福祉政策や消費税など社会政策的な議論をしていくべきだ。

■移動困難者二ーズ調査結果を発表
 
全国の移動困難者のニーズ把握に初めて本格的に取り組んだ全国移動ネットの調査結果について、伊藤みどり事務局長は8日の移送サービスのつどいで公表し「移動制約者は予想以上に多い。身体的理由だけで判断しない新しい指標が必要だ。複合する阻害要因に対応できるサービスが求められており、福祉サービスは自治体ごとに異なり、自治体を特定した事例を検討すべきだ。また、バス並みの『利用料金』を実現する体系的なサポート体制の確立が必要だ」と提案した。




『《私の主張》自由な外出のため支援を/平野 征幸(NPO法人 中原たすけあいの会代表、67歳)』(佐賀新聞2009.3.13)

 以前は日常生活を過ごすために必要なお店をはじめ、いろいろな施設は身近な街中にありました。しかし、現代のマイカー中心の車社会の中で、残念ながらこのような施設は郊外に設置され、街中から姿を消してしまいました。
 また、
路線バスも乗客が少なく廃止路線が目立つようになり、それに代わって一部の行政はコミュニティーバスを運行しておりますが、これもまた赤字運営で継続が危ぶまれています。このような状況の中で、マイカーなくしては住み憤れた街で生涯を過ごすことが困難な世の中になってきております。
 このため、私たちは11年前から
地域の助け合い活動の一環として、「困ったときはお互いさま、助けたり助けられたり」の精神で、買い物・通院などに困っておられる方に対し、実費程度の謝礼をいただいて有償での外出支援活動をしてまいりました。
 このような
福祉活動は、道路運送法上「自家用自動車の有償運送行為禁止」への抵触問題としてあいまいな状態で経過してまいりましたが、高齢化、介護保険制度など社会情勢の変化から2006年10月には、高齢や障害などがありタクシーなどを利用してもー人で外出できない人々を対象として、「福祉有償運送」が道路運送法に定められました。
 この法律により利用対象者が制限されたため、今まで地域の支え合いによる外出支援活動によるサービスを利用できていた人の一部の人が、利用できなくなってしまいました。
 在宅で日常生活を過ごしていく中で、外出に困る人は法律に定められた人ばかりではありません。家からバス停まで買い物の荷物を持って歩くのが困難な人や、経済的な事情からタクシー代を払うことができない人も、同じ
外出が困難な人たちです。
 あふれんばかりの車社会の中で、高齢などにより免許証を返上し車を運転できなくなったばかりに、これまで住み続けてきた地域社会の中での生活が継続できなくなることは悲しいことです。これからますます進んでいく超高齢社会の中で行政(税)に頼るだけでなく、地域社会の支え合いによる
自由な外出支援活動ができる仕組みを生み出さないと、在宅生活や自立支援の実現は不可能です。
 在宅生活が継続できなければ施設入所などに移行し、その結果としてこれからの医療・介護保険財政にさらに多大な影響を与えることにもなります。世の中にあふれている車(財)とマンパワーの活用の仕方で、新たな社会的投資(税)をすることなく外出支援活動が確保できると思います。
 今の世の中、交換の論理(見返りを求める)だけでなく、母親が子どもをはぐくむような愛情の論理(見返りを求めない)の価値観の必要性を地域社会でも気づき、これからの街づくりにかかわっていく時代だと思います。何事にも交換の論理が最優先してきた結果、ちょっとした変化があれば一気にバランスが崩れてしまう薄っぺらな、奥行きのない社会に変革してしまった一因ではないでしょうか。
 各地域で外出の足に困っている事情はその土地でいろいろあり、当然、その対策もさまざまだと思います。単純に多額の赤字を出して町内一律にコミュニティーバスを走らせるだけで解決する問題ではありません。地域の事情に合った使い勝手の良い運行形態のアイデアを地域住民・行政が一緒になって考え、解決していかなければなりません。
 私たち
地域住民知恵を出し、自分たちが住みたい・住みやすいこれからの街をつくっていこうではありませんか。




『千葉のNPOがシンポ/有償運送の課題論議』(東京交通新聞2009.3.2)

 移動支援ネットワークちばと千葉県移送サービス連絡会は2月20日、千葉市で「福祉有償運送継続に向けて」をテーマにシンポジウムを開催した。講演やパネルディスカッションを行い、NPO事業者や自治体などから80人が参加した。
 須貝代表は冒頭あいさつで「事業者はいろいろな悩みを抱えている。課題を共有化し、理解と評価を高めていきたい」と開催趣旨を述べた。
 
パネルディスカッションではタクシー、NPO、訪問介護事業所、自治体などの代表者が福祉有償運送を続けていくための課題について意見を交わした。質疑応答では運営協議会の広域化に質問が集中した。
 全国移動サービスネットワークの中根・副理事長は
運営協議会のあり方について説明した上で「利害関係の調整や団体の審査だけでは本質を見失ってしまう」と指摘した。
 タクシー代表の小池氏(協進交通)は「移動困難者を担えるのは、われわれだと思っている」としながらも十分対応できていない現状を示し、「
(NPOや自治体と)協力関係でなければ」との認識を示した。
 自動車事故対策機構の三枝・千葉支所長が講演、
運輸安全マネジメント交通事故に関係する生理・心理などを解説した。

福祉運営協議会38市町村で設置/千葉運輸支局報告
 
千葉運輸支局は同シンポジウムで県内の福祉有償運送の現況(1月末現在)を発表した。福祉有償運送運営協議会県内56市町村の7割にあたる38市町村(29市7町2村)が設置していることがわかった。設置件数05年14件06年20件をピークに、07年以降は3件にとどまっている
 
登録事業者はのべ131団体935台(うちセダン型車両612台)。複数の市町村に登録している事業者を除いた実数は100団体727台。内訳はセダン476台、車いす167台、回転シート51台、兼用25台、寝台8台となっている。
 「今後の運営協議会」について講演した千葉運輸支局の三上・運輸企画専門官は「(有償運送は)タクシーとの共存共栄が必要になってくる」と述べ、
各自治体が積極的にかかわっていくことの重要性を示した。
 管内では千葉、茨城両県だけが市町村単独で設置していることにも触れ、事務局の負担軽減や問題の共有化など広域協議会のメリットを紹介した。




『移動支援センター運営/世田谷区が地元NPOを選定』(東京交通新聞2009.3.2)

 東京都世田谷区は先月23日、福祉タクシーなどを配車する「世田谷区福祉移動支援センター」の運営事業者に地元のNPO法人ハンディキャブを走らせる会選定したと発表した。
 同会は4月から市民が参加する
「運営協議会」の合議制でセンター運営する方針。限定タクシーやNPOが加盟する世田谷移動サービス協議会とも連携する。
 同センター長には東京ハンディキャブ連絡会代表でNPO法人世田谷ミニキャブ区民の会・事務局長の荻野氏が就任する。
 世田谷区は3月末で3年間センター運営に携わるつくば観光交通が退任するのに際し、昨年12月、新たに運営事業者・団体を
公募。5事業者が応募し、2回の選定委員会(委員長=金澤・保健福祉部障害者地域生活課長)を経てハンディキャブを走らせる会を選定した。区の補助事業で、2009年度補助金は08年度並みの670万円が見込まれる。
 
同センター利用登録数1167人(昨年10月末)6割が配車利用2007年度の配車依頼総数は1868件、月平均155.7件。依頼のあった日の平均は6.8件登録事業者は23(限定事業者19、介護保険事業者4)地元NPO11団体クロス配車(異団体間の会員相互配車)ができないため、登録せずに紹介協力関係にある。




『《ユニタク具体化への注文》車いす利用者/公的な資金の投入を』(東京交通新聞2009.3.2)

 障害者も健常者も乗車できるユニパーサルデザインタクシー(ユニタク)の開発が進展している。国土交通省バリアフリー車両開発検討会(委員長=鎌田実・東京大学大学院教授)が先月、ユニタクの車体模型(モックアップ)を製作、利用者、タクシー事業者、福祉輸送関係者など多数に披露した。今回の評価を経て次年度実用化へ向け検討が進む。ユニタク実用化の動きは、福祉輸送分野にとどまらずタク業界全体の取り組みを促す。車いす利用者としてモックアップを見学した荻野陽一氏にユニタク具体化に対する注文を聞いた。
――車いす障害者の立場からユニタクをどう受け止めているか。
「街角で手を上げてタクシーに乗り込むことは、電動車いすユーザーにとっては一つのやってみたい夢だ。ユニタクがそんな暮らしを実現してくれるなら画期的なことになる。バリフリタクシーやユニタクが言われはじめて結構な時間が経つ。印象的には今度やっと実現するのかなといった感じだ。過去に東京の新規タク会社の京浜ポラグが30台のユニタクを走らせたが、いつの間にか消滅したと開く。車両開発は進化する一方で、それを動かす仕組みをどこまで整備できるのか利用者的には気になる
――開発中のユニタク車両への注文は。
「期待するのは、できるだけ家の近くに来てもらいたい。住んでいる世田谷区は道が狭く、横乗りタイプだとスロープが出せない。車いすユーザーはタクシーなれしていないから、狭い場所での乗降は少しきつい。できれば横乗りと後ろ乗りと両方のタイプを試作してみてほしい」
――移動制約者にはいろんな状態の方がいる。
「福祉タクシーだけのチームが開発するのだったら、今までと変わらない。今回は思い切った台数を増やすという点では、いろんな人が乗車できることを期待する。ゆくゆくは日本のタクシーイコールユニタクというレベルを目標にしないと、保有台数の何台かがユニタクというのは、本当の意味でユニバーサルデザイン社会ではない。市場やニーズがどれくらいといった発想は、今まで使っていた人プラス使えなかったけれど使える人がどれくらい、と考えるぺきだ。プラスアルファのお客を拡大できる発想に立ってほしい」
――タク業界には。
「多少足の弱い高齢者には社員教育が行き届けば今のタクシーでもサービスはできる。今回のユニタクが車いすごと乗り込めることを意識しているのは、その次元ではない、もっと高い次元に切り込んでいこうとの覚悟がタク業界に絶対必要だ。タクシーの可能性は大きく、全国27万台の社会資源が有効に活用されれば、全国の移動制約者はもっと快適に外出できるようになる
――ユニタクはユーザーの間口を広げる。
「ユニタクの普及は福祉限定タクシーのあり方に一石を投じそうだ。ユニタクは一般タクシーが行う範囲にとどまり、それ以上の病院での待機や介助を求める場合は限定事業者やNPO有償運送を選ぶといったことにもなるかもしれない」
――福祉輸送は民間会社だけでは限界がある。
「日本のバリアフリー輸送の動きが今ひとつ世界的に注目されないのは、民間の力だけに頼り公的資金を投入しないからだ。国の責任でこれだけのお金は移動の自由のため使いましょう、との枠組みで考えるぺきだ。そうでないと折角いい車両が開発されても活用されないことにもなる。(萩野陽一・東京ハンディキャブ連絡会代表)