『《東日本大震災》バス、タクシー、甚大な被害/宮城でタク水没800台/乗務員の安否確認続く』(東京交通新聞2011.3.21)
「3月11日に発生した
東日本大震災は、バス・タクシー業界にも社屋・車両の損壊や交通マヒなど甚大な被害をもたらした。国土交通省の速報によると、
宮城県内のタクシー210社・4100台のうち約50社・800台強が津波に遭い水没、
太平洋沿岸一帯で乗務員の安否確認が続いている。仙台市中心部のタクシーはライフラインが徐々に復旧し、LPガス燃料の優先供給も始まった。バスネットワークは主要路線で再開され、代替輸送など被災地住民の救援活動は本格化する見通し。首都圏では鉄道の不通・運行本数減の影響で通勤客がタクシーを求める姿が目立っている。余震が続く中、原子力発電所の放射能漏れや計画停電も伴った空前の危機に、地域の足を守る公共交通の真価が今まさに試されることになる。
公共交通の真価試される
仙台市内では、若林区沿岸部の事業所が壊滅的になっており、従業員と家族の安否を含め被害の全容はまだ明らかになっていない。自社の仙台タクシーグループ(若林区)では車両1台が所在不明、十数人の乗務員と連絡が取れずにいる。本社に200bのところまで津波が押し寄せたという。終電や終バスが早まっているため夜間輸送を重点的に担っている。介護・子育てサービスを手がけるフタバタクシー(宮城野区)では、車両・施設の損傷で済んだ。及川孝社長は「
福祉車はガソリンがほとんどで、行き渡っていない。透析患者の送迎を優先しているところ」と奮闘している様子だ。
国交省は大晶章宏国交相をヘッドに「緊急災害対策本部」を設置、1日1〜3回のペースで所管全分野にわたり情報を把握、対策を協議している。バス・タクシーに対し、これまで北海道・東北・関東の海岸線を走る事業者に運行の自粛を要請。被災地の燃料不足の解消と高速バスの運行再開に道筋をつけた。福島・原発周辺の住民避難や、岩手などの避難所支援に本格的に乗り出した。
東京都内では、臨海方面の営業所では液状化現象が起き、車庫が使用不能になるなど支障を来たした。」
『交通基本法案、国会に提出』(東京交通新聞2011.3.14)
「
交通基本法が8日閣議決定、国会に提出された。9日に一般質疑を開始した衆院国土交通委員会に諮られるが、先週段階で日程は組まれていない。成立の見通しや与野党修正協議の有無など不透明な状況下、国土交通省は法制定後に鉄道、バス、タクシー、船舶など交通施策の方針・目標を掲げる「交通基本計画」の策定準備に入った。
法案は全2章28条。
「移動権」保障の規定は見送られ、基本理念の柱として住民の需要を克足させる必要や交通機能の確保・向上がうたわれている。施策の総合的・計画的な推進に向け、国、地方自治体、交通事業者、住民など関係者の責務が明記されている。」
『《運営協検討会》審査項目の簡素化了承/「上乗せルール」も検証』(東京交通新聞2011.3.7)
「
国土交通省の「
自家用車有償旅客運送・運営協議会の合意形成のあり方検討会」(座長=秋山哲男)の第3回会合が2日開かれ、NPOなどボランティア有償運送サービスの登録申請に対し、運営協の審査項目を簡素化する方針が大筋了承された。次回は8日で、行政指導のあり方や議決方法など各論点の討議を続行する。
審査項目の簡素化を通じ運営協を効率的に運営し、迅速な進行・合意を目指す。前回、国交省側が素案を提起していた。今回は具体的にガイドライン(通達)の項目を整理し、バス・タクシーの運行が困難で地域住民に
移動サービスを提供する「必要性」の議論は「
重要協議事項(法令事項)」に、「
運送区域」と「
対価」は「
協議事項(省令事項)」に位置付け、重点化した。
一方、身体障害の態様など「
旅客の範囲」と「その他の措置」(
使用車両の種類・数、運転者、損害賠償、運行・整備管理、事故時の連絡体制、苦情処理など)は個別の適用を
運営協の場では取り上げず、運輸支局の事前チェックや第三者の知見を活用するとした。医師ら医療・保健・福祉などの専門家から助言を得ることや「判定委員会」の設置を一層奨励する。
既存の通達類を浸透させながら、
国の制度以外に地域が独自に定めている「上乗せ基準(ローカルルール)」の取り扱いなどをめぐり、運営協が適切に機能していない場合、
運輸局・運輸支局が検証し、指導・是正するといった行政の主体的な役割についてもテーマに挙げられた。」
『「交通基本法」の条文固まる/関係者の責務規定/“移動権”保障は見送り』(東京交通新聞2011.2.28)
「今国会に政府が提出する「
交通基本法案」の条文が固まった。全2章28条で構成され、「移動権」保障の規定が見送られた一方、基本理念の柱として住民の需要を充足させる必要が盛り込まれた。国、地方自治体、交通事業者、住民など関係者の責務がそれぞれ明記されたほか、
制定後に国土交通相などが策定する「交通基本計画」で施策の目標を設定する規定が掲げられた。国交省が原案を作成し、23日の民主党国士交通部門会議に提示した。早ければ3月4日に閣議定される予定。
交通基本法は交通関係施策を総合的・計画的に推進し、個々の分野で個別に対応していた従来の手法を転換する理念・枠組みとなる。国民・利用者目線が基調となり、交通基本計画では交通の目指すべき姿や目標を明らかにし、国、自治体、事業者、施設管理者、住民など関係者が役割分担と連携・協働の下、一体となった取り組みを促す。
法案ではまた、
高齢者・障害者などに向けたバリアフリー化や「総合交通体系」の整備、地球環境負荷の低減、まちづくり、観光立国などの視点を大きな柱に立てた。
「移動権」の取り扱いをめぐっては、交通政策審議会・社会資本整備審議会(国交相の
諮問機関)の最終報告で「時期尚早」との結論が出ていた。
民主党・国土交通部門会議は23日、交通基本法案をめぐり議論した。議員から「移勒権」の保障の問題や障害者基本法との関係など指摘が相次いだ。三井辨雄国土交通副大臣は21日の定例会見で、政務三役(大臣・副大臣・政務官)会議で交通基本法案を了承したことを報告するとともに、「移動権」規定を見送ったことについて「(交通政策、社会資本整備の合同)審議会で時期尚早とさまざま意見が出た。関連施策を充実させていく。離島、障害者、高齢者などの問題もいろいろあり、権利となるともっと慎重に意見を聞きながら、やるべきだ」と述べた。」
『《中四国移動支援セミナー》福祉有償運送の現状や課題は/14都府県から延べ270人参加も』(備北民報2011.2.28)
「NPO法人・移動ネットおかやまは27日、「まなび広場にいみ」小ホールで「
中四国移動支援セミナー」を開いた。14都府県の移動サービス団体などから延べ270人が集まり、各地域の活動紹介、講演やパネルディスカッションを通じて福祉有償運送の現状や課題を探った。移動ネットおかやまの担当者が西粟倉村と奈義町の活動を報告し、「利用者の感謝の言葉に支えられて活動している。福祉有償運送の意義や必要性を考えて」と呼びかけた。
続いて、高知女子大・社会福祉学部の小坂田稔教授が「地域の支え合い活動とは何か」と題して講演。「住み慣れた地域でいきいきと暮らすためには、公助力(行政・医療福祉サービス)、自助力(本人や家族の努力)、共助力(地域の助け合い)の.3つの力が必要」と語った。「移動支援のこれからを考える」と題したパネルディスカッションでは、阿部理事長は、高齢化率51.5lの同地区で住民913人のうち約4割に当たる357人がNPOに会員登録し、有償運送を含めた高齢者生活支援、農作業など7班に分かれて活動を展開していることを紹介。「
法律だけでは限界があり、人と人の支え合いが地域を守る。今後も地域の特性を生かした活動を続けたい」と話した。また、石垣市長は、
地域の実情に合わせた公共交通ネットワークの構築を通じて、交通空白地域の解消や住民生活に不可欠な交通体系を整備する――とし、「高齢者や障害者の交通手段の確保は、市の重要課題。安心して利用できる地域密着型のサービスを提供したい」と訴えた。」
『《有償運送》運営協合意形成で国交省/審査項目スリム化提起』(東京交通新聞2011.2.21)
「
国土交通省は自家用車有償旅客運送サービスの採否を決める自治体主宰の
「運営協議会」制度について、
運営協で審査する項目をスリム化する方針を14日の
「運営協合意形成のあり方検討会」に提起した。NPOなどボランティア移送団体の新規・更新申請に対し、
旅客の範囲の判定や、
安全の確保などの審査は地方運輸局・運輸支局の
事前チェックに委ね、会の迅速な進行・合意を目指す考えを示した。議決方法の再考などを含め来月中に結論を出し、
省令・通達を軸に制度改正する方向だ。
有償運送の登録・開始には、住民やタクシー・バス業界労使などがメンバーとして入る運営協議会の了解が前提。
道路運送法で規定され、審査項目は、@運送サービス提供の必要性、A運送区域、B収受する対価、C身体障害の態様など旅客の範囲、Dその他の措置(使用車両の種類・数、運転者、損害賠償措置、運行・整備管理、事故時の連絡体制、苦情処理)――などがガイドライン(通達)で列挙されている。
国交省の素案では
「必要性」は法律事項として、
「区域」と「対価」は省令事項として重視する
一方、旅客の範囲とその他の措置をめぐる議論は運営協の場ではストレートに扱わない考え方を提示した。「
法令で定められているものを除き、効率的な運営が検討できないか」とした。運営協開催に際し事前説明・点検をし、効率化につなげている
群馬運輸支局の事例が取り上げられた。
多数決や全会一致など議決方法の是非が論点に挙がっている中、
審査項目を減らすことで必要性などの議論が深まり、合意形成もスムーズに運ぶとの判断が強まっている。来月2日予定の次回会合で本格討議に入る。」
『《交通論壇》交通基本法における「移動権の保障」を考える 首都大学東京都市環境学部助教 吉田樹』(東京交通新聞2010.12.13)
「先日、国土交通省社会資本整備、交通政策両審議会に交通基本法案検討小委員会が設置され、私も加わることになった。2011年の通常国会提出に向けて同法の制定作業が進められているが、地域交通の現場を渡り歩く筆者にとって、いささか気掛かりな点がある。
権利保障の責務は誰が
交通基本法の基本理念の一つとして「移動権の保障」を盛り込むかが問われている。基本法という性質から、権利や理念の実現は、国レベルの計画策定(観光立国推進基本法の場合、同法制定の翌年に観光立国推進基本計画が示された)や個別法の整備・改定、財政支援制定の創設などに委ねられる。しかし、今般の交通基本法の場合、同法制定の以前から「地域公共交通確保維持改善事業〜生活交通サバイパル戦略〜」の創設方針が示され、「政策コンテスト」における評価も受けている段階にある。そのため、交通基本法で掲げるべき理念が同事業の内容に規定されてしまう、あるいは、交通基本法の理念が同事業と合致しないことにもなりかねない。
また、同法に「移動権の保障」を位置づける場合、権利保障の責務を誰が負うのかを明確にしなければならない。地域公共交通確保維持改善事業では地域の協議会に対する支援が想定されており、その点では、現在の活性化・再生総合事業と同様である。ただし総合事業が協議会の構成市町村における計画策定や実証運行が支援対象であるのに対し、新事業は、既存の地域交通サービスに対する支援も対象になる。地域交通のマネジメントは、基礎的自治体と各地の協議会に委ねられることになるのだ。しかし基礎的自治体の責務を考える場合、地域公共交通の経営環境を考慮する必要がある。例えば、ノンステップバスの導入比率は東京など都市部では向上している一方、数台の導入に止まる県もある。交通バリアフリーの推進は、国が目標年次と数値目標を定め、市区町村が設置した協議会で基本構想を策定し、事業を進める方式を採っている。しかしノンステップバスの導入比率に格差が生じたのは、地方公共団体の財政状況はもとより、地方バス事業者の経営環境が厳しいことにも起因する。既にこうした格差が生じている状況においては、「移動権の保障」に関して、国が関与すべき責務は決して小さくないはずである。
掲げるべき理念の中身
ところで、交通空白地域を生じさせないことが「移動権の保障」であると捉えられがちである。従来の地域交通計画の実務では、鉄道駅や路線バスの停留所を中心とする一定の範囲から外れた地域を交通空白地域と捉え、その解消のためにコミュニティバスやデマンド型交通の導入が試みられてきた。しかし、こうした計画手法には二つの問題がある。一点目は、地域住民の生活活動に「使える」サービスが提供されているかは必ずしも問われないこと。二点目は、障害者など移動制約者のアクセシビリティを老慮していないことである。そして、この二点を考慮した地域交通政策の実現が「移動権の保障」で掲げるべき理念であり、「広く、薄く」サービスを提供することが「移動権の保障」の意図するところではないと考える。その視点において、仮に「移動権」という呼称によって、理念がミスリーディングされるのであれば、交通基本法の条文や解釈、国レベルの計画を工夫することが必要であろう。
個別公共交通の議論も
活性化・再生総合事業を活用して、市民や来訪者に「使える」地域交通サービスを提供する戦略的な取り組みが各地に芽生えはじめた。交通基本法制定後は、こうした芽生えを成長させる施策(その意味では、過疎地域に的を絞り過ぎた支援策では不十分である)の一方で、タクシーや福祉交通に関しても、地域交通政策に取り込むことが求められる。乗合公共交通は、利用者ニーズの公約数に対応するものであり、個々のニーズには応えきれない。生活活動に「使える」地域交通を計画するためには、こうした個別公共交通の提供方策を議論する必要がある。個別公共交通は、一人あたりの輸送コストが高くなりがちだが、「非流し」のタクシーに関するビジネスモデルを構築するとともに、市民の共助で支えられる移動サービスを組み合わせて対応することが求められる。」
『《視点》不備多い有償運送を「適材適所」で改善へ/名古屋大学准教授 加藤 博和』(東京交通新聞2010.10.11)
有償運送運営協議会は、緑ナンバー事業者のみが有償運送を許されるという大原則の中で、
NPO等が有償ボランティア活動の一環として人を輸送することを合法化するために生み出された。
道路運送法79条の4にあるように「緑ナンバー事業者では困難」、しかし「地域として必要」な輸送について、協議会における関係者の合意を前提に認めることとしたのである。
私が名古屋市の協議会会長を拝命して半年間で、協議会や運送のあり方について4回の会議で様々な議論を行ったが、最も争点となったのは
運送の対価の設定であった。
国は「
実費の範囲内」「
合理的で旅客にとって明確」「
営利目的でない」という基準を示した上で、「
タクシー上限運賃のおおむね
2分の1という「
目安」を示し、さらにこれは「上限」ではないという解釈まで示している。
私は次のように理解している。国は地方分権の観点から、対価についても協議会で決めてもらいたいが、協議会がいきなりその妥当性を判断するのは無理かもしれない。そこで、利潤が発生しえない水準であろう「おおむね2分の1」を「目安」という注釈をつけて示した。しかし、中央集権が抜けきらない運輸業界ではそれがやはり金科玉条となり、それゆえに「おおむね」の範囲がどこまでかでもめるケースも出てきた。これは極めてナンセンスであって、あくまで対価は先の3つの基準にのっとって決めるべきである。
そこで
名古屋市では、
2分の1以下の申請は無条件で認め、それを
越える場合には実費の範囲内であることを示す理由書を提出し吟味するルールとした。運営団体にとって運送はごく一部の事業なので、その経費のみを切り出して示すことは大変である。しかし「おおむね2分の1」では実費がまかなえないと主張したいのであれば、理由書を出して納得してもううほかない。
今回、それにチャレンジした団体が1つあった。1度目の理由書は根拠不十分であったため、より詳細な理由書を出していただき、経費算定の妥当性については委員各位のご理解が得られた。しかし、大幅値上げは利用者にとって容認しがたいという意見もあったため、妥協案として、
将来の再値上げも視野に入れつつ、今回は実の半分程度の値上げとしてはどうかと提案した。これを申請団体に受け入れていただき、協議会委員各位の合意も得るに至った。時間はかかったが、
法秩序を守りつつ利用者など各関係者に大きな不利益を与えることのない結論が得られたと自負している。
そもそも、
福祉有償運送は「緑ナンバー事業者では困難」な運送であって、タクシーとの競合はあり得ない(あるとしたら認めてはいけない!)。一方、
公的補助がなければ経費に見合った対価を利用者から徴収する必要があるが、「おおむね2分の1」に縛られるとそれができない可能性がある。加えて、
登録に至るまでの諸手続の面倒さもあって、
福祉有償運送の
数は減りつつある。その分は安心安全が保障されない
「謝礼」運送に取って代わるか、運送自体がなくなって利用者が困るかのいずれかであると考えられるが、
それでよいのだろうか?
運送の対価の設定のみならず、現行の制度は不備が多い。移動権保障を掲げる交通基本法への流れを踏まえ、地域として必要な福祉輸送を「適材適所」で供給する方法を
利用者・現場目線で「走りながら」考え、制度の改善につなげていくことこそ、今後、
協議会が果たすペき役割であると私は考えている。(投稿)
《報道資料ファイル》